Masukそして、こっそりと宝石を返すことで終わらせたかった。 だから、セレスティンの周りをウロウロしていたのだと、キャサリンの時でも正直に話してくれた。 レオネルは、ポケットからエリアスの宝石を取り出す。たしかにキラキラと光るエメラルの色柄で『王国の家宝』で間違いなさそうだ。 ソッとエリアスが持つと眩い黄金の輝きになり、彼を包み込んだ。「本物です。そっか、君が持っていたんだね? レオネル」「……ごめんなさい」 本物だと証言し、優しく聞き返すエリアスと違い、レオネルは涙を流しながら謝罪を口にする。 悪気はなかったとはいえ、罪は罪なので、今後どうするかはエリアスの指示次第だろう。 そして母親でもあるミライダは、観念したのか座り込んでしまい、泣き崩れていた。 親子は、後日の処分が決まるまで自宅で謹慎処分することに。 今回の事件は幼い子供による窃盗事件ということで終わりを告げる。 1週間後。ミライダ親子の処分が決まる。 上層部共に話し合いを行われたが、やはり大切な『王国の家宝』を盗んだことは大きい。そのため犯人であるレオネルは王族から廃嫡。辺境の地に移り住むことに。 今後は辺境伯として国を守っていくことになるだろう。 そして母親であるミライダは、そのことを後から知ったにしろ、それを利用して騒ぎを大きくした罪は大きいとされた。 王族の名誉を傷つける行為は重く、王太后を廃嫡。 しかし母親としての責任を取る形として息子と一緒に辺境に移り住み、教育することになった。まだ幼い息子を支えてほしいというエリアスの優しさからだ。 2人が出て行く日。エリアスはレオネルのこう話した。「もし困ったことや悩んでいることがあれば、いつでも頼るといい。私にとって君は大切な弟に変わりはないから」 例え離ればなれになったとしても、エリアスにとったらレオネルは可愛い義弟。それは今でも変わらない。優しく頭を撫でてあげる。「はい……ありがとうございます。エリアスお義兄様」 少し寂しそうに涙を浮かべながらも、ニコッと笑顔を見せるレオネルは、まだおどけない子供。 これから罪を償いながらも立派に成長することを願うばかりだ。 親子が旅立ってから2ヶ月後にエリアスとアシュリーの結婚式が行われた。 一旦帰国したセレスティンとレンデルは日を改めて出席することに。 結婚指輪になった
オスカーはそう発言をすると、チラッとメリッサの方を見る。 メリッサは庇ってくれたことに驚いていたが、彼の言いたいことを察したのかコクリと頷いた。オスカーは観念したのか正直に口を開く。「……ミリア。黙っていて、すまなかった。俺は同性愛者なんだ。そして彼女の本当の性別は男性。俺は……男であるメリッサのことを愛している」 ずっと隠していたこと。 その事実を打ち明けて、1番ショックを受けたのはミリアだった。「う、噓でしょ!? あなたが同性愛者だなんて」 必死にオスカーの腕を掴んで訴えてくるが、オスカーは苦しそうな表情で首を横に振る。ミリアは絶望的な表情になり、足元がよろめいた。 信じたくはないだろう。それでも現実は突きつけてくる。「だから私と夫婦生活をするのを拒んだのね? そ、そんなの……どうすることも出来ないじゃない。あなたの恋愛対象が男では」 まだ恋愛対象が女性なら勝ち目があっただろうが、男性となるとそうはいかない。 彼女は男性にはなれないからだ。 動揺して言葉にならなくなっていくミリアを置いて、セレスティンは話を続ける。「王太后陛下。オスカー殿下が同性愛者であること。メリッサ様が男性であることは知っておりましたよね? それでどうして、あのような噂を流したのですか?」「そ、そんなこと……知らなかったわよ!?」 セレスティンの質問にビクッと肩を震わせたミライダは慌てて言い訳を述べるが、それは既に調べはついている。「それはおかしいですわね? エリアス陛下からは、王族なら知っていると聞いているはずですが?」「そ、それは……」 動揺を隠し切れていない様子のミライダはドレスの裾をギュッと握っていた。 するとレイデルが口を開いた。「噓をついても罪が重くなるだけだぞ? そもそも揉め事の発端は、王太后陛下にあることは、既に調べはついている。そうなると今回の宝石の件も、あなたが盗んだのではないのか?」 鋭い質問をついてくるレンデルにミライダの表情は一層真っ青になっていく。「そ、それは……」「違うよ。それを盗んだのは僕だもん!」 その瞬間、彼女を庇ったのはレオネルだった。周りは驚いていた。 まさか幼いレオネルが名乗り出るとは誰も思わなかっただろう。セレスティンとミライダ以外は。「レオネル。およしなさい!?」「ぼ、僕が……悪いんだ。お母
セレスティンは、全員をエリアスの執務室に呼ぶ。 集まったのは、レンデル以外にエリアスとアシュリー。メリッサとオスカー夫婦。 そしてミライダとレオネル9人だった。他にも騎士たちが数人。「皆様お集まり下さりありがとうございます。今回の事件の真相が分かりましたが、その前に誤解を解きたいと思います。まず今回のアシュリー様とオスカー殿下の恋仲の件ですが、それは間違いだと確認が取れました」 セレスティンがそう言うと、真っ先に口を開いたのはミリアだった。「ちょっと待って。どういうことよ!? オスカーの愛人は、この女でしょ?」「では、それは誰から聞いたのです?」 ミリアの意見に反論するセレスティン。「それは……王太后陛下だけど」「では、どうして、それが真実だと思ったのですか? 王太后陛下が噓をついたとも考えられますよね?」「……それは」 セレスティンと正論に一瞬戸惑うミリア。それを信じて、怒り任せで攻撃してきたのはいいが、いざ聞かれると言葉が出てこないようだ。「ちょっと、人聞き悪いことを言わないでちょうだい。それでは私が噓をついているみたいじゃないのよ!?」 それを聞いて怒り出すミライダだったが、セレスティンは負けてはいない。「では逆にお聞きしますが、どうして2人が愛人関係だと思ったのですか? イチャつく姿を見た者が居たとお伺いしましたが、その方にもう一度詳しくお聞きしたいので教えていただけませんか?」 反論を返すと、ミライダが何も言い返せずグッと歯を食いしばる。「言えないはずです。だって、これはまったくの噓。そもそもオスカー殿下のお相手は違います。本当の相手はメリッサ様なのですから」 セレスティンは本当のことを告げた。隠していたことではあるが、真実を話すためには打ち明けないといけないこと。そのためにメリッサには承諾をもらっている。 その言葉に動揺したのはミリアとオスカーだけではない。ミライダもだ。「あら……そうだったかしら? だとしたら、私の勘違い」「いえ、勘違いではありません。あなたは、ワザとそうなるように教えましたよね? そうすることで、揉めるように仕向けた。それだけではないわ。アシュリー様にもエリアス陛下とメリッサ様が恋仲だと言いふらした。それで婚約が破綻し、陛下の評判を下げることを狙って」 惚けようとするミライダをセレスティン
「もう一度言う。私と結婚してくれないか?」 その綺麗な目には噓はなかった。「はい……喜んでお受け致します」 アシュリーはプロポーズを受け入れることにしたようだ。噂が間違いだと分かり、彼女も悩む必要がなくなった。彼の想いを聞いて、ようやく両想いになれたようだ。 しかし、これで良かったと終わるわけにはいかない。 まだ肝心な『王国の家宝』であるエリアスの宝石が見つかっていないのだ。「そうなると、後は宝石を見つけるだけですが、誰が盗んだのでしょう?」 セレスティンは、もう一度そのことに触れた。 とりあえずメリッサとオスカーの疑いは晴れた。そうなると、残りはミリアとミライダだけとなるが。 するとエリアスが口を開いてきた。「倉庫に出入りする者は記録されるはずです。警備担当の騎士たちが極秘で書いているので、それをきちんと調べれば」「ああ、それなら、既に調べはついている。盗まれる前に記録されていたのは、君とオスカー。それとミリア公爵夫人とミライダ王太后親子だけだ」 エリアスの意見に反論したのはレンデルだった。さすが優秀なだけあって、既にそこまで調べはついていたようだ。 エリアスとオスカーは無効。だとすると、やはりミリアとミライダだが……。「あら? どうして親子で行ったのかしら?」 犯人としてミライダが1人で行ったとしたら分かるのだが、親子で行く必要性があるのだろうか? セレスティンが疑問を抱く。「ああ、どうやらレオネル殿下は母親に見たいとワガママを言っていたらしい。まぁ、それが盗むチャンスだと思ったのかもしれないが」 レンデルの言葉に先に驚いたのはセレスティンではなくエリアスだった。「えっ? レオネルがですか? あの大人しい子がワガママを言うなんて珍しいな。特に母親にはワガママとか言わないのに」 たしかにシャイで大人しい性格の子だろう。好奇心旺盛でもあったが、あの怖い母親に盾突く感じではないとセレスティンは思った。(ならどうして、そんなことをしたのだろうか?) レンデルの言葉にハッと何かをと思い出すセレスティン。そうえば、彼は気になる発言をしていた。 もしそうなら彼は、その答えを知っているはずだ。 セレスティンは、その後。また子供の姿になってレオネルに近づいていく。 大切な情報を聞くために。 居場所をメイドから聞くとレオネルは丁
話によると彼女自身は女性と生きることを望んでいるようだ。そして、それはエリアスたち、王族は知っていた。「……ごめん、黙っていて。これはラッカム侯爵家との約束でもあり、メリッサの心情を考えて、あえて誰にも言わずに秘密にしていたんだ。私自身も幼馴染みってのもあるが、彼がバレないように庇っていたりと、曖昧な態度をとっていたから変な誤解を生んでしまったらしい」 エリアスは自ら誤解を生んだことを謝罪する。続けてメリッサも、「私の方からもごめんなさい。たしかにエリアスには幼い頃に追いかけまわしていたことはあるわ。それは王妃になることに憧れがあったからで、本当に好きとかではなかったの。つい昔の癖で馴れ馴れしくしてしまっていたけど、とっくの昔に振られていて、諦めはついていたの。今ではただの友人同士。それに……私はオスカーが好きなの」 と、自ら本音を打ち明けてくれた。 メリッサは昔にエリアスに猛アタックしていたという噂は本当だったようだ。しかし、それは幼い頃の話。現在はとっくに諦めていると。 エリアスにベタベタする癖も問題だが、それ以前にオスカーとの不倫関係は真実だったようだ。「……では、オスカー殿下と不倫関係にあったという噂は本当なの?」 セレスティンは、すぐさま気になる質問をするとメリッサはコクリと小さく頷いた。「……はい。それは本当です。ですが、彼と私はずっと前から惹かれ合っていました。優しく私を見てくれるオスカーとは恋人同士にありましたが、彼は第2王子。いずれ結婚して跡継ぎを作らないといけません。だから……ミリア様と政略結婚することになってしまって」 辛そうに話す彼女を見て、もともとは恋人同士だったことを知る。たしかに王子としてだけではなく、公爵としても彼は跡継ぎが必要だ。 男性のメリッサでは難しいことだろう。そのためにミリアと政略結婚したとなると、かなり複雑だろう。 しかし、そうなると1つ疑問なことが見つかる。 オスカーもメリッサが男性であることを知っていたとなっていたが、それでは同性愛として好きだったのだろうか? エリアスを見ると、複雑な表情をしていた。「メリッサの性別のことを隠したことは、もう1つ理由があるんだ。私の弟……オスカーは同性愛者なんだ」「えっ……えぇっ!?」 ああ、思っていたことが当たってしまったようだ。 セレスティン
しかし、それを喜ぶ人物が1人だけ居た。ミライダだ。 自室で今回のことを聞いたミライダは、高笑いしながら赤ワインを飲んでいた。「上手くいったみたいね。本当に馬鹿な子ばかりで助かるわ」 まるでそうなることを願っていたかのように。 そして、そんな母親をこっそりと見ていたのはレオネルだった。何か言いたげにグッとズボンを握り締める。 ミライダは、そんな息子の姿を気にすることはなかった。 その後。今回の件はアシュリーの耳にも入ってしまったようで「もうダメだわ」と言い、ベッドの上で泣き崩れてしまった。「大丈夫ですよ。ちゃんと話せば、きっと分かってくれます」「でも……違うと証明が出来ないわ。これだけ騒ぎになったら……エリアス様から婚約破棄されるかもしれない」 セレスティンの言葉よりも婚約破棄されたら、どうしようと頭を抱え込むアシュリー。自暴自棄になってしまっている。 このままでは部屋から出て来られなくなると思い、セレスティンは必死に励ましていると誰かがドアをノックしてきた。「はい、どうぞ」 代わりにセレスティンが返事をすると、入ってきたのはエリアスとメリッサだった。後ろにはレンデルの姿も。 よりにもよって、こんな日にどうして2人でシュリーに会いに来るのだろうか? 非常識だとセレスティンがムッと怒っていると、エリアスが先に、「アシュリー。もう一度きちんと話し合おう」 と、訴えかけてきた。「何を……ですか? 私がオスカー様と浮気をしいているってことですか? でも、私はそんなことはしておりません。全部誤解なんです」「ああ、分かっている。君がそんなことをする人ではないことぐらいは」「何を分かっているんですか? 私のことなんて何も分かってもくれないのに。エリアス様だって……メリッサ様と仲がいいではありませんか?」 エリアスの言葉にカチンときたのか、アシュリーは初めて彼に盾突く。いつもは飲む込んでしまう彼女だったが、今回はどうしても我慢が出来なかったようだ。 半分は自棄になっていたからかもしれないが。だが、本音を話す、いい機会だ。 アシュリーは、これとばかりに本音をぶつけていく。「本当は、ずっと辛かったんです。メリッサ様が好きなエリアス様を見るのが。嫉妬する自分が嫌いで……悲しかった」 目尻に涙を溜めながら正直に言葉にすると、エリアスはハッと







