LOGIN今日は東門から出るらしい。東門から出るほうが草むらに近く、また薬草の採取場からは離れているうえにこちらはモンスターが出やすい方向だということらしい。東のほうに行けば行くほどモンスターも強く、ゴブリンの巣なんかもできやすいとのことで、戦闘を行う冒険者は大体東門から出ていくらしい。
「さて、では行きますよお二方」
イアンちゃんが先頭に立って歩みを進める。
「はい、イアン先生」
「なんですかタカナシさん」
「このあたりには何が出るんですか? 」
「このあたりにはスライム、ホーンラビット、ミニボアの三種類が出ます。お勧めなのはミニボアですね。小さいですがお肉は中々の美味しさです。ホーンラビットはもう戦ったことがあるとは思いますが……セルフィさんは戦闘経験は? 」
「一切ないです。さっき剣を振るったのが最初です。後は近所の、お母さんの悪口を言う子供をボコボコにするぐらいしか」
「なるほど。では、実践訓練含めて一つ一つ積み上げていきましょう。まずはモンスターに遭遇するまで適当にうろうろします。モンスターが出てきたら教えますので、それぞれ戦ってみてください」
「はーい」
茶番を一つやった後、東門から出た草原へ向かう。こっちは草むらというような見た目もなく、草原というより平原といったほうが正しいのかもしれない。ちょっとした丘を越えると、その先にはモンスターがうようよとうごめいていた。
モンスター同士が共闘したり戦いあったりしないのが不思議な程度の密度だ。社会性のあるモンスターなら……ああ、だからゴブリンが巣作りして適度に密度を保ったりするわけなんだな。
「では、一番近いそこのホーンラビットを、タカナシさんまずやってみてください。その次にセルフィちゃんに真似してもらいます」
「はい! 」
ホーンラビットがこっちを見かけて、まっしぐらにこっちへ向かってくる。ホーンラビットを避けずにそのまま首をはねるようにしてショートソードを振り、胴体と頭を泣き別れにする。ホーンラビットぐらいなら今の俺の体力なら数匹まとめて来ても問題ないだろうな。
「よろしい、では次、セルフィちゃん」
「はい……スッ」
一糸乱れぬ動きで剣を握ってそのまま、まるで手慣れた行動であるかのように動くと、軽やかな動きで無駄なく、ホーンラビットの首を同様に斬り飛ばす。そしてその斬撃は……後ろにあった木に傷をつけ、そこでようやく止まった。
「ふむ……やはり俺より数段向いているように見えるな」
「本当に剣聖……鑑定は嘘じゃないみたいですね。ただ、剣聖が本当に剣でよかったですね。拳のほうだったら今頃体内ズタズタで売り物にならないところでしたよ」
心配されるところがそこなのか……いや、そこが大事なのだろうな。今は手元に自由になるお金がある程度ほしい。それも多ければ多いほどいい。それだけ手札が増えればより強いモンスターや商売にも手を出せるようになるはずだ。
「よし、怒られない範囲で自分の強さを確かめつつ、冒険者で戦闘に向いているかどうかも含めて確かめながら行こう。いくら剣聖といっても最初から全力でモンスターの突進を止めるようなことは……」
「そこの兄ちゃんたち! 危ないぜ!! 」
ふと声がするのでそっちを向くと、モンスターを引き連れて逃げてくるパーティーの姿がある。そのパーティーの後ろには、ミニボアが十数頭。どうやらミニボアばかりだ。ミニボアの暴走だ。
そのパーティーは俺たちの横を通り過ぎていき、何匹かのミニボアはそのままパーティーを追いかけていったが、途中で正気に戻りこちらを向き、こっちにも人間がいるぞ、と言わんばかりに突撃をしてきた。急いでよけながら、数匹のミニボア相手にあたふたさせられる俺とイアンちゃん。そして……
「……ふっ! 」
冷静にミニボアの体当たりを避けながら、ミニボアを食べやすいように血抜きするかのように、正確に頸動脈の位置を狙ってミニボアを処理していくセルフィの姿があった。これが生まれもったスキルの差って奴なのか。教えてないのに正確に頸動脈を狙えるのは本能か才能か。それとも、食欲か。
「倒せた……」
俺とイアンちゃんがそれぞれ2匹ずつを倒して手間取っている間に、セルフィは一人で4匹のミニボアを倒していた。それも、全て一撃で。
「これではっきりしましたね。セルフィちゃんの能力は剣聖、間違いなく剣の才能があります」
「そうみたいだな。しかし、スキル一つでこれだけの差が出るとは、この世界も世知辛いな。長年の修行も一つのスキルで押し切られてしまう可能性を考えると、涙が出そうだ」
「タカナシさんとは一日しか違わないじゃないですか。それに、剣術レベル1と剣聖レベル1ではランクが違って当然です。この際、タカナシさんが自力でミニボア二匹倒せたことを褒めるべきかもしれません」
「そこまで違うのかあ……とりあえず血抜きして、その辺に並べておくとするか。帰り際にアイテムボックスに入れていけばいいよね」
「アイテム……ボックス? 」
セルフィが不思議そうにしているが、試しに剣を仕舞って出して見せる。セルフィがその便利さに驚く。
「持ってる人初めて見た! 」
セルフィから見てもアイテムボックスは珍しいらしい。とりあえずミニボアをその辺の木に逆さにつるして、セルフィが綺麗に仕留めたミニボアから順番に吊るしていく。やはり切れ味も違うのか、それとも武器屋のおやじが良いものを持たせてくれたのか。とりあえず心臓が動いてるうちにしっかり血抜きして、しばらくしてアイテムボックスに詰め込んで、8匹分の肉を手に入れることができた。
「イアン先生、これでいくらになりますか」
「そうですね、冒険者ギルドの解体所に出してどうなるか、ですがうまく行ってそれだけで銀貨1枚ってところでしょうか」
「うーん、今日一日の目標にはならなかったが、買い物して装備を整えて、セルフィを引き取ってそれだけの労力を重ねた上で更に銀貨1枚分の収入があったと考えるべきか。朝から活動してたら銀貨3枚分ぐらいの仕事はできたかもしれないな」
「あ、あとホーンラビット二匹分の買取があるから10枚分さらに追加ですね。でも、もう少し粘ってみましょう。ミニボアの2、3匹ぐらいは追加で手に入るかもしれません」
「よし、セルフィに置いていかれないように俺もしっかり剣術を磨こう」
「私も頑張ります! 」
そのまま、あと5匹ミニボアを倒して血抜きをしたところで時間切れとなり、日が暮れる前に町の中に帰ることができた。今日もちゃんと帰れてえらい。
side:アザーワールド社「部長、小鳥遊さんの件ですけど」 神崎がイアンからの報告書をもとに、現地での行動をまとめた調査報告書をあげる。神崎の上司である茅野が閲覧し、渋い顔をする。「ふむ……ふむ……なるほど」 茅野は書類を一通り見終わった後、静かに調査報告書を読み終わり、神崎に向かい直し、コーヒーを一口飲むと、静かに語り始めた。「小鳥遊さんは向こうでも仕事をしっぱなしで休んでないどころか、本業以上の収入を得ている可能性がある、ということだね? 」 神崎も茅野からコーヒーを受け取り、グイッと一気に飲み干すと、ため息をつくようにはぁ……っと呼吸をしてから上司に対して口頭で報告を始める。「そういうことになります。さすがに小鳥遊さんの本業での収入について調べ上げることはプライバシーの観点から調べることはできませんが、厚労省に問い合わせて有休強制消化法案第18条第3項を理由とした、個人口座の記録の参照を厚労省に依頼し、それを元にして本業よりも稼いでいることが確認された場合、同じく9条2項の副業規定にかかるかどうかを確認する必要があります」「しかし、二週間そこそこで預金口座に振り込めるほど稼いで、それでいて生活費は現地調達。奴隷を購入してなおまだ余裕あり。奴隷と共に手数を増やして生活を自力で稼ぎ切っている……と」「そうらしいです。現地ガイドの三回目の報告書はまだ受け取ってませんが、二回目の報告書の時点でこういうことになってますから……今の段階で考えると、莫大な金額を稼いでいる可能性がある……ということになります」 茅野は腕を組みながら椅子のローラーをころころさせながら、ぐるぐるとその場で回転し始め、止まった後、神崎の顔を見たあと、下を向いて机の上に軽く突っ伏すような格好になった。「神崎くぅん、この場合どうすればいいと思う? 有給消化に来てもらってるのに有休中に働いてしまっているんだけど」「過去に同じようなケースがなか
報酬を受け取って、銀の卵亭に帰る前に少しだけ書棚に用事。時空魔法について書いてある本や冊子はないかを検索する。すると、非常に薄っぺらい”ジクウマホウノキホン”というそれっぽいものを見つけることができた。 時空魔法とは、時間と空間をある程度掌握し、使いこなすことのできる希少な魔法である。この時空魔法の使い手は非常に希少であり、存在した時点で国家の中枢機関である大知能館という名称の大学か研究機関のようなものに所属することになり、年に二回の時間合わせや、時空魔法の研究に人生を費やしてもらうことになるらしい。 詳細については今もなおもって研究中であるが、一番初歩の魔法として現在の世界時間を知ることができる、というものは共有してもいいが、それ以上の情報はここに記したり知られること自体が社会全体へのダメージになりえるので詳細を書くことはできない、とのこと。 要するに、何も教えてやれんから、知りたければ大知能館へ来い、という話なのだろう。しかし、そこへ行ったが最後死ぬまで時空魔法の研究に人生を費やされることは確実である。セルフィのこともあるし、俺がそこへ行って学ぶことは何もないだろう。 しかし、時空魔法か……名前からして時間を止めたり、空間をずらしてその隙間を利用することで攻撃に応用したりとか、そんなことは思いつく。実際にできるまでには相当量のレベルや技量、慣れが必要なのは間違いないだろう。 後は、アイテムボックスのスキルではなく、物理的にアイテムボックスとして作用させられる鞄や入れ物を作成できるのもこの魔法の応用だったりするのかもしれないな。「お探しの物は見つかりましたか? 」 後ろで剣聖の物語の絵本を読んでいたセルフィが、本を閉じるタイミングを見計らって声をかける。「残念ながら。ここでは俺の欲しい情報は手に入らないようだ。もっと大きい書棚を探すか、首都へ行くか、もしくは大知能館という場所に行けば知れるらしいが、その代わり一生その魔法の研究に費やす必要があるらしい。調べるのはここまでだな」「そうですか、残念ですね。でも、本棚二つ分しかないこの冒険者ギルドの情報の中で、ほんの少し
食事を終えて、休憩した後五層から四層へ移動して、戦闘を継続しようとしたが、セルフィから待ったがかかる。「お金稼ぎも大事ですが、お金は後でも稼げます。ここは更に確実にお金を稼げるように、自分たちの修行……つまり、剣術や火魔法のレベル上げに費やすほうが先ではないでしょうか」 ふむ。たしかに、四層よりも五層のほうが自分の経験を積み重ねるには都合がいいだろうし、その分早く剣術や剣聖のレベルも上がることになる。セルフィの言う通りかもしれないな。「じゃあ、引き続き五層で戦うか。でも、その代わり前ほど稼げないかもしれないがそれは構わんか」「構いません。急いで稼ぐ必要はない、と昨日確認したところですし、強くなることが遅くなっていくほうがこの際問題ではないでしょうか」「じゃあ、五層でもうちょっと頑張るか。今日中にもう一つか二つ、レベルを上げておきたいしな」「はいっ」 実力アップに念頭を置く、ということを確認した後、すぐにレベルアップの機会は来た。剣聖レベルと剣術レベルがそれぞれ上がり、火魔法もレベルが上がった。 どうやら使ったら使うだけレベルが上がるのが魔法で、剣術や剣聖レベルも、剣を振るだけ振った時にレベルが上がり、モンスターを相手にしている時のほうが上がり幅が大きい、ということらしい。 より強いモンスターを相手にするほうがお得なので、もう少ししたらワイルドボアを集中的に狙っていって倒す、というようなことで、金も実力も両方手に入れることができるようにはなるだろう。 ワイルドボアをメインで倒していくようなことになったら、単純計算で10倍の収入になるのだから、かなりの収入になるのは間違いない。これは皮算用がはかどるな。 よそ事を考えながら戦える程度には五層の戦闘も慣れてきた。コボルトマジシャンも高密度で威力のあるものや誘導性のある魔法などは使ってこず、純粋に一方向に飛ばす程度の簡単な魔法しか使ってこないので、盾で逸らせばそれで終わる。 面倒なのはやはりコボルトリーダーのほうだ。立派な胸当てをつけているおかげで時々攻撃を防がれることもあり、剣と盾を持っている分だけ
四層で出てくるコボルトバーサーカーとコボルトフェンサーは普通に出てくる。三層でも数回出会った。どっちも気軽に倒せるようになった相手ではあるが、盾を持つことでより安全に戦えることになった。何せ、相手の攻撃を最低でも一回は止められる。 そしてその間にこっちは一、二回攻撃することができるので、一発で倒せる相手ならそれで振らせて受け止めて、そのあいだにやり返して終わり、となる。コボルトフェンサーはもっと単純で、突き込んできた攻撃を盾で受けて外側へ弾いて、バランスを崩したところで一刀入れて終わり。 やはり、軽めとはいえ盾が一枚あるだけで随分戦術が変わるものだな。もっと早く買い入れておけばよかった。持ち運びや移動にはアイテムボックスがあるし、費用対効果はこれからきちんと出していこう。 しかし、盾がないほうがより気軽に戦えるのも事実。五層に下りてから盾を出すでもよかったが、五層のモンスターが四層に上がってきているのを確認してから盾を渡すのでは間に合わない可能性もあったからな。 でも、盾があると確実に便利であるのはわかった。今後はどうしようかな……ダンジョンで活動するときは盾を装備したまま活動して、という方法でもいいし、もしかしたらワイルドボアの突進を盾なら止められるかもしれない。 さすがにセルフィは身が軽すぎて弾き飛ばされる可能性はあるが、俺はショートソードで受け止めるよりも安全に止められる可能性が高まったか。今度ワイルドボアに出会った時に試してみよう。 四層から五層に向かい、ついに最下層に足を踏み入れる。五層にはコボルトマジシャンとコボルトリーダーが出現する。それ以外には出現しないという情報は仕入れているし、今更活性化の度合いが増して新しいモンスターが出てくることもないだろうしな。「コボルトリーダーがいると周りのモンスターが強くなるんでしたね」「ああ、だからコボルトマジシャンもただ出てくるだけじゃなく、一段階強くなって出てきているはずだ。面倒だがその分収入にはなるはずだ。真面目にやって今日も稼いで帰るぞ」「はい、でも、怪我しないのが第一ですよ」「そのためのこれだからな。しっかりやってい
どうやらあのレモンみたいな果物はビッグラットスレイヤーという俗名があるようだ。皮が分厚くビッグラットの歯でも中身まで貫くことは難しく、仮に中まで到達したとしても、強烈な酸味にビッグラットも負けるであろう……ということかららしい。 実際にぶつけたらビッグラットが死ぬであるとかそういうわけではない。もしそうなら、値段によってはビッグラットにぶつけ続けることでパナメラのダンジョンの一層は気軽に突破できそうなものではある。 さて、帰ってきてさっそくマヨづくりだ。いつも通りアイテムボックスから泡立て器を出し、綺麗に水で洗った後清潔魔法をかけて、材料にも一通り清潔魔法をかけて消毒をした後でいつもの手順で混ぜ合わせ始める。 もったりと、油以外の材料を混ぜ合わせたところでセルフィの出番。ちょっとずつ油を流し込んでもらい、その間にきっちりかき混ぜていく。油も分量をちゃんと計って買ってきたため、ちょっとずつ流し込むだけで規定の量のマヨができるように調整済みだ。「さすがに慣れてきました。結構退屈ですが、この退屈さが大事なんですよね? 」「一気に入れるとうまく混ざらないんだよ。辛抱が大事だ」「はい、ゆっくり入れていきます」 セルフィの補助もあって、すんなりとマヨづくりがうまく行き、容器いっぱいになったマヨを親父さんに渡し、今日の一つ目の仕事完了。これで数日かけて銀貨2枚分のお仕事をこなしたことになる。マヨのレシピが頭の中にあり、なおかつ商業ギルドのシノギを邪魔しない範囲での小遣い稼ぎとしては十分だろう。 俺が直接関わってるならば一店舗ぐらい……というのが商業ギルドとしても落としどころだろうから、俺個人が携わってもいいのは銀の卵亭だけということになる。それ以外はなしだ。これは宿泊サービスへのお礼みたいなものだからな。 マヨを作り終えていつもの冒険者装備に着替えた後、冒険者ギルドへ立ち寄って、パナメラのダンジョンの活性化が収束したかどうかの確認を取る。 すると、まだ活性化の最中で、五層は普段より三割増しで危険であることを教えてくれた。四層でうろつくだけでも十分かもしれないと
いつもの日差しに目は覚まされなかった。昨日はセルフィと一緒に眠ったんだったな。いつもより暖かな懐に潜り込んでいるセルフィを見て、少し苦笑い。 奴隷と主人、仲を深めたとは言え同じベッドで寝るのは少しやりすぎたかもしれない。まぁ、他の宿や遠征先で、ベッドが一つしかないときに、セルフィが床に寝る必要がないということが確認できたから良いだろう。 セルフィも起き出した俺に気づいて目を覚まし、昨日のテンションのおかしさにようやく気づいたらしい。「昨日の夜のことは忘れましょう。改めて、ご主人様の気持ちが伝わったということで」「その言い方だと何か俺がやらしいことをしたみたいに聞こえるからやめよう? 仲良く眠っただけだ、何もなかったし、何かをするつもりもない」「はい、そこは信用しています。今までいくらでもそういうことはできたはずですし」「よし、いつも通り着替えて顔を洗って身支度をして、ご飯を食べたらマヨの材料の買い出しに行くぞ」「はいっ」 井戸へ行って顔を洗って、その後いつもの肌着洗い。清潔魔法をしっかりとかけて……お、アナウンスがあった。清潔魔法のレベルが上がったらしい。 しかし、レベルが上がる原因が汚れの強さなのか回数なのかは今後調べていきたいところだな。汚れだったら相当汚れていることになる。それはちょっとへこむが、日々仕事を頑張っている証拠でもあるので一概に悪いとも言いきれないか。 セルフィの分も綺麗にすると、新品同様とまでは言わないが、ほとんど汚れのない清潔な着替えが出来上がった。時間があるならここで服を乾かすところまで行きたいが、今日は仕事があるので自然乾燥に任せることにする。 食堂へ行き、昨日の残り物でできた朝食を銅貨8枚でいただく。考えたら、残り物と昨日の食事が同じ料金というのもどうなんだ? というところだが、腹が満たされるならそれでいいし、買いに行く手間や腹が満たされるまでの時間を考慮すればちゃんとした食事ではある。 それに、下手すると昨日の夜のスープよりも具が多かったりするので、朝と言えどきっちり食べておくに越したことはない。あと、意外とみん
次のコボルトを探す。探さなくてもその辺にうろうろしているが、この中で一番近いコボルトを探す。できれば同時に三匹以上の集団には出会いたくない。こっちは二人、同時に相手にできるのは二匹が限界だ。 もっとこなれてくれば複数モンスターにも対処できるようになるかもしれないが、こちとら戦闘はまだ三日目なんだ。そこまで手慣れたベテランでもないし、もしかしたら戦闘開始三日目でダンジョンに潜るというのも無謀な話だったのかもしれない。しかし、実際にできてしまっていることを考えたら決して無謀な策ということでもないらしい。 さて、俺の番だ。コボルトは決して大きい体格をしていない
パナメラのダンジョンに入場する。入った先では人が幾人もいて、臨時パーティーの募集やそれぞれの持ち物の確認、今日の探索予定などを確認していたりする。ダンジョンの中で確認していてもいいのかとも考えたが、どうやら第一階層はモンスターが出てこないらしい。さすが初心者向けダンジョン、緩いものだな。 実際に活動するのは一層の途中から、ということらしい。楽しみにしすぎて地図も何も持ってこなかったおかげで、自分で地図を作りながら進まなくちゃならないな。「とりあえず奥へ行くか。この辺はまだ安全というより何も出ないらしい。モンスターが出るところまでまず行こう。戦ってみてから
朝が来た。相変わらず日の差し込みやすいこの建物の一室は、俺の目を直撃するように日が入ってくるので、目覚ましとしては中々に性能がいい。 ふともう一つのベッドに目をやると、セルフィが丸くなって眠っているので、もう少し寝かせておいてやるかと一人起き出し、トイレと顔洗いを済ませる。ボットン海綿トイレにも三日目にして慣れた。二日目は気になった、服に染み付いた自分の匂いも気にならなくなった。やはりこういうところではいかに早く慣れるかが大事だ、と神崎さんも言ってたっけ。 井戸から水を汲んで顔を洗うと、口もすすいで後は磨き砂でも口に含んで歯のほうも綺麗にしておく必要があ
食事を終えて、満腹になる。結局、もも肉の茹でたやつを追加で注文して、お金は定食と合わせて銅貨30枚ということになった。いいお店を教えてくれたのでここは俺のおごりだ。「さて、今後何をしていくかだが……ダンジョンへは一度向かってみたい。ダンジョンではどういう稼ぎができるんだい? 」「では、まず説明を。ダンジョンでは、モンスターの死体が残らず消滅します。その代わり、モンスターの体内に存在する魔石が必ず落ちてきますので、それを冒険者ギルドに出すことで報酬を得られます。モンスターが強いほど魔石の質もいいものが落ちると考えてください。そし