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第626話

Auteur: 清水雪代
車に乗り込み、二人は岡田グループが出資する私立病院へと向かった。

病院側はあらかじめ優秀な担当医を手配してくれていたため、受付の列に並ぶ煩わしさもない。すべての検査を終えるまで、三十分もかからなかった。

悠人は腕時計をちらりと確かめて微笑んだ。「まだ九時半か。お腹も空いただろうし、先に朝食でも食べに行こうか」

そのとき、彼のスマホが震えた。会社の役員からの着信だ。

悠人が短く詫びると、智美は「気にしないで」と首を振り、彼は廊下へ出て電話に応じた。

智美はロビーのベンチに腰かけて彼を待っていた。

ふと、背後から思いがけない声がかかった。

「智美、どうしてここに?」

振り返ると、そこには麻祐子が立っていた。

麻祐子の視線は、智美の隣に置かれたクリアファイル、そこに挟まれた母子手帳へと吸い寄せられた。「あなた、妊娠したの?」

なぜそこまで驚かれるのか、智美にはまったくわからなかった。

夫婦が子どもを授かる。それの何がいけないというのだろう。

「ええ、そうよ」智美はそっけなく答えた。

すると麻祐子は突然、声を荒らげた。「じゃあお兄ちゃんはどうなるの?あなた、お兄ちゃん
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