Masukハルキのその真剣な眼差しに捉えられて、目が離せなくなった。「朱里が後悔してるとの同じように、アイツだって……きっと、後悔してると思うけどな」「え……?」「実はアイツ……この間、俺たちのところに来たんだよ」真樹が……ハルキたちのところに? どうして……。「朱里のこと、心配してたみたいだった」「心配……?」「朱里のこと守って欲しいって、俺アイツに言われたんだけど」真樹が……ハルキにそんなことを……?「もちろん、断ったけどな」「えっ……?」断った……? どうして?「好きな女のこと守りたいなら、てめぇで守りやがれ!って怒鳴りつけてやった」「ハルキ……」ハルキは私に、「俺だって……本当は、お前のこと守りたいよ。俺が守ってやりたいって、そう思うよ」と子供たちの顔を見ている。「でもお前のことを幸せに出来る相手なんてさ……一人しかいねぇだろうが」ハルキのその悔しそうな顔を見たのは、初めてかもしれない。「ハルキ……っ」「お前はアイツのこと好きなのに、なに意地張ってんだよ。 アイツのこと好きなら、堂々としていればいいだろ」ハルキがこんなに真剣に私のことを考えてくれるなんて、思ってなかった。「好きなのに自分から距離をおこうとするなんて……お前はやっぱりバカだな。 泣くくらい愛してるんだから、離れられるわけがねぇだろうよ」ハルキにそう言われて、私はなにも言い返せなかった。 本当にその通りだと、思ったからだ。「朱里、いい加減くだらないプライドなんて捨てろよ」ハルキは、私にそう告げるのだった。「お前のことを守るべき相手は……俺じゃない」「っ……ハルキ……」悔しいけど、私の好きな人は……愛おしいと思う人は、本当に一人だけだ。「お前が幸せになれるのは……アイツしかいねぇだろ」「っ……」「いい加減、認めろよ朱里。 アイツのことどうしょうもないくらい好きなんだから、そんなプライド早く捨てろ」ハルキのその力強い言葉に、私は「うん……ごめんね、ハルキ……」と謝った。「ったく、お前は……世話の焼ける女だな」「うるさいよ……」そんな私の頭に手を乗せると、ハルキは優しく撫でて「お前が選んだ道なら、俺は応援するよ。 だから、行ってこいよ」と背中を押してくれた。「でも、憐と爽が……」憐の爽を置いていくことなんて、出来ないと思ったけど、ハルキが「
「朱里……それって……?」「勘違いしないで。……別に、あの人のことを許してはいない。 ただ、この子たちの父親であることには違いないから。この子たちの幸せを願うなら……きっと変わると思ってる。 私たちを平等に愛してくれるなら、きっと何かが変わる気がするのよ」真樹の気持ちなんて、わからない。 でも……信じることは出来るから。「朱里は……強いな」「強くなんて……ない。 だから私はこれから一緒に強くなっていくから、この子たちとね」千歳は私に「頑張れ、朱里」とエールをくれた。✱ ✱ ✱子供が産まれてから、早四ヶ月が過ぎた。「朱里、荷物持つよ」 「ありがとう、ハルキ」「おう」 子供が産まれてから、ハルキが時々こうやって手伝いに来てくれていた。ハルキが手伝ってくれるおかげで、私の気持ちは時々、晴れやかに感じる。「お、元気だな」「うん。二人とも、すごく元気なの」産まれた子供たちの名前は、千歳や真樹が考えてくれた名前と、自分の候補からいくつか上げて決めた。「で、どっちがどっちだ?」「この子が憐(れん)で、この子が爽(さわ)だよ」「憐と爽か。似てるからわからなくなるな」「だって双子だし」二人の子供を抱えてこれから生きていくのは、大変だと思う。一人じゃ多分、無理だと思う。でも私は……それを絶対にやり遂げたい。 愛した人の子供だからこそ、絶対に幸せにしたいと思う。気になっていた子供たち二人の血液型も後に判明したけど、やはり真樹と同じ血液型だった。 あの子たちの父親は、真樹で間違いない。「ねえ、ハルキ……」「ん?」 私はハルキに「ちょっと弱音を、吐いてもいいかな……?」と問いかける。 「ちょっとだけ……弱音を吐きたいの」そんな私に、ハルキは「俺で良ければ、話聞くよ」と言ってくれる。「……ありがとう」弱音を吐くことは、決して好きではない。 だけど、弱音を吐かないと自分が壊れてしまいそうな気がしてしまって……。「私……本当は、アイツと一緒にいたいんだ」「うん」「本当に、アイツことを愛してるの……。だから、本当は、一緒にいたい。ずっと一緒に……いたい」そんな私の弱音を、ハルキは優しく受け止めてくれる。「そっか。そんなに好きなのか、アイツのこと」「……うん。どうしようないくらい、好きなの」やっぱり、とうしたって忘れられ
無事に出産を終えてから私が退院した日、千歳が私の前に現れた。「え……千歳?」「退院おめでとう、朱里」千歳は出産の日、学校の行事で来れなかったそうだ。 予定日よりも早まってしまったため、立ち会いが出来なかったことを後悔しているらしい。「ありがとう」「お。朱里に似て、かわいいな」「うん。双子だから、二倍かわいいよ」千歳は「カバン、持つよ」と私のカバンを持ってくれる。「ありがとう」「兄貴、嬉しかったってさ」「え?」「朱里の子供が無事に産まれてきたことが、本当に嬉しかったって言ってた」確かにこの子たちの顔を見た時、真樹は本当に嬉しそうだった。 この子たちの未来が明るくて楽しくなることを、私は信じている。「この子たちの父親……千歳じゃないかも」「……そうか」「ごめんね」なんのごめんねなのか、そう聞かれると難しいけど、ごめんねって思ってしまった。「いいよ、別に。……朱里の子供が元気なら、俺はそれでいいし」千歳……あなたはやはり、優しいのね。こんな時なのに、優しい。「私……真樹とは一緒になるつもりないの」「え……?」病院の出口を出て少しした所で、私は千歳にそう話した。「結婚はしないし、一緒にもならない。今後も」「……それは、兄貴が敵、だからか?」千歳はきっと、悟っているのだろう。 私が、真樹に対してどう思っているのか。「そうね。……その通りよ」だけど千歳は、それを聞いても冷静なままでいる。「でも……俺とも一緒にはならないんだろ?」千歳からそう聞かれた私は、「そうよ。あなたとも、一緒にはならない」と答えた。「朱里が一人で生きていくことを決めたなら、俺はそれを応援したいと思ってる。 でも……一人で苦しまなくていい。辛い時、泣きたい時は、いつでも俺たちを呼べよ。すぐに飛んでいくからさ」千歳のその優しい言葉は、もう充分聞いている。 だからこそ、その優しさが自然と出るものなんだと気付いた。「……ありがとう、千歳」「朱里……兄貴も、朱里のこと想ってるよ」「え……?」千歳は私と歩幅を合わせながら、ゆっくり歩く。「だからこそ、兄貴のこと……もっと頼ってやってほしい」そんな千歳の優しさに、私はもっと感謝すべきだったのかもしれない。「あなたは……どうして私のことを、そんなに心配するの?」私が千歳にそう聞くと、千歳は表情を変
「手も足も、小さいね」「小さいな。……赤ちゃんだし、当たり前か」産まれきて我が子たちは、一卵性双生児だった。 二人とも全く同じ顔をしていて、本当に見分けが付かない。 本当にどっちがどっちなのか、私にもわからないくらいだ。「あなたに……なんとなく、似てる気がする」「そうか?」「うん……特に鼻とか、似てるかも」この子たちの顔を見て確信した。……この子たちの父親は、やはり真樹だと。鼻や口が、真樹にそっくりだ。 真樹と千歳は兄弟だけど、このこの子たちは千歳に似てる感じではない。もちろん血液型にもよるけど、多分真樹が父親で間違いない気がする。「そっか。 じゃあこの子たちの父親は……」「あなたかも、しれない。……血液型次第だけど」「まあ、そうだな」よりにもよって、こんなに憎いはずの男の子供を、私は産んでしまった。でも産んだことを後悔していない。 父親が誰であろうと、私の子供であることに変わりはないから。子供の母親は、一人だけしかいない。 この私だけだから。「でも、将来はあなたに似て……きっと美形になるわね」「だといいけどな」「なるわよ、きっと。……あなたは、私が愛するくらい、イイ男だもの」私にはかけがえのない宝物が二人も増えた。大切に大切に、育てていきたい。この子たちには、幸せに生きてほしいから。だから私は、この子たちに全力でたくさんの愛を捧げたい。「これからは……この子たちと一緒に、生きていくわ。 あなたのことを愛してるけど……あなたは、私の敵だから」私がずっとずっと、復讐したい男。 なのに、深く愛しすぎてしまったーーー。「わかってる。 俺にとって君は、復讐の相手だろ?」「そうよ。……だから私、あなたと一緒にはならない」真樹と一緒に生きていけたら、本当はすごくいいのかもしれない。 それがこの子たちにとっても、一番いいはずなのは分かってる。それでも私は……それを選べない。 私にとって真樹は、復讐の相手で。今でもずっと、殺したい相手だから。「……そうか。君のことをどれだけ想っていても、君の一番にはなれないか」そう言った真樹の表情は、少し悲しそうにも見ええてしまう。「だけど……私はこれからも、あなたを愛すると思うの」「え……?」愛するはずなの。 この気持ちに、ウソは付けない。「だからこそ、一緒にはなれない……わかって
「もうすぐ……会えるからね」「楽しみだな」「……うん」私はこの子たちの母親になる。 父親が誰であろうと、私がこの子たちを守り抜く。「真樹……あなたは、この子たちの父親になる覚悟が……今でもあるの?」真樹の気持ちが知りたい。「その覚悟なら、とっくに出来てる」「……そう」私は……真樹とどうなりたいのだろうか。本当は、殺したいくらい憎いはずなのに……。私はその気持ちが、わからなくなっていた。「……朱里」私の頬に触れる真樹のその手が、妙に温かくて……。「真樹……」その手の温もりが心地良く感じる私は、その真樹の手をつい取ってしまう。「朱里……?」 私はその手を振り払えなくて、そのまま真樹の唇に自分の唇をつい重ねてしまう。「私……あなたのことが好き」「俺も……好きだ。愛してる」私はイケない人間になってしまった。 こんな男を愛してしまうなんて……。こんな冷酷な男を愛してしまうなんて……私はイケない人間になってしまった。こんな憎い男を愛してしまうほど、私は落ちぶれてしまったんだなと、つくづく実感する。こんなはずじゃなかった。……こんなはずじゃ、なかったのに。なんで私は、この男のことを愛してしまったんだろうか。 どうして……。そんな虚しくなる気持ちを抱えてしまうほど、私は弱くなってしまったのだろうか。「朱里……?」「好きだよ……真樹。 大好きだよ……」でもこの気持ちだけは、どうしても止められそうにない。 私の気持ちだけは、もう止まらない。✱ ✱ ✱それから数日が経った頃ーーー。「おめでとうございます、お母さん。 元気な双子の男の子ですよ!」私は、双子の男の子を無事に出産した。 予定日よりも数日早い出産となったが、無事に産まれたことが嬉しかった。思えば、買い物の途中に破水してしまい、急遽病院に運ばれて、そのまま病院で出産することとなった。初めて陣痛は、どうしようもなく痛くて、死にそうだった。「おめでとうございます。 元気な双子の男の子ですよ」「そうですか。……良かった」その隣にいるのは、真樹だ。「お父さんに似て、美形なお子さんですね」「それは嬉しいです」急に出産することになったと伝えたら、真樹はすぐに病院に飛んできた。 一人では不安だろうから、付き添いたいと言ってくれたのは、真樹だった。 真樹は私のそばに
私が紅茶の中の砂糖を混ぜながらそう答えると、真樹は「出産の日……一人なのか?」と質問してくる。「……そうだけど、なんで?」真樹はなぜ、そんなことを聞くのだろうか。 私たちは夫婦ではないのだから、立ち会ってもらうつもりは私にはないのだけど……。「なら、俺たちが……立ち会ってもいいか?」「え……?」今、俺たち……って、言った?「立ち会うって……二人でって、こと?」「ああ。 俺と千歳、二人で立ち会いたい」「……どうして? どうして、そこまで?」私のために、そこまでしてくれる理由がわからない。 私は一人で産む決心をした。なのに、なんで……立ち会いたいだなんて言うのだろうか。「見たいんだ。……子供が産まれる瞬間を、純粋にこの目で見たいと思ったんだ」命が尊いからこそ、その瞬間をこの目に焼き付けたいのだと、真樹は私に懇願した。「……立ち会いたいなら、別にいいけど」真樹は「本当か?」と私を見る。「うん……もちろん」真樹は私の前に来ると、私をそっと抱きしめる。「え……? 真樹?」「俺……自分の子供が産まれることって、想像してなかった。でも……今はすごく楽しみなんだ」自分でも信じられない。真樹が……真樹じゃない。 これは私の知っている、真樹じゃない。私の知っている真樹は、冷酷な人なはずだ。 「俺が何を言ってるのかって思うだろうけど……本当に、そうなんだ」「……そっか」真樹は変わったと思う。 あなたはレッド・アイで……最強の殺し屋だと思っていたのに。こんなに優しい人じゃないと、思ってた。「真樹……」「ん……?」私は真樹の手を握りしめ、真樹を見る。「あなたのこと……今でも愛してるのは、変わらないわ」「朱里……?」「だから、あなたに優しくされると……」優しくされると……困るのよ。 そう言いたいのに……なかなか言えない。「優しくされると……何だよ?」真樹は私の顔を覗き込んでくる。「……なんでもない。忘れて」私は真樹から目を逸らし、紅茶を口にする。 そんな私に、真樹は「朱里……」と私の肩に触れる。「あなたの優しさに触れると……私、惨めになるの」「え……?」「あなたは冷酷で、残酷な殺し屋で……。私はあなたが悪くて仕方ないのに……あなたの優しさに触れると、私は惨めに感じるの。 母親になることを決めて、強くなろうと思ったの
それから三ヶ月後が経過した頃ーーー。「朱里、ちょっといいか?」 私はボスに急に呼び出された。「はい」「お前に話しておきたいことがある」話しておきたいこと? なんだろう?「あの、話とは何でしょうか?」ボスの背中にそう問いかけると、ボスは私に「朱里、この男を知っているか?」ととある写真を見せられた。「いえ……。誰ですか?」この男は誰? 見たことがない。「ーーーコイツは、お前の両親を殺した殺し屋だ」「………え?」ボスから出た言葉に、私はフリーズした。「お前の両親を殺したのは、コイツだ」ボスは、私にその男の写真を手渡してきた。「この男が……?」コイツが……。この男が
潮江直弥の父親が、あの春沼だった……? 「……ねえ、どういうこと?」「俺の母親は、春沼の愛人だったんだよ。でも俺が出来た瞬間(とき)から、母親は捨てられる運命だったんだよ」潮江直弥の言葉に、私は衝撃を受けた。「……あなたはどうして、春沼会長が父親だって分かったの?」 「母親の日記が出て来たんだ」「日記?」潮江の話によると、母親は二年前にガンで亡くなったそうだ。そして母親の遺品を整理していたら、その日記が出てきたとのことだ。その日記に、春沼会長の名前が書いてあったことを知った潮江は、春沼にその事実を確かめるために春沼に会いに来たと話していた。「だからあなたは、春沼製薬に……
「……ありがとう」「梓咲、俺がお前を守ってやるよ」何を言ってるんだ、この男は……。守ってやるなんて捨てセリフ吐かれても、全然嬉しくない。「その元カレね……実は、春沼製薬ってところで働いてるの」そして私は、春沼製薬のことについて切り込むことにした。「……え? 春沼製薬?」その一言で、潮江の表情が変わったのが分かった。やっぱり……潮江は春沼製薬と何か関係がある?「うん。 でね、春沼製薬の社長宛に脅迫文が送られてきたらしくて……それで元カレが困ってるみたいでさ」「……そっか。 元カレだから、助けてあげたいって思ってるんだ?」「……でももう別れたし、もう関係ないよね」私のウソの
「おい!やめてくれ!」「やめる訳ないでしょ?バカね」怪しく笑う私に、ターゲットの男はオドオドし始める。「……おい、なんなんだよ! お前は誰なんだよ!!」「ワーワーわめかないでくれる? 誰か来ちゃうでしょ?」一歩一歩近付く私に、ターゲットはついに逃げ出そうと身体を反対方向へと回転させる。「おっと! 逃がさないよ?」「やっと来た。遅いハルキ」「悪い悪い」 そこに仲間の一人、ハルキが合流する。「え、え……ちょっと待ってくれよ! 俺が何したって言うんだ!」「あら?しらばっくれるつもりなの? あなたが何をしたのか、私たちはもう分かってるけど?」そう言った私に、ハルキは「朱里、