諏訪美優(すわ みゆ)が諏訪琉生(すわ るい)と結婚した年、琉生は市内の時代広場の大型ビジョンを貸し切り、3日間ずっと二人の馴れ初めを綴ったシルエット映像を流し続けた。その時集まった999万ものお祝いのコメントが、美優にとっての「絶対に揺るがない愛の証」となったのだ。しかし、その愛の証は、結婚5年目にして静かに崩れ去った。この時美優はふらつく体を引きずり、産婦人科から帰宅した。そしてピアノのトロフィーが並ぶ壁を空虚な瞳で見つめながら、健診結果の用紙を握りしめたままの手をまだ下ろせずにいると、琉生から着信があった。「ここんとこ、ピアノの練習で忙しいんだ。健診には一緒に行けないから、とりあえず家でゆっくり休んでいてくれ」美優が応答ボタンを押すと、穏やかな琉生の声が耳に届いたが、彼女が何かを聞き返すよりも先に、電話は切れた。昨日確認したばかりだ。琉生にトレーニングの予定はなく、時間は空いているはずなのに。美優がすぐにかけ直すと、相手の電源は切られていた。琉生にここまで拒絶され、生活に踏み込まれたくないのだと察し、彼女の胸はひどく痛んだ。自分はただ、二人の子供が流産してしまったことを伝えたかっただけなのに。美優は深く息を吸い込み、健診結果の用紙を写真に撮って琉生に送った。その後、アドレス帳からある番号を探し出して電話をかけた。「離婚の手続きをお願い。もう、琉生とは別れるから。子供は……もう亡くなったの。私にはもう、何も思い残すものはないから」美優は健診結果の用紙から目をそらし、声を詰まらせて言った。「この結婚を続ける理由が、もうなくなったの」すると電話の相手、美優の長年の友、内田洋子(うちだ ようこ)が悲痛な声で訴えた。「美優、あなたは長年こんなにも琉生さんのために尽くしてきたのに。友達とも離れ離れになってこんな遠い街まで嫁いで、結婚してからも彼の生活ばかりを気にかけてきた。それに、琉生さんの持病を治すために安全性の高い薬を探すのだって一苦労したんだから。あなたがこうして、みんなが羨むキャリアを捨ててまで、自分から専業主婦になってあげて、毎日食事や家事を全部背負って……それは見ていて私が、誰よりもよく知ってるわ!」と洋子はなんとも悔しくて堪らない様子だった。そして洋子はさらに切なげに続けた。「あなたは琉生さんのため
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