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鈴華の過去③

Author: rinsan
last update publish date: 2026-08-05 15:00:03

「それで、会長の護衛を?」

「俺の護衛をするようになったのは、二年ほど前からだよ。

鈴華が、どうしてもと言ってきかなくてね」

「彼女が、ですか」

「この国に降り立ったばかりの彼女には、一般社会の“常識”なんて概念は

存在しなかった。香港の組織で彼女が教え込まれてきたのは、

ただ一つ――いかにして確実に息の根を止めるか、それだけだったからね」

男の淡々とした声が、座敷の空気を凍らせる。

その冷気に抗うように襖が静かに開き、次の皿が、二人の間にそっと差し出された。

「日本語もろくに話せなかった彼女の面倒を、

ゼロから見たのは宏一なんだよ」

「あの男が? ……すみません、意外だったもので」

槇村の唇が、愉快そうに弧を描いた。その笑みには、

過去を知る者特有の余裕が滲んでいる。

「他人のために泥を被るような男には見えないだろう?」

「……ええ、正直なところ」

「鈴華が日本にやってきた頃、俺はまだ六穣会を立ち上げる前だった。

ビジネスの足場が大阪になく、あちこちを飛び回る日々でね。

だから、彼女のすべてを、宏一に委ねるしかなかったんだ」

「宏一さんが……鈴華さんの面倒を、ですか?」

「ああ。は
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