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第5話

مؤلف: 愛月花音
last update تاريخ النشر: 2026-04-04 16:53:55

 傍まで行くと、ニコッと微笑みながら手を差し出した。

「聖女・カトリーヌ。是非私と踊って下さい」

 その言葉にセレスティンは絶句する。本来ファーストダンスは婚約者か妻と踊るのが暗黙のルール。既婚者や婚約者が他の異性と踊るのはマナー違反とされている。

 それなのに皇太子であるウィルモットは、婚約者のセレスティンを置き去りにして、カトリーヌにファーストダンスの相手として申し込んだのだ。

 ショックを隠せないセレスティンに、追い打ちをかけるようにカトリーヌは、戸惑いながらもその手を受け入れてしまった。

 彼女は平民なので、正式なマナーを知らなくても当然だ。なのに……。

 ウィルモットは、嬉しそうに彼女の手を握り返すと、引き寄せる。そして、片方の手をカトリーヌの腰に回すと、少しずつ踊り出した。

 慣れないダンスに戸惑うカトリーヌだったが、ゆっくりとリードしながら踊る姿は、理想的な皇太子のよう。美しい2人の姿は、まさにお似合いだった。

 周りの貴族達もそれを微笑ましそうに見ている。

「まぁ、なんてお似合いなのでしょう」

「聖女様も初々しくて可愛らしいわ。これでは、どちらが婚約者か分からないわね?」

「あら、聖女様が現れたのよ? そうなれば聖女様が皇妃陛下になるのが当然ではなくて?」

 令嬢たちの何気ない言葉にズキッとセレスティンの心が痛む。

 セレスティンがもっとも恐れていること。それは彼の心が完全に離れて、婚約破棄をされることだった。もともと皇族の命令で決まったことだ。

 いつ覆されるか分からないし、それでも皇妃になるために必死に頑張ってきた。

 それなのに、聖女が現れた途端に自分の居場所が奪われることになるなんて。

 不安になっているセレスティンを蔑ろにして、ウィルモットは二度目のダンスもカトリーヌと踊り出した。

 二度目を許されるのも婚約者か妻だけ。これでは、婚約者が変わったと言っているようなもの。

「……ウィルモット……さま」

 セレスティンは苦しそうに彼の名を呼んだが、届くはずもなかった。

 その後もセレスティンは、ウィルモットからダンスを申し込まれることは一度もないままパーティーが終了してしまう。

 今まで嫌々でも踊ってくれたのに、存在すら忘れられてしまったかのように。

 胸が押し潰されそうになる。

 チラッと皇后の顔を見るとギロッとセレスティンを睨んでいた。そうなったのもセレスティンのせいだと言いた気に。

 皇后は2人の関係制にあまり好感を持っていない様子。

 セレスティンは恐怖と悲しさで、ひたすら下を向くことしか出来なかった。涙をグッと奥に引っ込めながら。

 しかしウィルモットは、その後も聖女・カトリーヌにべったりだった。

 平民の彼女は皇宮や貴族のしきたりや、場所を知らない。そのために、買って出る。

 一緒に道案内をしたり、時に相談や話し相手にもなってあげていた。

 最初は皇太子だからと遠慮をしていたカトリーヌだったが、熱心で優しく接してくれる彼に少しずつ心を開いていき、彼に微笑みを向けるようになる。

 それだけではない。宰相の息子で侯爵家の長男。トリスタン・オルコットもカトリーヌの虜になっているみたいで、よく見かけるように。

 3人で散歩をしたり、お茶をする姿などを見かけたが、誰もそれに対して何も言わない。微笑ましい光景だと言っている者もいたぐらいだ。

(たしか……トリスタン様にも婚約者がいたはずでは?)

 だが余計なことを言うと、彼らを怒らしてしまうのは分かっていた。

 その気持ちを一度も自分に向けられたことがないし、仲間に入れてもくれない。

(本来は……あの場所は私がなるはずだったのに)

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