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第68話

last update Date de publication: 2026-03-01 19:00:00

1月25日。婚約発表まで、あと20日。

私と氷室様の偽装カップル生活は、いつの間にか日常に溶け込んでいた。

最初は緊張で身体が強張っていたけれど、今では彼の気配を感じるだけで自然と笑顔になれる。

いや、正確には自然すぎて、怖くなってきた。

最初は演技だと割り切れていたはずなのに。今では、彼のふとした仕草や視線に、勝手に期待を抱いてしまう自分がいる。

自室の鏡に映る私の顔は、契約相手に向けるものにしては、あまりにも熱を帯びすぎていた。

朝、6時半。私は、いつものようにキッチンでコーヒーを淹れていた。

豆を挽く音、お湯が沸く音。この朝の儀式が、いつの間にか私の大切な時間になっていた。

氷室様のために淹れる一杯のコーヒー。それだけで、胸が温かくなる。

氷室様は、まだ寝ているはず──。

「いい匂いだな」

「わっ!」

背後から突然声がして、私は危うくコーヒーポットを取り落としそうになった。

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