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第21話:下準備は念入りに

Autor: 大正
last update Fecha de publicación: 2026-05-03 07:00:19

 朝が来た。相変わらず日の差し込みやすいこの建物の一室は、俺の目を直撃するように日が入ってくるので、目覚ましとしては中々に性能がいい。

 ふともう一つのベッドに目をやると、セルフィが丸くなって眠っているので、もう少し寝かせておいてやるかと一人起き出し、トイレと顔洗いを済ませる。ボットン海綿トイレにも三日目にして慣れた。二日目は気になった、服に染み付いた自分の匂いも気にならなくなった。やはりこういうところではいかに早く慣れるかが大事だ、と神崎さんも言ってたっけ。

 井戸から水を汲んで顔を洗うと、口もすすいで後は磨き砂でも口に含んで歯のほうも綺麗にしておく必要があるか。そこまでする必要はないかもしれないな。だが、歯に物が引っかかると気になるので明日か明後日には歯ブラシとかその辺のものを調達しなければならないな。

 しばらくすると、俺がいないことに気づいて起きたのか、セルフィも起き出してきた。

「おはようご主人様」

「おはようセルフィ。元気か? 」

「元気! 今日はダンジョン行く! 」

「そうだな、今日はダンジョン行きだ」

 ハイタッチをしたところでセルフィも身支度を始めた。そして、少ない荷物から自分の替えの服装を取り出そうとすると、それを止める。

「今日はダンジョンへ行って汚れるのが分かり切ってるからな。それなら、今日まで汚して明日服を洗濯するほうが楽じゃないか? 」

「それもそう。じゃあそうする」

 綺麗な服と日々使い込んでいく服はそれぞれ分けて着たほうが良いからな。どこも出かけない日や何もしない日はきれいな服を使って、ダンジョン探索やモンスター狩りに使うようの服とは別にしておいたほうがいい。普段から血なまぐさい服しか持ち合わせていないのではあまりにもだ。

 この子にもそういう服が一枚あっても悪くない。そういう部分は残しておいたほうがいいだろう。いずれ冒険者をやめる時がやってきたとしても、習慣を残しておくということは大事だからな。

 パンツを替えてそれを洗い、部屋に干す。

「セルフィは肌着はどうする、自分で洗うか? 」

「ご主人様に洗わせるわけにはまいりません。仮にご主人様でなくなる将来があるとしても、です」

 自分で洗うらしい。ならば彼女に任せよう。確かに、12歳の娘でもない他人の肌着を洗うというのは問題がある、ということだろう。気にすることはない。別に一緒に洗濯機に入れて洗うのがいや、と娘に言われるのとはまた違うんだ。何せ手洗いだしな。

 しばらく部屋で時間をつぶしている間に肌着を洗濯し終えたセルフィが肌着を洗い終えて持ってきたので、一緒に部屋に干しておく。部屋干し用洗剤などありそうにないので多少部屋のにおいが移るかもしれないが、自分の匂いが染みつくよりはいい。

 干したまま一階に降り、リンカちゃんに挨拶をしつつ……そうだ、弁当について尋ねてみよう。

「リンカちゃん、お弁当って頼んだら作ってくれるのかな? 」

「お弁当ですか? いいですよ、お昼と同じ値段で、ちょっと軽いものになっちゃいますけど、持ち運びできるようにした食事セットです。二人分ですか? 」

「ああ、それでお願いするよ。 後朝食よろしく」

「はーい、朝食の間に作っておくからあとで受け取ってくださいね」

 いつもの朝食……昨日の残り物をいただく。昨日のスープもホーンラビットのスープだったらしいが、昨日の残りには肉が多めに残っていたらしく、具が昨日より多い。ちょっとラッキーだな。

「具が多いですね」

「ああ、残り物に福があったな」

「パンも……白が混じってる。これは朝から良いことがありそうだ」

「もう良いことが起こってますよ」

「そうだな」

 会話をしながら食事をしていると、包みに包んだ二人の弁当を持ってきてくれた。パンで肉と野菜を挟んだサンドイッチのようだ。量は確かに小さめだったが、特別に作ってくれたとあればそれだけでもうれしいというもの。

「はい、二人分です。合計四人分置いていってくださいね」

「ありがとう……よっと」

 アイテムボックスに昼食をしまい込むとリンカちゃんが驚く。

「タカナシさんはアイテムボックス持ちなんですね……意外です」

「おかげでいろいろ楽をさせてもらってるよ。これもイアンちゃんの知り合いのおかげだね」

 神崎さんのことはおそらく伝わっていないので、この言い方で伝わるのだろう、と思う。

「そうなんですね。アイテムボックスを持ってるだけでもすごいことですから、それを他人に渡せるなんてよりすごいことです。イアンちゃんの関係者ってどうなっているんでしょうね」

「ははっ、全くだよ。さて、食べたしさっそく向かうか。今日は無理せず稼ぐぞ」

「はい! 」

 四人分の朝食代、銅貨で32枚分をテーブルに置いておくと、部屋に戻って出かける準備をする。

「さて、パナメラのダンジョンと言っていたな。実際にダンジョンに行く前に冒険者ギルドで場所を確認していくか。パナメラのダンジョンと言われても俺にはどこにあるかわからないしな」

「私もわかりません。なのでわかっている人に聞くのは基本ですね! 」

「そうだな。じゃあ、さっそく出かけるとしよう」

 冒険者ギルドに向かい、ギルドでパナメラのダンジョンの位置を聞く。最寄りであるダンジョンへは北門から出て30分ということらしい。後は使ってないのは西門だけか。

 早速話に従って北門から外へ出て、30分ほど歩くと、「パナメラダンジョンこっち」という看板が普通に残っていた。看板が壊れずに残っているということは、壊れてもすぐに作り直されているか、モンスターがほとんど近寄らないか、この周囲は頻繁に掃除されているかのどれかだろう。

「もう少しですね、楽しみです」

「ダンジョンか……どんなモンスターが出るのかぐらい調べてくればよかったかな。でも、初遭遇の楽しみというのもあるからな」

「どんなモンスターが出ても、ご主人様は守ります! 」

 ふんす、と鼻息も荒くセルフィが俺の護衛を申し出る。

「本来なら年齢的には俺が守る側じゃないといけないんだろうけど、セルフィもう俺より強いしな。頼りにしてるよ相棒」

「はい、頼りにされます! 」

 ショートソードを腰にぶら下げたまま、セルフィが楽しげにダンジョンの入口へと向かう。ダンジョンの入り口には兵士の格好をした人がおり、入り口で探索者証の改めをしていた。

「ご苦労様です」

「あいよ……Fランクだな。最下層には近寄らないようにしておいたほうが安全だぞ。それ以上なら多分……安全だ」

「ご忠告どうも」

 さて、中に入るか。

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