LOGIN「……私は、あなたと結婚する気はないわ。なにを言われても……結婚する気はない」「今はまだ結婚するかどうかは、決めなくてもいい。……ただ、君のためじゃなくて、お腹の子のために決めるべきだ」そんな真樹の言うことを、私は聞く気はない。「私……ずっと考えてた。 どうやったら、私は幸せになれるのか。……分からないの、今でも」ただ、私は幸せになるために生きてるわけじゃなかった。 幸せなんて、求めてなかった。「……真樹、私とあなたは敵よ。 だから、私たちは一緒にいるべきじゃない。ましてや、結婚なんて……考えるべきじゃない」そんなの……絶対に無理だと思う。 「俺は……お前のためなら何でもやる覚悟だ。 お前と子供のためなら、俺はなんでもすると誓う」「あなたはレッド・アイでしょ? 私の知っているレッド・アイは、そんな優しい人なんかじゃない。あなたは冷酷で、残酷な人よ。 私は……そんな優しいあなたなんて知らない」真樹と千歳は、まるで正反対。真樹は冷酷な人で、父親は優しい人。 それでも……。「……確かに、俺は冷酷な人間かもしれないな。 殺し屋をやってるんだ。冷酷で当たり前だよ」「私だって冷酷な人間よ。私は千歳みたいに、優しくはない。私の心だって、とっくに腐ってる。……この仕事をしてるんだから、私だって優しくなんてなれない」私には、もはや生きる道が見つからない。「やっぱり俺たちは、似た者同士なんだな」「……そうね。似た者同士ね」だからこそ、私たちは一緒になれない。「私はいつか、あなたに復讐するわ。……必ず」「ああ、その時は……俺を殺せばいい」私ももう、潮時かもしれないわね……。「その時は、覚悟してね」「分かってる」お父さん、お母さん……レッド・アイが今ここにいるの。私の目の前に。復讐したいって思ってたの、ずっと。……なのに、出来ない。それは……私が彼を愛しているからだと思う。「真樹……教えてほしいことがあるの」「ん」「あなたは……どうして今も、ボスを殺さないの?」私はその理由を聞いていない。なぜボスを殺さないのか……。「お前らの前で、殺してやろうと思ったんだ。 お前らの前で、俺はKENGOに復讐してやろうと思って、今まで殺さずにいた」ボスに復讐したい真樹と、真樹に復讐したい私。 私たちは決して交わることはない。「私は……あなたに復
私にそんなことが出来るわけはない。「あなたはボスをずっと恨んできたんでしょ?……それは私も同じよ。私もずっと、あなたのことを恨んでるから」「……なんとなく、出会った時からそうだと思ってたよ。 千歳から君を紹介された時は気付かなかったけど、君の顔を見た時に、似た顔を見たことがあると思った。……君はきっと、俺が殺した二人の娘なんだろうって勘付いたのは、その後だよ」私は真樹のその言葉に、「さすがレッド・アイね。……正解よ」と答えた。「千歳と付き合ってると聞いた時、君はきっと俺に復讐するために近付いたのだと悟ったよ。……千歳がいながら俺にセフレになろうと言ったのも、すべて俺に近付くためだと確信したんだ」「……やっぱりわかってたのね」レッド・アイなら当然、そうだろうと思ってた。 私の勘は、間違ってなかった。「私、あなたに聞きたいことがあるの」「なんだ?」 「どうして私とのセフレ関係を承諾したの? 私を殺すことなんて、あなたには容易に出来たはずじゃない。簡単に殺せたはずよ、私なんて。……なのにどうして、殺さなかったの?」私が真樹にそう聞いた時、真樹は「……君を愛してしまったからだ」と答える。「え……?」「俺も君が俺に復讐しようとしていることは、わかっていた。だが、それにはあえて気が付かないフリをした。……なぜなら俺は、君を心から愛してしまっていたからだ。 君を愛しているからこそ、君を幸せにするために、気が付かないフリをするべきだと悟ったんだ」どうして……。そんなのレッド・アイらしくない。草原真樹、らしくない。 「……私を愛しているから、子供を産んでほしいって言ったの?」「そうだ。俺は君と君の子供を、幸せにするべきだと感じた。 君にもし拒否されようと、俺は無理矢理にでも君のそばにいると言ったと思う。……これは本心だ。ウソなんかじゃない」どうして……。どうして、私を困らせるようなことを言うの?私にそんなことを言う必要なんてないのに。「……私は、決して幸せになんてなれない。 ううん、幸せになるべきじゃない。 私はこの子を守ることが、きっと出来ない気がするの。私は強くなんてないし、幸せになることを望まれていない」「そんなことない。君は幸せになるべきだ。 大切なものが出来ただろ?」「……大切なもの」真樹は私の手をぎゅっと握りしめると、「君のお
「その殺し屋は……一体誰なの?」真樹の口から語られたその名前はーーー。「……KENGOだよ」「……っ!?」えっ……。えっ? ボス……?ボスが、真樹の恋人を……? そんなの……信じられない……。「俺の恋人を殺したのは……君のボスだよ、朱里」「ウソ……。ウソよ、そんなの……」絶望する私に、真樹は「だから俺は……殺し屋になったんだ。 君と同じだよ、朱里」と告げた。「……ボスが、あなたの恋人を殺したの?」「そうだ。……だから俺は、君のボスに復讐するために殺し屋になった」そんな……。真樹は、ボスを恨んでるんだ……。「……あなたも、私と同じなのね」同じ境遇の私たちは、似た者同士ということなんだ。……私も真樹も、同類だったんだ。「……朱里、俺は君のボスを許すことが出来ないよ。君と同じで、一生許すことが出来ないと思う。 大切な人を奪われた悲しみは、君も充分に分かってるだろ」「……あなたの言うとおりよ、真樹」「でも俺は、君を愛してる。……愛する人が出来たんだ、俺にも。君という人が」私は……なんて言えばいいのだろうか。 彼を恨んでるのは確かで、そうしたいと思ってた。でも……分からなくなった。なにも言うことは出来ない。「朱里、俺はどうなっても構わない。 だから、千歳を開放してくれないか。千歳は何も悪くないんだ。何も関係ないんだ。 だから……頼む、千歳を開放してやってくれ」「……わかった。開放してあげるわ」 私は真樹からの頼みを受け入れた。 ハルキに連絡をして、千歳をすぐに開放するように伝えた。 ハルキは驚きながらも「ああ、わかった」と了承してくれた。「約速通り、千歳を開放したわ」「ありがとう……朱里」真樹、これであなたは満足なの?「真樹、あなたボスに会いたい?」「え……?」私は真樹を見つめながら、「ボスに会いたいなら、会わせてあげる」と伝えた。「……なぜだ?」真樹は不思議そうに私に問いかける。「ボスに復讐がしたいんでしょ?……だったら、復讐すればいいじゃない」なぜこんなことを言ってしまったのか、私にも分からない。 でも、私がこの男に復讐したいのと同じように、真樹もボスに復讐したいと思っていた。「君のボスだろ? いいのか、君はそれで」「……私もあなたと同じよ。だから、復讐したければすればいいわ。 ボスだってきっと、復讐し
「ウソだ。君は俺を愛してる」「愛してない……。愛してないっ」何度もそう言ってるのに、真樹は「いや、君は俺を愛してる。……なのになぜ、強がるんだ?」と私の方を向く。「っ……ウソよ。ウソなの……全部……」私の身体は震えている。どうして、どうしてこの男を殺したいのに、出来ないのだろうか。「……今のお前に、俺が殺せると思うか?」「殺すわよ!……絶対に、絶対にあなたを殺す。千歳と一緒に地獄に葬ってやるから」あなたたちを殺して、私はこの仕事を引退する。……あなたたちを抹殺すれば、私の復讐は終わる。「……朱里、君は妊娠しているんだ。そんな身体で、俺が殺せると、本気で思ってるのか?」真樹にそう聞かれて、私はなにも答えられなかった。「無理をしたら、君のお腹の子に支障が出るだろう。 それでも……君は俺を殺すつもりか?」そんなの……当たり前よ。「朱里……君には悪いと思ってる。本当に……申し訳ないと思ってる」「ウソ……。そんなこと、本当は思ってないくせにっ……!」私が背中を向けると、真樹は私の背中を包み込むように抱きしめてくる。「やめて……。離してっ……」「離さない。……俺は絶対に、君を離さない。俺を殺したれば、殺せばいいさ。 それで君の気が済むのなら……そうすればいい。俺は君に、それほどのことをしたのだから」どうして……。どうしてそんなことを言うのよ……。お願いだから、そんなこと言うのはやめてよ。私はあなたを地獄に落とすために、ここまでやってきたのに……無駄になってしまう。「……俺はもう、殺し屋を引退するつもりだ」「え……?」引退……? ウソよね……?「俺は……お前のために変わりたい。 君の子供を……守りたいって思ってる。これから先もずっと」そんな優しい言葉を言われたら……私の決意が揺らぐ。 私が今まで生きてきた理由は、コイツらのためだけ。それ以外のことはどうでも良かった。……どうでも良かったのに。「……真樹、私はあなたを許すことが、どうしても出来ないの。 あなたを許すことが……私にとって過酷なことなの。わかるでしょ?」大切な家族を奪われた悲しみなんて、アンタにはわかる訳がない。 私はずっとずっと、アンタに復讐することだけを生き甲斐にしてしてきたからこそ、分かってたまるものか。「……わかってる。だから、俺のことは一生許せなくていい。
真樹は本当に私に優しい。 優しすぎるくらいに優しい。本当に彼は……私の両親を殺した犯人なの? 彼は本当に……あのレッド・アイなの?全然そんな気配を、全く感じさせない。 別人のように感じてしまう。「……朱里、俺は君が愛おしい。そのくらい、君は大切な存在なんだ」私の頬を撫でながら、真樹は優しい表情を浮かべる。「……どうして。私は孤独なのに……。私は誰にも、愛される資格なんてないのに……どうして?」「……君がいつも孤独を感じているのは、分かってたよ。 だからこそ俺は、君のそばにいて孤独を感じさせたくないんだ。……それにもう、君は一人じゃない。俺がいるし、子供もいる」私は……悔しいけど、やっぱり真樹のことが好きなんだ。 彼のことを、すでに愛してしまっている。「……やめて。それ以上、優しくしないでよ……」これ以上優しくされたら、私の気持ちが揺らいでしまう。 彼に復讐したいという気持ちが、鈍ってしまいそうになってしまうから。だからお願い。これ以上、私に優しくしないでーーー。「……朱里?」「お願いだから……これ以上優しく、しないでっ……」真樹は「朱里……どうした?」と私の顔を覗き込む。「私……あなたに優しくされると、困るの。 私はこれ以上……あなたを好きになりたくないのよ」あなたへの思いは、きっと本物。……だからこそ、あなたに復讐する気持ちだけは失いたくない。「……俺との幸せを望むのが、そんなに怖いのか?」そう聞かれて私はつい「……正直、すごく怖い」と答えた。これ以上の幸せを望む権利なんて、私にはない。 そんなことしても、私は幸せになんてなれない。 この子を守ることが……私には本当に出来るのだろうか。 私みたいな裏社会の抹殺をする組織の一員が、ちゃんと母親になれるのだろうか。不安しかなくて、また泣きそうになる。「……それは、お前が俺を恨んでるからか?」「えっ……?」真樹の一言に、私は目を見開いた。(待って……どういう……意味?)「お前は、俺を恨んでるんだろ?……俺がお前の両親を殺したから」「な……んで……?」ウソ……。いつから、気付かれてたの……? 「気付いてないとでも思ったか?」「……なんで、気付いたの?」私は真樹にそう問いかけると、真樹は私の前に座り「俺を誰だと思ってる?」と私を視線を向ける。「……あなたが、私
「……え? 朱里の両親を……殺した?」「そうよ。……あなたのお兄さんは、私の両親を殺したのよ。アンタのお兄さんがね」「ウソだろ……。そんなの、ウソだっ……」「アンタ、やっぱりおめでたい男ね。お兄さんにも騙されて、私にも騙されて……本当にバカな男」本当にバカすぎて情けなくなる。千歳は「ウソだろ!? 兄貴が、そんなことを……するはずがないっ!」と私に突っかかってくる。「いいえ、したのよ!アンタの兄貴は、私の両親を殺したのっ!……前に言わなかった? アンタのお兄さんにも、私にも裏の顔があるって」「ウソだろ……。俺のこと……利用したのか? 兄貴に復讐するために、俺を利用したってのか!?」そう言われたから、私は「そうよ。私はあなたを利用しただけ。 アンタの兄に近付くために、アンタたちに復讐をするためにアンタを利用したの」と言い返す。「そんな……。そんなこと、ありかよ……」「騙される方が悪いのよ。……あなたは私が本気であなたを愛するとでも思った? そんなわけないじゃない。あ、でも、あなたの身体だけは愛してあげたわ」そんな私に向かって、千歳は「お前……クソだな。最低だ!」と言い放つ。「最低?……アンタたちのがよっぽど最低じゃない。アンタはお兄さんのこと、なんにも知らないのね。アンタのお兄さんは、とんでもない殺し屋なの。 狙った獲物は、絶対に逃がさない。どこまでも追いかける。そんな殺し屋よ。……どこまで行っても、逃げ場なんてない。待ってるのは地獄だけなの」「兄貴が、殺し屋……?レッド・アイ……? どうなってんだよ、一体……」呆然とする千歳に、私は「だから千歳、アンタも私の敵なのよ。……だから私は、あなたを殺すと決めたの」と告げる。「俺は……俺は……死にたくない」「でもまだ殺さないわ。……あなたを殺すのは、あなたのお兄さんの前でにするから」「はっ……? それ、どういう意味だよ……?」「せいぜい楽しみなさい。残りの人生を」「おい、待てよ朱里! ふざけんなよ、お前っ!」私はそう告げると、千歳の前から消えるように立ち去った。「……ふっ、いい気味。せいぜい苦しめばいいのよ」「お前……身体、本当に大丈夫なのかよ」ハルキが心配そうに聞いてくる。「大丈夫よ。……もう少しの辛抱よ」「無理はするなよな」「……分かってる」さて、ここからが鍵ね。「







