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第673話

Author: 清水雪代
宙を舞った香代子の手は、あと一歩のところで間に合わなかった。

だが幸い、智美の様子から片時も目を離さず見守り続けていた岡田家の護衛たちがいた。ドレスの裾を踏まれた瞬間、護衛のひとりが弾かれたようにすかさず反応していたのだ。

一人が疾風のごとく駆け寄って智美の体を間一髪で支え、もう一人は人混みに紛れてこっそり立ち去ろうとしていたウェイターの腕を、容赦ない力で取り押さえた。

護衛に支えられて体勢を立て直した智美の背中には、極度の緊張からじっとりと冷たい汗が滲んでいた。もし今日、護衛が間に合わなかったら――最悪の事態を想像するだけで、背筋が冷たくなる。

騒ぎに気づいた恵美梨が血相を変えて駆けつけ、心底申し訳なさそうな顔で言った。「智美さん、大丈夫!?ちゃんと警備を手配できなかった私のせいよ。お体のこともあるんだから、誰かにすぐそばについてもらうべきだったわ……!」

智美はまだ大勢の客が待ち望む演奏が残っていることを思い、この慈善オークションの空気を台無しにしたくなかった。恵美梨に向けて、気丈にそっと微笑んでみせる。「大丈夫ですよ。転ばなかったし、まず本番のステージを優先しましょう。
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