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第17話:剣聖だった

Author: 大正
last update Petsa ng paglalathala: 2026-04-29 07:00:30

 今日は東門から出るらしい。東門から出るほうが草むらに近く、また薬草の採取場からは離れているうえにこちらはモンスターが出やすい方向だということらしい。東のほうに行けば行くほどモンスターも強く、ゴブリンの巣なんかもできやすいとのことで、戦闘を行う冒険者は大体東門から出ていくらしい。

「さて、では行きますよお二方」

 イアンちゃんが先頭に立って歩みを進める。

「はい、イアン先生」

「なんですかタカナシさん」

「このあたりには何が出るんですか? 」

「このあたりにはスライム、ホーンラビット、ミニボアの三種類が出ます。お勧めなのはミニボアですね。小さいですがお肉は中々の美味しさです。ホーンラビットはもう戦ったことがあるとは思いますが……セルフィさんは戦闘経験は? 」

「一切ないです。さっき剣を振るったのが最初です。後は近所の、お母さんの悪口を言う子供をボコボコにするぐらいしか」

「なるほど。では、実践訓練含めて一つ一つ積み上げていきましょう。まずはモンスターに遭遇するまで適当にうろうろします。モンスターが出てきたら教えますので、それぞれ戦ってみてください」

「はーい」

 茶番を一つやった後、東門から出た草原へ向かう。こっちは草むらというような見た目もなく、草原というより平原といったほうが正しいのかもしれない。ちょっとした丘を越えると、その先にはモンスターがうようよとうごめいていた。

 モンスター同士が共闘したり戦いあったりしないのが不思議な程度の密度だ。社会性のあるモンスターなら……ああ、だからゴブリンが巣作りして適度に密度を保ったりするわけなんだな。

「では、一番近いそこのホーンラビットを、タカナシさんまずやってみてください。その次にセルフィちゃんに真似してもらいます」

「はい! 」

 ホーンラビットがこっちを見かけて、まっしぐらにこっちへ向かってくる。ホーンラビットを避けずにそのまま首をはねるようにしてショートソードを振り、胴体と頭を泣き別れにする。ホーンラビットぐらいなら今の俺の体力なら数匹まとめて来ても問題ないだろうな。

「よろしい、では次、セルフィちゃん」

「はい……スッ」

 一糸乱れぬ動きで剣を握ってそのまま、まるで手慣れた行動であるかのように動くと、軽やかな動きで無駄なく、ホーンラビットの首を同様に斬り飛ばす。そしてその斬撃は……後ろにあった木に傷をつけ、そこでようやく止まった。

「ふむ……やはり俺より数段向いているように見えるな」

「本当に剣聖……鑑定は嘘じゃないみたいですね。ただ、剣聖が本当に剣でよかったですね。拳のほうだったら今頃体内ズタズタで売り物にならないところでしたよ」

 心配されるところがそこなのか……いや、そこが大事なのだろうな。今は手元に自由になるお金がある程度ほしい。それも多ければ多いほどいい。それだけ手札が増えればより強いモンスターや商売にも手を出せるようになるはずだ。

「よし、怒られない範囲で自分の強さを確かめつつ、冒険者で戦闘に向いているかどうかも含めて確かめながら行こう。いくら剣聖といっても最初から全力でモンスターの突進を止めるようなことは……」

「そこの兄ちゃんたち! 危ないぜ!! 」

 ふと声がするのでそっちを向くと、モンスターを引き連れて逃げてくるパーティーの姿がある。そのパーティーの後ろには、ミニボアが十数頭。どうやらミニボアばかりだ。ミニボアの暴走だ。

 そのパーティーは俺たちの横を通り過ぎていき、何匹かのミニボアはそのままパーティーを追いかけていったが、途中で正気に戻りこちらを向き、こっちにも人間がいるぞ、と言わんばかりに突撃をしてきた。急いでよけながら、数匹のミニボア相手にあたふたさせられる俺とイアンちゃん。そして……

「……ふっ! 」

 冷静にミニボアの体当たりを避けながら、ミニボアを食べやすいように血抜きするかのように、正確に頸動脈の位置を狙ってミニボアを処理していくセルフィの姿があった。これが生まれもったスキルの差って奴なのか。教えてないのに正確に頸動脈を狙えるのは本能か才能か。それとも、食欲か。

「倒せた……」

 俺とイアンちゃんがそれぞれ2匹ずつを倒して手間取っている間に、セルフィは一人で4匹のミニボアを倒していた。それも、全て一撃で。

「これではっきりしましたね。セルフィちゃんの能力は剣聖、間違いなく剣の才能があります」

「そうみたいだな。しかし、スキル一つでこれだけの差が出るとは、この世界も世知辛いな。長年の修行も一つのスキルで押し切られてしまう可能性を考えると、涙が出そうだ」

「タカナシさんとは一日しか違わないじゃないですか。それに、剣術レベル1と剣聖レベル1ではランクが違って当然です。この際、タカナシさんが自力でミニボア二匹倒せたことを褒めるべきかもしれません」

「そこまで違うのかあ……とりあえず血抜きして、その辺に並べておくとするか。帰り際にアイテムボックスに入れていけばいいよね」

「アイテム……ボックス? 」

 セルフィが不思議そうにしているが、試しに剣を仕舞って出して見せる。セルフィがその便利さに驚く。

「持ってる人初めて見た! 」

 セルフィから見てもアイテムボックスは珍しいらしい。とりあえずミニボアをその辺の木に逆さにつるして、セルフィが綺麗に仕留めたミニボアから順番に吊るしていく。やはり切れ味も違うのか、それとも武器屋のおやじが良いものを持たせてくれたのか。とりあえず心臓が動いてるうちにしっかり血抜きして、しばらくしてアイテムボックスに詰め込んで、8匹分の肉を手に入れることができた。

「イアン先生、これでいくらになりますか」

「そうですね、冒険者ギルドの解体所に出してどうなるか、ですがうまく行ってそれだけで銀貨1枚ってところでしょうか」

「うーん、今日一日の目標にはならなかったが、買い物して装備を整えて、セルフィを引き取ってそれだけの労力を重ねた上で更に銀貨1枚分の収入があったと考えるべきか。朝から活動してたら銀貨3枚分ぐらいの仕事はできたかもしれないな」

「あ、あとホーンラビット二匹分の買取があるから10枚分さらに追加ですね。でも、もう少し粘ってみましょう。ミニボアの2、3匹ぐらいは追加で手に入るかもしれません」

「よし、セルフィに置いていかれないように俺もしっかり剣術を磨こう」

「私も頑張ります! 」

 そのまま、あと5匹ミニボアを倒して血抜きをしたところで時間切れとなり、日が暮れる前に町の中に帰ることができた。今日もちゃんと帰れてえらい。

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