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第6話

Autor: ころころおなか
美優はもう一度琉生の手に目を落とし、短く切り捨てた。「さっきよ」

「何か用?さっき何か見たのか?」美優の冷ややかな視線に気づいた琉生は、無意識に手を隠しながら尋ねた。

「何を見たって言いたいの?」美優は言い返した。

言葉に詰まった琉生は、眉間にしわを寄せた。「なんでもない。君は妊娠中だろう?凪のケアを代わりにしてあげて、罪滅ぼしをしているだけだ。あまり深く考えるな」

妊娠中という言葉を耳にして、美優の胸に刺さった。琉生の言葉を反芻する。妊娠中、だと?

続いて美優は鼻で笑った。自分が送った健診結果のメッセージを見ていないのだろうか?今は凪をかばうために、子供のことまで言い訳に使うなんて。

「だってそうだろ?誰のせいでこうなったと思ってるんだ。君が凪の手を負傷させたんじゃないか。僕はただ君の代わりに罪を償っているだけだ」自分の言葉にあざ笑いを見せる美優を見て、琉生は苛立った様子で、凪の怪我のことを持ち出した。

今回のことは全部美優のせいだ。じゃなかったら、凪がこんな災難に遭うはずがなかった。

懸命に痛みをこらえようとする凪の健気な姿を思い出し、琉生はたまらなく心を痛めた。

琉生のいかにも辛そうな表情を見た美優は、嘲笑いながら言い返した。「それならプロの介護士を頼めばいい。あなた自身がずっと付きっきりになる必要はないでしょ?」

「そうはいかない。凪は他人を嫌うし、第一、他人の介護よりも自分がやった方が丁寧に決まっている。凪の手を絶対に元通りに回復させないと」琉生は即座に言い返した。

美優は言葉を続けた。「専門の介護士を呼ぼう。そうすれば凪の手もきっと回復するはずよ。あなたは自分の手を何よりも大切にしてきたじゃない。付きっきりの介護なんて手が一番荒れるし、演奏に差し支えてもいいの?」

美優の指摘に言葉を失った琉生は、戸惑いの表情を浮かべた。

しばらくして彼は言い切った。

「僕が直接ケアするのが最適なんだ。罪滅ぼしにもなるし、騒ぎを最小限に抑えられる。君のやったことは本来傷害罪になるから、法的に見れば警察に突き出されるレベルなんだぞ。僕は君のためにやっているんだ。

それで凪は君の罪を問わないと約束してくれた。この話はここまでだ」

そこまで言って、彼はさらに続けた。「それに、2週間後には公演がある。そんなくだらないことで出演に穴を開けたくない。ゲストとして共演する凪には、万全の状態でステージに立ってもらいたいんだ」

美優はそれを聞き、一瞬動かされかけた心を自分で嘲笑った。やはり琉生はキャリアのことしか考えていないのだ。

会話が終わると、琉生は度重なる気性の荒さで凪を追い詰めた美優に対し、冷たい声で注意を促した。

「気配りができるようになってほしいとは言わないが、少しはその短気な性格をどうにかできないのか?凪を見習って、教養でも身につけてくれ。いつも家で何もしないでぶらついて、見ていてうんざりするんだよ」

しかしその言葉を聞いて、怒りを爆発させた美優は、琉生を強く張り倒した。

彼女はかすれた声で、絞り出すように言い放った。「琉生、あなたこそ私に偉そうなことを言う資格なんてない!」

一方、そう怒鳴られた琉生はようやく、事の重大さに気づき、少し後悔の念に駆られた。あんなことを言うべきではなかった。

確かに今は専業主婦だが、美優は家事の一切を取り仕切り、自分の親戚たちにも礼儀正しく振る舞ってくれている。

音楽の才能も知識もない美優に対して、どうしてあれほど才色兼備で気が利く凪と同じレベルを求めてしまったのだろう?

そう思って、改めて説明しようと顔を上げた琉生だったが、そこに美優の姿は既になかった。

彼が追いかけようとして数歩進んだところで、背後から声をかけられ止められた。

「琉生さん、看護師から手のレントゲン撮影へ……」

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