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53.龍之介の部屋で過ごす最後の夜

Author: 桜立風
last update publish date: 2026-04-11 11:26:03

「……何もかもを、捨てられたらいいな」

リビングを掃除していた桜を自分の部屋に入れ、改めて抱きしめる龍之介。

「でも……皆さん困りますよね。龍之介さんがいなくなったら」

「皆さん……か、」

ふふ…っと笑う龍之介に、少しだけ抗議したくなって見上げれば、優しい視線にとらわれて、動けなくなる。

「2年で、何とかする」

「……2年」

「志田川組の強化と独立をさせて、麗香と離婚する。……西龍会若頭は、蔵之介に譲る」

こういった組織を抜けるのは、決して容易いことではないと聞いたことがある。それは……映画やドラマだけの話なのだろうか。

「待てるか?」

甘い視線に、わずかな不安が宿るのがわかった。……強さと美しさを兼ね備えた龍之介のような人が、自分をそんな目で見るなんて、改めて信じられないと思う。

「待ってます。……ずっと、龍之介さんだけを思って生きます」

真剣に伝えたのに、フッと軽く吹き出すなんて……ちょっと意地悪が過ぎるような気がした。

「笑ってごめん。可愛くてな」

頬に指先を這わせ、優しくなでる龍之介。

「俺は……お前しか抱かないから」

「でも……」

「お前以外無理だろうし、その気になれるはず
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yuu
このまま時が止まったらいいのに… 二人に幸せが訪れるその時まで頑張って。
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