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第44話:名義の壁

Auteur: fuu
last update Date de publication: 2026-06-29 20:00:49

 住所はわかった。名義の名前も、一つ出てきた。けれど、その名前こそが、壁だった。

 席の引き出しを開け、住居関連らしい支出を並べる。

 家賃。光熱。管理費。確かに一つの住所へ、毎月きれいに流れている。

 けれど契約名義の欄にあったのは、三崎の名でも、女の名でもない。聞いたこともない、一つの名前だった。

 調べても、その名前の実体は出てこない。電話も、勤め先も、顔も。ただ、契約書の上にだけ、その名前は存在していた。

 借りた名前だ。

 三崎が処理に慣れた男なら、本人名義でやっているはずがない。自分の名前は、決して固定しない。それは宛名の揺れで、嫌というほど見てきた。間に、誰かの名前を一枚、挟んでいる。

 私がつかんだのは、その挟まれた一枚。実体ではなく、影の名前だった。

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  • 横領犯にされた経理女は、若頭の金庫を握って元社長を潰す   第5話:落ちた女の履歴書

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  • 横領犯にされた経理女は、若頭の金庫を握って元社長を潰す   第4話:返したいのはお金じゃない

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     出勤して五分で、私は横領犯にされた。 朝一番、会議室に呼ばれた。扉を開けた瞬間に分かった。三崎がいる。長尾がいる。畑中がいる。総務もいる。空気が、もう決まっている。 机の上に、数枚の書類。 振込一覧。 請求書のコピー。 ログイン履歴の抜粋。 書類は、私が呼ばれる前にもう揃っていた。 確認なら、私と一緒に集めるはずだ。 先に揃っているということは、結論が先にあったということ。 私は、判決を聞きに来た被告だった。 それも、弁護人のいない被告。「お座りください」長尾が淡々と言った。座らないと足が震える気がした。「一部資金の不適切な処理が確認されまし

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