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第21話

Penulis: 黒い土地
その後、彼はまた一通の遺言状を残した。

その遺言の内容は、数々の事件を扱ってきた弁護士でさえ、背筋が凍りつく思いをした。

彼の望みは――自らの死後、自分の遺体をもプラスティネーション標本として保存すること。

しかも、橙子の標本を強く抱きしめる姿のまま、永遠に固定してほしいというものだった。

【この皮を剥ぎ取り、彼女と骨肉を重ね合わせ、もう何ものにも隔てられることのないように】と、彼は遺言状にそう書き残していた。

生きていたとき、彼女に数えきれないほどの苦しみと屈辱を与えてしまった。

死後こそ、一切の隔てなく永遠に彼女を抱きしめ、寄り添っていたい。

彼はさらに、これから百年間分に相当する、この個人博物館の維持運営費を前払いしていた。彼は、自分と彼女のこの墓が永遠に存在し続けることを確保しようとしていた。

二人が永遠に一緒にいられるよう、彼は最後の準備を整えていた。

残されたのは、死の訪れを静かに待つことだけだ。

時は流れる。

真司はあの孤独な別荘で、花嫁を守りながら、幾つもの春と秋を過ごしていった。

彼の体は日に日に弱っていった。

そしてついに、小雨の降るある朝、彼は穏やかに、永遠の眠りについた。

彼は冷たいガラスケースのそばに横たわり、息を引き取った。

片方の手はそっとガラスケースに当てていて、まるで最後にもう一度、愛する人の頬を撫でようとしているかのようだ。

その顔には、解放されたような、満ち足りた微笑みが浮かんでいた。

プラスティネーション機関のスタッフたちは、遺言状の指示に従い、時間通りに姿を現した。

彼らは真司の遺体も冷たい地下作業室へ運び戻し、技術によって二人を抱き合わせる姿勢へと固定する、長く緻密な作業に着手した。

一年後。

かつての藤原家の山腹の別荘は、外部に公開された私設博物館へと改装されていた。

館内には、たったひとつの展示室しかない。

その中央にあるのも、ひとつの展示物だけだ。

それは巨大で特注のガラスケース。

その中には、皮膚を剥がれた二体のプラスティネーション標本が、抱き合う姿のまま、永遠に固定されている。

男性の標本は、背後から女性の標本をしっかりと抱きしめ、その頭を深く彼女の首筋に埋めている。まるで最後の慰めを求めるように。

一方、女性の標本は振り返るような姿勢のままで、彼の抱擁に静かに
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  • 死んでも別れない   第21話

    その後、彼はまた一通の遺言状を残した。その遺言の内容は、数々の事件を扱ってきた弁護士でさえ、背筋が凍りつく思いをした。彼の望みは――自らの死後、自分の遺体をもプラスティネーション標本として保存すること。しかも、橙子の標本を強く抱きしめる姿のまま、永遠に固定してほしいというものだった。【この皮を剥ぎ取り、彼女と骨肉を重ね合わせ、もう何ものにも隔てられることのないように】と、彼は遺言状にそう書き残していた。生きていたとき、彼女に数えきれないほどの苦しみと屈辱を与えてしまった。死後こそ、一切の隔てなく永遠に彼女を抱きしめ、寄り添っていたい。彼はさらに、これから百年間分に相当する、この個人博物館の維持運営費を前払いしていた。彼は、自分と彼女のこの墓が永遠に存在し続けることを確保しようとしていた。二人が永遠に一緒にいられるよう、彼は最後の準備を整えていた。残されたのは、死の訪れを静かに待つことだけだ。時は流れる。真司はあの孤独な別荘で、花嫁を守りながら、幾つもの春と秋を過ごしていった。彼の体は日に日に弱っていった。そしてついに、小雨の降るある朝、彼は穏やかに、永遠の眠りについた。彼は冷たいガラスケースのそばに横たわり、息を引き取った。片方の手はそっとガラスケースに当てていて、まるで最後にもう一度、愛する人の頬を撫でようとしているかのようだ。その顔には、解放されたような、満ち足りた微笑みが浮かんでいた。プラスティネーション機関のスタッフたちは、遺言状の指示に従い、時間通りに姿を現した。彼らは真司の遺体も冷たい地下作業室へ運び戻し、技術によって二人を抱き合わせる姿勢へと固定する、長く緻密な作業に着手した。一年後。かつての藤原家の山腹の別荘は、外部に公開された私設博物館へと改装されていた。館内には、たったひとつの展示室しかない。その中央にあるのも、ひとつの展示物だけだ。それは巨大で特注のガラスケース。その中には、皮膚を剥がれた二体のプラスティネーション標本が、抱き合う姿のまま、永遠に固定されている。男性の標本は、背後から女性の標本をしっかりと抱きしめ、その頭を深く彼女の首筋に埋めている。まるで最後の慰めを求めるように。一方、女性の標本は振り返るような姿勢のままで、彼の抱擁に静かに

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