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第87話

Author: 清水雪代
智美は、悠人が自分に向けてきた気遣いを思い出した。

やっぱり、彼は自分に特別な感情を抱いているんじゃないのか。

そう思わないわけがなかった。

けれど本人が口にしない以上、こちらから「私のこと好きなんですか」なんて聞くのは気が引ける。

ましてや、離婚したばかりでそんな勇気はとても出ない。

彼女は話題を変えて言った。

「その立地でフロア一括貸しなんて、高くつくんじゃないですか?」

大野法律事務所が入っているあのビルは、そう簡単に借りられる場所じゃない。

立ち上げたばかりの芸術センターがまさかそこを借りられるなんて、ちょっと信じられなかった。

祥衣は笑顔で答えた。

「美羽が言うには、岡田先生はビルのオーナーと知り合いで、間を取り持ってくれるんだって。家賃も値引きしてくれるらしいよ。それに、美羽が岡田先生に話してくれたんだけど、彼が快く引き受けたのは、多分あなたのことだからだって」

思いがけず、結局悠人の世話になることになってしまい、智美は笑った。

「それなら、きちんとお礼しないとダメですね。お店を予約して、ランチをご馳走しましょう」

「もちろん。もう予約済みだよ」

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