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79.苦しみ……そして

مؤلف: 桜立風
last update تاريخ النشر: 2026-05-10 11:21:18

「……ちょうどいいや、邪魔すんなって、言ってくる」

携帯を掲げ、龍之介は雨の中へと走り出した。

……あの時どうして、行かないで、と言わなかったんだろう。

言ったら、何かが変わったかもしれない。携帯には出ないでと言っていれば、龍之介はきっとそうしてくれた。

そしたら、最果ての地へ……連れて行ってくれたのに。

けれど龍之介は土砂降りの雨の中、行ってしまった。

……私の見えないところへ。

……………

  …………………

「いらっしゃいませ……あ、真理さん!」

「こんにちは!どうしてるかな……と思って寄ってみたの」

「おかげさまで……元気にしてますよ?」

季節は移ろい、また、桜の季節になった。

東京は今年、例年にないほど早く満開になったと、連日ニュースが伝えている。

ここ、室井酒店からも、桜の枝が風に揺れているのが、桜の目に優しく映っていた。

「あ…!真理さんいらっしゃい!」

奥から美紀と昭仁が顔を出した。

「こんにちは!また美味しいお酒が飲みたくなって。春の新作、出てます?」

「あぁ…それならこれオススメ!東京の酒蔵がいいお酒作ったんですよ……」

昭仁に連れられ、真理が行ってしまうと、美紀
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何があったんだろう…
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  • 極道と、咲き乱れる桜の恋   79.苦しみ……そして

    「……ちょうどいいや、邪魔すんなって、言ってくる」携帯を掲げ、龍之介は雨の中へと走り出した。……あの時どうして、行かないで、と言わなかったんだろう。言ったら、何かが変わったかもしれない。携帯には出ないでと言っていれば、龍之介はきっとそうしてくれた。そしたら、最果ての地へ……連れて行ってくれたのに。けれど龍之介は土砂降りの雨の中、行ってしまった。……私の見えないところへ。……………  …………………「いらっしゃいませ……あ、真理さん!」「こんにちは!どうしてるかな……と思って寄ってみたの」「おかげさまで……元気にしてますよ?」季節は移ろい、また、桜の季節になった。東京は今年、例年にないほど早く満開になったと、連日ニュースが伝えている。ここ、室井酒店からも、桜の枝が風に揺れているのが、桜の目に優しく映っていた。「あ…!真理さんいらっしゃい!」奥から美紀と昭仁が顔を出した。「こんにちは!また美味しいお酒が飲みたくなって。春の新作、出てます?」「あぁ…それならこれオススメ!東京の酒蔵がいいお酒作ったんですよ……」昭仁に連れられ、真理が行ってしまうと、美紀が少し心配そうな視線をよこしたので、わざとおどけた笑顔を作る。「……もう大丈夫だよ?」「そう?それならいいけど……ねぇ、本当にここに引っ越してくる気ないの?」「一番大変なときは過ぎたから大丈夫だって!」これから私は、1人でやっていかなくてはいけない。だからなるべく、自分を甘やかしたくなかった。「ここで暮らせば早くお金も貯まるのに!」口を尖らす美紀の唇をつまんでやろうと手を伸ばす。「確かにね……でも新しい仕事を任せてもらったから、収入爆上がりしたよ?ほんと、ありがたい」「……家でもできる仕事だしね?本当に良かったね!」お酒を選んでいた真理が戻ってきて話に加わった。昭仁が持つカゴに、3本のお酒が入っている。「このラベルも、桜ちゃんの作品でしょ?」「作品……ってほどじゃ……」「いや、立派な作品だよ。紹介した酒蔵さん、桜ちゃんデザインのラベルに変えた途端、売り上げ倍増したってどこも喜んでるんだから!」デザインの基礎を学んでみないかと提案してくれたのは昭仁だった。1日中ぼんやりしている私のところへ、美紀と一緒に毎日来てくれた日々。斎藤さんと真理さんも、日を置かずに

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    「龍之介さん、携帯が……」 「あぁ、あとで見るからいい」 チェックアウトを済ませ、車に乗り込む龍之介に尋ねた。 「これから、どこに?」 「羽田だ。できるだけ早く出発できる便を予約する」 「……待ってください」 ハンドルにかけた手に、桜はとっさに自分の手を重ねた。 「なんだよ、ついていくのが嫌になったとか、言わねぇだろうな?」 「そんなんじゃないです。……でも、斎藤さんにお世話してもらったアパート、そのままだし……」 「連絡して退去手続きをしてもらう」 「室井酒店でもう一度雇ってもらうことが決まってて……」 「取り消せばいい」 「美紀ちゃんが、オーナーと結婚して、そのお祝いをする約束が……」 龍之介はイラつきを隠さず、バンッとハンドルを叩く。 「落ち着いたら遊びに来てもらったらいいんじゃねぇの?……それより、2人でいることが大事だろ。なるべく、遠く離れて、見つからねぇとこで、2人で……」 やはり、龍之介は無理をしている。 本当は、さっきから何度か震えている携帯を気にしているのだろう。 まるで、メッセージを確認したら魔法が解けてしまうとでも思っているかのようだ。 「龍之介さん、正直に、教えてください。蔵之介さんに協力してもらって、私のところへ来てくれたんですか?」 フロントガラスを見つめたまま、何も言わない龍之介。 桜はその手を取り、撫でながら続けた。 「麗香さんも、最後に私と会うことをを許してくれたんですか?……それとも、囲うことを、許してくれた?」 「あいつはそんな女じゃねぇよ」 撫でられていた手を、桜の頭の上に置き、視線をこちらに向ける。 「屋敷に戻れば、もうお前には会わせないだろう。それを蔵之介が黙らせたんだ。自分が代わりに一緒にいてやるから、1度だけ行かせてやれって……」 その複雑な表情で想像できた。 志田川組との協力関係を目に見える形で表したのが、龍之介と麗香の結婚だったわけだが……それは契約結婚、というには重すぎる誓いだったのかもしれない。……2つの組織の行く末、そして存続にも関わる組と組の結びつきは、 とても計画的な離婚など実行できないと悟ったのだろう。 だから龍之介は今、最果ての地に行こうとしている。……私を連れて、誰にも見つからないように、

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  • 極道と、咲き乱れる桜の恋   74.もう一度だけ……

    「お久しぶりです。桜さん」龍之介と麗香の結婚式が数日後に迫った日、桜は蔵之介に連れ出され、近所のカフェに出向いた。そこで待っていたのは、いつか支援を申し出てくれた松白屋の専務、斎藤だ。そして……「お久しぶりです。……いつかはごめんなさいね、追い出すような真似をして」斎藤の隣には、真理がいた。あの日の華やかなワンピースとは違い、黒のかっちりとしたスーツ、そして長い髪はきちんとまとめられている。「私の真意は聞いてないと思うから説明させてください。あの日西龍会の屋敷に行ったのは、あなたのことと、正直に言えば百合のこともあったからなんです」4人で座った広々としたテーブルの向こうは全面ガラス張りの窓で、庭に咲く色とりどりの花や緑が風に揺れていた。「桜さんの存在を斎藤さんに聞いて、とっさに、また龍之介は女性を不幸にすると思った。……だってそうでしょ?婚約者がいるのに桜さんを屋敷に呼んで手元に住まわせるなんて……」「はたから見れば、そうかも知れません。でも私は、龍之介さんに助けられたんです。傷つけられるどころか、私のために怪我までして……だから、とても感謝しています」「確かに……あなたをあっさり追い出すのを見て、本当に守りたいと思ってるってわかったわ。だからこそ、支援したいと思います。彼から離れて、1人で生きていく決意をしたあなたを……」頭を下げる桜の横で、蔵之介も頭を下げてくれた。……いつの間にか、兄のような存在になって、そばにいてくれる蔵之介。そんな彼とも、別れは近い。「俺には、たまに酒でも奢らせろよ?」こちらの考えが伝わったかのような申し出に、桜は笑ってうなずく。「はい…!酒じゃなくて、ご飯でお願いします」そこは否定しなくていいだろう。蔵之介さんにも、たくさん助けてもらったのだから。「新しい住まいは、桜さんの希望で更川市に準備しました」そこは室井酒店に近い場所だった。美紀に連絡をして、嬉しい報告を聞いて……そこを希望したのだ。「ありがとうございます。入居費用は……」「それは支援させていただくのでご心配いりません。申請すれば自治体が出してくれるお金もありますから。その辺については引っ越されてからご説明しますね」斎藤に、後は引っ越すだけだと言われ、桜はうなずいた。「あの……ひとつだけ、よろしいでしょうか」桜には決めていたこと

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