LOGIN朝が来た。相変わらず日の差し込みやすいこの建物の一室は、俺の目を直撃するように日が入ってくるので、目覚ましとしては中々に性能がいい。
ふともう一つのベッドに目をやると、セルフィが丸くなって眠っているので、もう少し寝かせておいてやるかと一人起き出し、トイレと顔洗いを済ませる。ボットン海綿トイレにも三日目にして慣れた。二日目は気になった、服に染み付いた自分の匂いも気にならなくなった。やはりこういうところではいかに早く慣れるかが大事だ、と神崎さんも言ってたっけ。
井戸から水を汲んで顔を洗うと、口もすすいで後は磨き砂でも口に含んで歯のほうも綺麗にしておく必要があるか。そこまでする必要はないかもしれないな。だが、歯に物が引っかかると気になるので明日か明後日には歯ブラシとかその辺のものを調達しなければならないな。
しばらくすると、俺がいないことに気づいて起きたのか、セルフィも起き出してきた。
「おはようご主人様」
「おはようセルフィ。元気か? 」
「元気! 今日はダンジョン行く! 」
「そうだな、今日はダンジョン行きだ」
ハイタッチをしたところでセルフィも身支度を始めた。そして、少ない荷物から自分の替えの服装を取り出そうとすると、それを止める。
「今日はダンジョンへ行って汚れるのが分かり切ってるからな。それなら、今日まで汚して明日服を洗濯するほうが楽じゃないか? 」
「それもそう。じゃあそうする」
綺麗な服と日々使い込んでいく服はそれぞれ分けて着たほうが良いからな。どこも出かけない日や何もしない日はきれいな服を使って、ダンジョン探索やモンスター狩りに使うようの服とは別にしておいたほうがいい。普段から血なまぐさい服しか持ち合わせていないのではあまりにもだ。
この子にもそういう服が一枚あっても悪くない。そういう部分は残しておいたほうがいいだろう。いずれ冒険者をやめる時がやってきたとしても、習慣を残しておくということは大事だからな。
パンツを替えてそれを洗い、部屋に干す。
「セルフィは肌着はどうする、自分で洗うか? 」
「ご主人様に洗わせるわけにはまいりません。仮にご主人様でなくなる将来があるとしても、です」
自分で洗うらしい。ならば彼女に任せよう。確かに、12歳の娘でもない他人の肌着を洗うというのは問題がある、ということだろう。気にすることはない。別に一緒に洗濯機に入れて洗うのがいや、と娘に言われるのとはまた違うんだ。何せ手洗いだしな。
しばらく部屋で時間をつぶしている間に肌着を洗濯し終えたセルフィが肌着を洗い終えて持ってきたので、一緒に部屋に干しておく。部屋干し用洗剤などありそうにないので多少部屋のにおいが移るかもしれないが、自分の匂いが染みつくよりはいい。
干したまま一階に降り、リンカちゃんに挨拶をしつつ……そうだ、弁当について尋ねてみよう。
「リンカちゃん、お弁当って頼んだら作ってくれるのかな? 」
「お弁当ですか? いいですよ、お昼と同じ値段で、ちょっと軽いものになっちゃいますけど、持ち運びできるようにした食事セットです。二人分ですか? 」
「ああ、それでお願いするよ。 後朝食よろしく」
「はーい、朝食の間に作っておくからあとで受け取ってくださいね」
いつもの朝食……昨日の残り物をいただく。昨日のスープもホーンラビットのスープだったらしいが、昨日の残りには肉が多めに残っていたらしく、具が昨日より多い。ちょっとラッキーだな。
「具が多いですね」
「ああ、残り物に福があったな」
「パンも……白が混じってる。これは朝から良いことがありそうだ」
「もう良いことが起こってますよ」
「そうだな」
会話をしながら食事をしていると、包みに包んだ二人の弁当を持ってきてくれた。パンで肉と野菜を挟んだサンドイッチのようだ。量は確かに小さめだったが、特別に作ってくれたとあればそれだけでもうれしいというもの。
「はい、二人分です。合計四人分置いていってくださいね」
「ありがとう……よっと」
アイテムボックスに昼食をしまい込むとリンカちゃんが驚く。
「タカナシさんはアイテムボックス持ちなんですね……意外です」
「おかげでいろいろ楽をさせてもらってるよ。これもイアンちゃんの知り合いのおかげだね」
神崎さんのことはおそらく伝わっていないので、この言い方で伝わるのだろう、と思う。
「そうなんですね。アイテムボックスを持ってるだけでもすごいことですから、それを他人に渡せるなんてよりすごいことです。イアンちゃんの関係者ってどうなっているんでしょうね」
「ははっ、全くだよ。さて、食べたしさっそく向かうか。今日は無理せず稼ぐぞ」
「はい! 」
四人分の朝食代、銅貨で32枚分をテーブルに置いておくと、部屋に戻って出かける準備をする。
「さて、パナメラのダンジョンと言っていたな。実際にダンジョンに行く前に冒険者ギルドで場所を確認していくか。パナメラのダンジョンと言われても俺にはどこにあるかわからないしな」
「私もわかりません。なのでわかっている人に聞くのは基本ですね! 」
「そうだな。じゃあ、さっそく出かけるとしよう」
冒険者ギルドに向かい、ギルドでパナメラのダンジョンの位置を聞く。最寄りであるダンジョンへは北門から出て30分ということらしい。後は使ってないのは西門だけか。
早速話に従って北門から外へ出て、30分ほど歩くと、「パナメラダンジョンこっち」という看板が普通に残っていた。看板が壊れずに残っているということは、壊れてもすぐに作り直されているか、モンスターがほとんど近寄らないか、この周囲は頻繁に掃除されているかのどれかだろう。
「もう少しですね、楽しみです」
「ダンジョンか……どんなモンスターが出るのかぐらい調べてくればよかったかな。でも、初遭遇の楽しみというのもあるからな」
「どんなモンスターが出ても、ご主人様は守ります! 」
ふんす、と鼻息も荒くセルフィが俺の護衛を申し出る。
「本来なら年齢的には俺が守る側じゃないといけないんだろうけど、セルフィもう俺より強いしな。頼りにしてるよ相棒」
「はい、頼りにされます! 」
ショートソードを腰にぶら下げたまま、セルフィが楽しげにダンジョンの入口へと向かう。ダンジョンの入り口には兵士の格好をした人がおり、入り口で探索者証の改めをしていた。
「ご苦労様です」
「あいよ……Fランクだな。最下層には近寄らないようにしておいたほうが安全だぞ。それ以上なら多分……安全だ」
「ご忠告どうも」
さて、中に入るか。
side:アザーワールド社 イアンから提供されたアンケートはその日のうちに会議にかけられ、アザーワールド社内でも問題となった。即座に銀行口座に対して照会がされ、小鳥遊が金銭を稼ぎ副業として立派に稼いでいることと、その金額が十分に大きいことがクローズアップされ、話は更にややこしくなった。「ふむ、では小鳥遊氏は満喫していることは確かなのだな? 」「それは間違いないでしょう。ただ、休みに行ってるというよりは出稼ぎついでに休んでいる、という形になっている可能性が大きいと考えられます。本人満足度が非常に高いのが返って不思議なのですが」「有休を320日も溜める男なんだ、普通に休んでいる感覚で仕事をしているのか、もしくは仕事と私生活が不可分な御仁なのかもしれないな」 社内ではそれぞれ会議内で意見が出され合い、この事態をどうするかについての協議がなされた。小鳥遊が稼いできた金額は二十日で彼の平均賃金のおよそ三カ月分以上。 有給休暇中にこれだけの資金を稼ぐのは明らかに副業である、という判断ができるだけの金額になっているため、厚生労働省に問い合わせるまでもなく、彼の有給休暇時間は再考の上で延長される可能性は高いとみられている。「10日のうち、真面目に休んでいるのは2日だけ、ということか」「おそらくは、現地で生活するための資金を稼いで、その余裕を貯蓄の形で回したのだと思いますが、何をしたかまでは今回アンケートの内容に含まれていないため、抜け落ちや不足があるものだと思われます」「神崎君、現地監視員からの詳細報告を求めることはできるかね? 」 上司からそう質問された神崎は、正直に答える。「今回のアンケート結果について、場合によっては有給休暇の延長が認められる可能性がある、という話については既に小鳥遊さんも知っている、ということですので、それを前提としたアンケートを再度行って、正式な事実として積み上げることは可能ですが、この様子ですと、ここ19日の有給休暇、そして18日間の異世界行きの時間に対して、比率換算すると4日しか休んでいない、という計算に行き当たります」「ふむ…&hellip
メリーさんのところへ行き、次の10日分の宿泊代金である大銀貨1枚を払う。「順調に稼いでるようで何よりだねえ。その調子でいつも通り長く居てくれると嬉しいね」 メリーさんがそろそろ更新日付だということを覚えていてくれたので、次の区切り日までの延長ということになった。メリーさんとしても、親父さんとしても、マヨを安く仕入れることができるということでメリットはあるはずだ。「あと、桶をいくつか借りるね。ちょっと今日は全身ピカピカにしてみたいもんで」「今の時間ならいいさね。お湯を沸かす時間までに帰してくれれば自由に使ってくれていいよ」 許可を得たので、井戸で水を汲んで部屋に持ち込み、部屋の中で火魔法でぬるい湯にまで温度を高める。気持ちいい温度になったところで、服を脱いで全身に水をなじませた後、石鹸で体を洗い始める。「うん、ちょっとビリッとくるが、このぐらいは許容範囲かな。レンモの香りもするし、泡立たないのはそれだけ体が汚れてるってことだろう。スポンジみたいなものがあればより良かったかもしれないな」「すぽんじ……とはなんですか? 」 スポンジを知らないのは当たり前か。ここの周辺には海もないし、海綿も珍しいものになるだろうから説明が難しいか。「泡を立てるのに便利なもの……かな。石鹸を泡立ててから体を磨いたほうが効率的に体を綺麗にできるんだがな。手ぬぐいより便利なものが今のところ手持ちにないから、諦めておくしかないかな」「ぬるぬるしますが、このぬるぬるが大事なんですよね? 」「ちゃんと水で溶いて、泡立ちを……と言いたいが、俺もセルフィも体がそれなりに汚れてるから泡立たないのかもしれないな。毎日定期的に綺麗にしてると、泡が立ってなかなかに気持ちいいんだが」「むぅ、そうですか。じゃあせめて全身綺麗に洗って、その後洗い流してレンモの香りがするようにしましょう」「それだけできれば十分かな。さて、そろそろ洗い流すか……って、桶を複数個借りてて正解だったな。垢で桶の中が凄いこ
どうやら、俺がゴブリンの耳を査定にかけた段階で第一報はフェリクスさんに伝わっていたらしい。そして、査定とカウンターで報酬の支払いと相談をしているうちに情報が伝わって、あらかじめ事前情報を共有。そこまではできているらしい。仕事が早いな。「えっと……このあたりで一匹、その後このあたりでもう一匹、それからここで一匹、この時点で戻ったのでこの先は不明ですね」「なるほど。つまり、この間には巣がある可能性は低い、というわけですね」 俺が通ったルートをたどり、フェリクスさんが書類の上に魔石を置いて場所を絞り込んでいく。「セルフィが一緒に居るので、もし巣に誘い込んで俺を引き離して襲おうとしていた場合、もっと早く仕掛けてくる可能性があったはずです。なのでここまでは安全ゾーンであると考えます」 アライ草を採りに行っていた範囲を丸っと安全圏ではないか? と判断する。巣があるとしたらその先の可能性が高いだろうと意見を具申する。「確かにそうですね。だとするとこの先にあるかどうか、探しながら行かなくてはなりませんね。本来ここにはゴブリンは生息していないんですよ。仮に住み着いたとしても、街に近すぎますので、駆除対象にしなくてはいけません。これがもっと遠くや、薬草群生地の近くでなければ問題はなかったのですが」 ゴブリンの発生場所について詳しく教えてくれている。今後も似たような場所にゴブリンが出た場合には参考にしろ、ということなのだろう。フェリクスさんのほうをちらっと見やると、こくりと頷く。そういうこと、ということなのだろうな。「一つ質問があります」 早めに聞いておこう。この後数日かけての作業になる可能性もあるからな。「なんでしょうか」「ゴブリンの巣の特定が必要になった場合、我々も特定のためにギルドの指示を仰がなければならないのでしょうか? 」「そうですね、手伝いをしてくれるなら一番ありがたい、というのが正直なところですね。やはり一度現地を知っている人物が追い込みや索敵、追跡をしてくれるほうがありがたいのが確かです」 こっちは初めて出かけた場所だから詳しくない
カウンターへ行く前に、今度はモンスターの査定を行う。ゴブリン二匹分だけだが、金になるならこれもちゃんとした収入。それに、あんまりアイテムボックスに入れておきたいものでもない。 査定カウンターにゴブリンの耳を持っていき、渡す。「ゴブリンの耳ですね……これをどこで? 」 査定嬢の目がぎらつく。ゴブリンがすぐそばに繁殖しているというなら大ごとだろうし、そうでなくても街の近くにいたという話だけでも大事なことだろう。「西門から南西に30分ほど行ったところでゴブリンが最低3匹はいることは確認しています。その内の2匹の分ですね」「残りの1匹はどうされたんですか? 」「こちらを警戒して罠を張ってる可能性があったので、下手に会敵したり戦闘をしないうちに撤退してきました。できるだけ警戒して帰ってきましたが、付いてくる様子はなかったので気づかれなかった可能性のほうが高いですね」「なるほど。その話、帰ってきてから誰かにしましたか? 」 査定嬢が更に確認を重ねてくる。報告はしたか、ということだろう。「ここで話しているのが最初です。誰に報告したらいいのかもわからない新人なので、専門の部署があるならそこへ相談しに行くのですが」「わかりました……と、カウンターで支払いを受ける際にこれをついでに渡してください。担当部署への引継ぎのサインになります。細かいお話はそちらでお願いします」 査定嬢からは耳二つ分の査定金額が記された査定結果書をもらう。 ゴブリン 2 どうやら、シールドゴブリンと普通のゴブリンに差はないらしい。いくらになるかは受け取るまで分からないってところだな。まあ、ダンジョンのモンスターより安いということはないだろう。 カウンターへ行って薬草の査定結果を渡す。カウンターでは薬草査定結果を確認して、銀貨7枚と大銅貨1枚を渡される。これで今日の稼ぎは銀貨9枚と大銅貨1枚となった。最近の稼ぎからすれば多くはないが、7日分の宿泊代金と考えれば安いものだ。 ゴブリンの左耳はどうやら一匹当たり銅貨5枚と
ここまでで出てきたゴブリンは二匹。そもそも偶然ゴブリンが出現した、という可能性はまだ否定できない。初心者冒険者がゴブリン二匹と出会ったからと言ってそれを元に巣ができたかもしれない、と引き返してくるのはありがちかもしれない。 だからといって、このまま次のゴブリンを探して彷徨ってる間にゴブリンの計略にはまって囲まれて……という可能性もある。ここは深追いせずに、薬草採取のついでにゴブリンを探す、という方向を続けているほうが良いな。 もうちょっと街に近い位置にまで戻ってアライ草を探す。そして、そこでゴブリンがもう一匹出てきたら、これはゴブリンが街の近くで繁殖している可能性が高い、と冒険者ギルドに報告する流れのほうが良いだろう。 こっちは二人しかいないんだ、集団戦に持ち込まれたらあっという間にのされてしまうだろう。いくら剣聖だとしても、ゴブリンが十数匹、数十匹と現れてくるような状況では限界もある。まだ剣聖としてのレベルが高いとは言えないセルフィでは手に余るだろう。 そして、ゴブリンによって攫われてあーんなことやこーんなことに……うむ、許せん。ゴブリンはすべて殲滅しなければならないな。そのためにはきちんとした手順を踏まないといけない。 俺とセルフィの力をもってすればゴブリンなどたかが低級モンスター……と言い切れるほど腕に自信があるわけでもない。世の中の流れや手順、ルールにはできるだけ従うべきである。 もしも、ここで討伐をしなかったり巣を放置したせいで少なからず損害が出るんだとしても、街の西側なら何もないし、あえて言うなら採石場があるのみ。 ゴブリンが石に興味を示すとは思えないので、ゴブリンがより繁殖してから襲ってくるか、通りかかる民衆を襲うのがせいぜいだろう。 その前に短期決戦でゴブリン退治をする、というほうが期待に応えることができるだろう。その為には報連相、無理に自分たちだけで解決しようとせず、冒険者ギルドに報告する。 そして、俺たちより使える安全なパーティーが偵察を行い、ゴブリンの巣を発見して駆除の流れをきちんと作ってもらうほうが大切だ。
西門にたどり着き、外に出る。出るときに衛兵がいつも通り話しかけてきた。「冒険者が西門に用事があるのか? 」「薬草を採りに行くんですよ。西門からのほうが近くて」「そうか、夜の鐘には遅れないようにな」 納得したらしく、そのまま見送ってくれた。ちゃんと仕事をしていてえらい。そのまま西門から南西方向に道を外れて、採石場とは道を挟んで反対側に行く。 まだ採石場として稼働していないが、今稼働している採石場から石を取り切ったら、こっち側が今度は採石場になるんだろうな、というようなイメージの岩場を歩く。道はないので適当に岩に昇って……そして、岩陰にこっそりと生えている草を鑑定する。 草からは「僕アライ草です、こんにちは。良く育ってます」と返事が返ってきた。アライ草はこんなに近くでも取れてくれるのか。ただ、鑑定で調べる感じ……と、お? 今ので鑑定のレベルが上がったらしい。 範囲鑑定ができるようになって、周辺の地形の中にどんなものがあるのかが遠距離でもわかるようになってきた。ついでに、さっきの鑑定結果のアライ草の返事を見る感じ、状態変化も把握できるようになったらしい。「セルフィ、鑑定のレベルが上がったぞ。これで離れててもどこに薬草が生えてるのかわかるようになった。いちいち近づいて見たり抜いて観察しなくていいのは楽だな」「おめでとうございます。これで楽に稼げますね」「そうだな、しっかり育ったアライ草だけを抜いていくことにしよう。アライ草の育ち具合も見られるようになったからそこも楽になった」「鑑定だけで食べていけるようになったんじゃないですか? これでお休みを増やしてもいい感じになりましたね」 セルフィはニコニコと嬉しそうにしている。お休みが増えるのを楽しみにしているらしい。確かに、自分の自由になるお小遣いも増えたし、お休みに買い食いするとか楽しみたいことはそれなりにあるだろう。「それだと鑑定やってる婆さんの商売敵になっちゃうしな……鑑定で飯を食っていくつもりはないよ。それに、レアなスキルを持っ
「あ、いました。一日どうでしたか。リンカちゃん、安いほう一つ」「あいよー、黒パンセット一つ! 」 ふと気が付くとイアンちゃんが訪ねてきていた。そういえば、夜にでも今日の一日の成果を確認しに来ると言っていたな。「やあ、イアンちゃん。一日ゆっくりできたかい? 」「それはもうゆっくりと……って、私のことは良いんですよう。お二人がどうなっているかが気になるんです」「それは、もうばっちり。この通り、今日のご飯は高級セットが食べられるぐらいには稼いできたよ」 テーブルの食器を指
身支度を整えたところで一階の食堂に降りて行って、リンカちゃんにリッチな夕食を二人分頼む。「父さん、白パンセット2つ! 」 席に座り、しばらく待っていると、しっかり両面を焼かれた白パンに具だくさんのスープとちょっとしたソースがかけられた肉が小さく一枚乗ってきた。どうやら今日はサービスがいいらしい。それとも、夕食の白パンセットには必ず肉がつくんだろうか。まあ、いい。 とりあえず食べよう……と、肉についているソースをなめとる。少しはちみつが混ぜてあるのか、ほのかな甘みとソースのこってり感がある、なかなかに味のあるソー
side:セルフィ 奇妙なお兄さん……私のご主人様、タカナシさんとの生活も二日目になった。思えば、初日にいきなり剣を持たされてさあ、振ってみろと言われたのはかなり無茶だった気がします。 でも、剣を持たされた私は急に世界が広がったように見えて、そしてモンスターの動きもゆっくりに見えて。まるで剣が私を欲していたかのように動き出すことができました。 戦うのは初めてだったけれど、それでもこの上なくうまくいった気がします。これが剣聖というスキルの効果だったのでしょう。 私にそんなすごいスキルが付属していた
結局ミニボアを3匹ほど倒し、心臓が動いてる間にできるだけ血抜きをしながら進んできたので思ったより時間がかかった。30分で間に合う道に40分かけて歩き、何とか2匹は血を抜いたが1匹は血抜きをしないままアイテムボックスに入れて持ってきた。 これはちょっと減額されるかもしれないな。でもまあ、セルフィが綺麗にさばいてくれたおかげで毛皮にもほとんど傷はついていない。肉の味にどうかかわってくるかだけが気がかりだな。 北門に到着して門で冒険者証を見せて通り抜ける。「素人質問で恐縮なのだが、北門だけ他の門と違う理由で通り抜けが可能だったりしないのか? た







