Share

意識しないわけない 10

Author: 玄糸雨楽
last update Last Updated: 2025-09-28 21:37:31
「1回くらいならセツ君とデートしてみてもいい、かも」

かも、と言葉を濁してる自分が優柔不断な気がしないでもない。

ずるいよね、私って。

そんな風に思ってる私なんてお構い無しにセツ君は大喜び。

曇りのない、まっさらな笑顔はただ仲良くしていた子どもの頃みたいに、なんの隔たりもない。

その表情を見ているとデートの誘いを、前向きに行きたいと答えられなかった私って可愛くないなって、自己嫌悪。

「本当!?ありがとう!花ちゃんを楽しませるからね!任せてよ!わあ、嬉しすぎてにやけてきちゃうな」

セツ君には悪いけど、私を好きじゃなくなってもらわないと。

·····なんだろう、この感じ。

胸が痛い。

セツ君が私を好きになるのを諦めたら、ちょっと寂しい。

いやいやそれって、彼を意識しすぎてるからだよね。

気にしてるのは相手を好きだからじゃなくて、向こうが私を好きだから意識せざるを得なかったってだけ。

そう、私がセツ君を好きだからという訳じゃない。

·····好きじゃないんだ。そう、好きなはずない。

仲のいい同級生だとしても、セツ君は極道の若頭。

私は、やっぱりデートに行けないと言いかけようとした。

でもその言葉は彼を傷つけてしまう。

だからーー

きゅっと口を軽くむすんで、セツ君の笑顔から目を逸らすしかなかった。
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 極めて甘い愛〜若頭を拾ったら溺愛されて困ってます〜   ただのデートじゃない 4

    席がガラガラで座って、流れる景色をじっと見ていたら、ふと、元彼を思い出した。千春君ならきっと、私を元気にしてくれる。千春君は今どうしてるんだろう。 やっぱり私はセツ君を好きになれない。若頭だからとか、感覚が合わないとか色々あるけど、完全に嫌いな訳では無い。だって悪い人じゃないから、極道の若頭ではあるけど優しいし。でも私は千春君をまだ、忘れられない。千春君の前なら、混乱せずにいつもの自分らしくいられるのにな。⋯⋯久々に話したくなったかも。メッセージアプリに『会いたい』と千春君に送った。ためらいながらどうにか言葉を繋いだ。正直メッセージを送るのを止めようとしたけど今、たまらなく千春君に話を聞いてほしい。でも迷惑かな。ちょっとドキドキする。思いきって送ったら既読が早くついた。いつも千春君って既読付くのが早いんだよね。『ん?どうしたの』ん?どうしたのは千春君の口癖。懐かしいなと少し笑ってしまった。別れてからずいぶん経つし、久々にメッセージ送ったから、返事来ないかもなんて思ってたから嬉しい。 『ちょっと私の話聞いてほしいから会いたい』『分かった、ちょうど暇だったから良かった。どこ集合にする?』『私今、どこにも行きたくないから私の家じゃだめかな?今、色々あって電車で帰るところだけど、後2駅で着く』『いいよ。まだ話聞いてないけど元気出しな。ちょっと準備あるから1時間半後でいいか?』うん、いいよ。ありがとうと返信。元気出しなのメッセージが千春君らしくて安心して、深いため息がでた。電車の揺れさえも心地よく感じて、セツ君と一緒だった時のもやもやが少しづつ消えていく。肩の力も抜けてきて胸の重みが楽になって、窓からの景色もトーンも柔らかく明るい。涙も止まり、心がふわりと穏やかになった。

  • 極めて甘い愛〜若頭を拾ったら溺愛されて困ってます〜   ただのデートじゃない 3

    セツ君の所に戻ると、私の異変にすぐに気づいて心配してくれた。私はさっきの女の子の話をすべきか迷ったけど、セツ君に迷惑がかかるかもしれないから黙っておいた。さっきの女の子は、私の身元なんて知らないはずだし、本当に何かしてくるわけじゃない、大丈夫なはずだよ⋯⋯ね。セツ君はデートを切り上げて帰ろうかと言ってくれた。確かに気分の調子が悪いけど、せっかく誘ってくれたのに申し訳ないや。でも、もう帰りたくなってきた。セツ君にはっきり言わなきゃ。私なんか好きにならないでって。「花ちゃん⋯⋯何か嫌だった?」「何か嫌だったというか、分かったんだ。やっぱりセツ君に私は相応しくない」「相応しくないなんて、僕達は同級生なんだから⋯⋯」「セツ君には私の感じてる気持ちは分からないよ。だってセツ君は昔とはもう違うし、プレゼントもデートの場所も庶民の私には全然合ってないよ。私にはハードル高すぎて、正直辛い。私なんかもう好きにならないで、お願いだから」「そう⋯⋯だったんだ。僕、全然気づかなくてごめんね」その傷ついた顔が見たくないからずっと我慢してたけど、もう駄目。「もう、私とは関わらないで。セツ君の気持ちが重くて、心が追いつかない」本当にセツ君は何もかも変わってしまった。変わらない私を置いていくんだ。私が帰ろうとすると、心配だから送っていくと言ってきかなかった。でも、私はひとりで帰りたいとセツ君に強く言い返した。ちょっと遠いけど駅まで歩いた。電車に乗って帰る40分間、私はぼろぼろとみっともなく泣いた。

  • 極めて甘い愛〜若頭を拾ったら溺愛されて困ってます〜   ただのデートじゃない 2

    好きなものを選んで良いとセツ君は言うけど、服やジュエリーがどれも私にはレベルが違いすぎる。 大人可愛いをコンセプトにしてるカレイドリリーは、ファッション雑誌で見たことがあった。でも私には手の届かない値段ばかり。それにブランドなんて今まで買ったことないから、どうやっても選べずにいた。·····ああ、どうしたらいいの。ただ眺めるしか出来ない私にセツ君が気にかけてくれた。「もしかして欲しいのがないかな」「う·····ん。ごめんね。私にはブランドものはちょっと」「そっか。僕の方こそごめんね。気がつかなくて。花ちゃんならカレイドリリーが似合うかなって思ったんだけど」そういや、セツ君がプレゼントしてくれたのもカレイドリリーだったっけ。紙袋や箱に綺麗なロゴが入ってたから。セツ君の贈り物は気軽に身につけられるものじゃないから、ほとんどが新品のままとっておいてある。セツ君がくれたもので唯一付けてるのはダイヤモンドのネックレスだけ。身に付けるのを止めようにも、贈り物なに1つ使わないままなのも失礼かなと思ったから。今思った。1番高いものばかり選んでセツ君をガッカリさせれば良かったかも。いや、よく考えたらセツ君ならみんな買ってくれそう。お店のきらびやかさ気分が落ち着かなくなってきた。数分でもいいから1人になりたいかも。「セツ君。ちょっとお手洗い行ってきていい?」「うん、行ってらっしゃい」私はなんだか逃げるみたいにその場を離れた。お手洗いに向かう途中、人とぶつかってしまった。「あっ、すみません。ぶつかって·····」「痛いじゃないの。よそ見するんじゃないわよ」「ごめんなさい」「ふんっ、服装からして庶民のくせに。どうせ買わない冷やかしでしょ。邪魔邪魔」ぶつかってしまった相手を見ると可愛いらしい女の子だった。パッと見中学生にも見えなくもないくらい。私より身長が小さくて、茶髪のゆるふわに巻いた肩くらいの髪。猫みたいに目がぱっちりしていた。香水だろうか。甘くてとろけそうな香りがした。「あんた、雪那と一緒みたいだけど、雪那の何なの。まさか彼女じゃないわよね」女の子は不機嫌そうな言い方だった。なんでセツ君を知っているのか疑問だけど、もしかして知り合いなのかな。「いえ、私はセツ君の同級生で」「ただの同級生のくせに調子乗らないでくれる?雪

  • 極めて甘い愛〜若頭を拾ったら溺愛されて困ってます〜   ただのデートじゃない 1

    セツ君とデートをする私は頭を悩ませていた。身支度をしながらずっと考えていたけど。·····セツ君に幻滅されるには何をどうしたらいいの!?好きにさせたままじゃいけないんだから。頑張って嫌われなきゃなのに。そうじゃないと私もセツ君を好きになってしまう。何も打つ手がないまま支度を終え、セツ君の部下が運転する車に乗った。車のドアを部下の方が開けてくれたけど、スキンヘッドで身体の大きい怖そうな人だった。驚いた私は失礼しますと小声になりながらも席に座る。隣にはもちろんセツ君が座ってる。いい加減この近すぎる距離感に慣れなきゃなのに、やっぱりほんの少しも落ち着かない。 セツ君が運転手に行き先を告げた。場所を聞いた私はえ!?と声を上げてしまった。だってカレイドリリーって言ったよね? 高級ブティック店じゃないの!セツ君が嫌だった?と聞いてきたので、そうじゃないけど、高いお店だよねと控えめに告げた。だけど「値段の心配なんてしなくて大丈夫だよ。僕がなーんでも買ってあげるからね」と私を甘やかす。 うーん、デートに行くような場所なのかな。もう、最初から不安でいっぱいになってきた。 カレイドリリーに着くまでセツ君は部下で運転手のカネさんの話をしてくれた。苗字は金子さんでセツ君が小さい頃から付き人として居たらしく身体が大きいわりに臆病な性格で、犬に吠えられるのが苦手らしい。セツ君の話が面白くてつい笑ってしまったけど、失礼だったかなとごめんなさいと言いかけた私に、「こうみえて犬苦手なんすよ。小さい頃大型犬に追いかけまわされたのトラウマで·····今の笑うところっす」と笑っていた。人って見かけによらないんだなと、おかげで少し緊張が和らいだ。カネさんのお子さんの話の途中でカレイドリリーに着いた。 お店の前に着いて下ろしてもらった。セツ君は何の遠慮もなく高そうでおしゃれな服がディスプレイしてあるお店に私を連れて行く。出かけるにはお店が豪華すぎて、なんだかク目の前がクラクラしてきた。私は庶民派だから、ブティックとか行かないし。

  • 極めて甘い愛〜若頭を拾ったら溺愛されて困ってます〜   意識しないわけない 10

    「1回くらいならセツ君とデートしてみてもいい、かも」 かも、と言葉を濁してる自分が優柔不断な気がしないでもない。 ずるいよね、私って。 そんな風に思ってる私なんてお構い無しにセツ君は大喜び。曇りのない、まっさらな笑顔はただ仲良くしていた子どもの頃みたいに、なんの隔たりもない。その表情を見ているとデートの誘いを、前向きに行きたいと答えられなかった私って可愛くないなって、自己嫌悪。 「本当!?ありがとう!花ちゃんを楽しませるからね!任せてよ!わあ、嬉しすぎてにやけてきちゃうな」 セツ君には悪いけど、私を好きじゃなくなってもらわないと。 ·····なんだろう、この感じ。胸が痛い。セツ君が私を好きになるのを諦めたら、ちょっと寂しい。いやいやそれって、彼を意識しすぎてるからだよね。 気にしてるのは相手を好きだからじゃなくて、向こうが私を好きだから意識せざるを得なかったってだけ。そう、私がセツ君を好きだからという訳じゃない。 ·····好きじゃないんだ。そう、好きなはずない。仲のいい同級生だとしても、セツ君は極道の若頭。 私は、やっぱりデートに行けないと言いかけようとした。でもその言葉は彼を傷つけてしまう。だからーーきゅっと口を軽くむすんで、セツ君の笑顔から目を逸らすしかなかった。

  • 極めて甘い愛〜若頭を拾ったら溺愛されて困ってます〜   意識しないわけない 9

    「無理なくっていわれてもな·····」「そんなに難しく考えないで。僕は若頭である前から花ちゃんの同級生だよ」「それはそうだけど·····」「うーん。そんなに不安なら、そうだな·····いっそ僕と、どこか出かけてみる?」「えっ、デ、デートするの」私と·····セツ君が?そんなことして大丈夫かな? 「うん。デートしよっか。同級生の僕とね」「い、いきなりだね」「いや、ずっと前から誘うつもりだったんだよ。でもタイミング的にどうしようかなって思ってたんだ」「でもほら、危ない人たちに囲まれて襲われるとか、絶対にない?」「ん?そんなん無いから大丈夫だよ。もし万が一何かあろうものなら、僕がその危険を全て消していくから」「そんなこと言われても、やっぱり怖いよ」セツ君はふっと笑った。まるで本当に大丈夫みたいに。「本当に、なんにも変なこと起きないから安心して。大丈夫じゃなかったら、あの日に傘を返しに来たりしない。」その言葉、信じていい?デートしてみる、のか。うーん。 ·····正直悩む。デートなんてしたら、セツ君を好きになるしかないじゃない。 でも、セツ君簡単に引いてくれなさそうだし。 決めかねてる私にセツ君が優しく言葉をかけてくれた。「デートが難しいなら一緒にお出かけってことでもいいよ」えっと、一緒にお出かけするのを一般的にデートと言うのでは?「一緒に出かけるのをデートって言うんだよセツ君。言い方変えただけじゃん」「ふふっ。そうだね」セツ君ったらやけに楽しそう。そんな姿を見てるともう、逃げられないような気がしてならない。そうだ。デートでセツ君をガッカリさせたら、諦めてくれるかも·····?

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status