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46.良き臣下とその助言

last update Dernière mise à jour: 2025-03-25 21:05:06

 数十分ほど走り終えた後、今度は腰に下げている剣を抜き、俺の目線程の高さ以上ある枯れた大木目掛けて突きの練習をしていく。

「ふっ!」

 呼吸とも気合とも取れる声と共に、右手をピンと真っすぐに伸ばす俺。

 一回一回丁寧にしかも鋭く早い突きを繰り出し、大木を突いていく。

「朝から精が出ますな守様……?」

「ッ!」

 背後から聞こえる声に俺は驚き、振り向く。

 するとなんと、ガウスがそこに立っていた。

「な、なんだ、ガ、ガウスかビックリさせるなよ……」

「はっはっはっ、申し訳ございません守様……。相手が雫様と学様ならもっと驚きましたか……?」

(うっ! こ、コイツ、まさか……?)  

「……な、何の話?」

 俺は内心では思いっきり動揺していたが、冷静を装い一心不乱に大木を突いていく。

「守様……。どうでもいいですが剣筋が乱れておりますぞ?」

「なっ?」

 よく見ると、確かに俺の剣は大木の真ん中から極端に離れた場所を突いていた。

「何やら注意力散漫ですが、ナニがあったんでしょうなあ?」

(こ、コイツ……? 昨日の事を知っているのか? それとも……?) 

 俺は訓練を中断し、ガウスと向き合う事にする。

「……なあガウス、せっかくだし、ちょっと剣の相手をしてくれよ?」

「ほお? やる気があるのは良いことですし、いいでしょう……」

 ガウスは腰に下げている練習用の模擬剣を構え、更にはもう一本の模擬剣を俺に投げる。

 軽くキャッチし、模擬剣を胸元に構える俺。

 よく見るとガウスも同じように模擬剣構え、その丸くなった切っ先がこちらに見える。

「では、行きますぞ?

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