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第597話

Autor: 清水雪代
「前に担当した離婚案件なんだけど、途中で依頼者の意志が挫けてしまったことがあってね。ご家族に何度か説得されているうちに、訴えを取り下げてしまったの。

後になって後悔して再び訴えようとしたときには、夫側がすでに財産を移していて……有利な条件を引き出したくても、もうどうにもならなかった。

こういうことは、とにかくスピードが勝負なの。途中で気持ちが揺らいでしまったら、損をするのは結局、女性の方なのよ」

智美は梨沙子の決然とした表情を思い出しながら答えた。「梨沙子はもう覚悟できてると思う。途中で投げ出すようなことはないはずよ」

「ならよかった」美羽は頷いた。「そもそも、誰だって最初から離婚を望んで結婚するわけじゃないもの。それでも踏み切るっていうのは、普通の人にとってはすごく大変なことよね」

美羽と祥衣は先にホテルへチェックインしに行った。

その道すがら、智美は美羽に水を向けた。「成田さんとはどうなってるの?」

それまでキリッとした弁護士の顔をしていた美羽が、急にふわっと表情を崩し、照れくさそうに髪をかき上げた。

すかさず祥衣が美羽の肩にもたれかかり、笑って智美に教えてくれた。
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