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第六十五話:闇の中(side祐希)

Author: 古紫汐桜
last update Petsa ng paglalathala: 2026-03-18 07:00:00

今、僕は――

暗くて冷たい闇の中にいる。

「祐希、起きろ!」

冷たい水を浴びせられ、意識が引き戻される。

「……っ」

ゆっくりと目を開けると、

「よぉ、蛇一族の恥晒し」

そこに立っていたのは、神蛇直己だった。

あの日。

来人たちを瘴気で覆い、逃げようとしたところを――捕まったらしい。

「随分、探したよ。祐希」

顎を掴まれ、無理やり顔を上げられる。

ニヤリと笑うその顔に、吐き気がした。

「随分と、やらかしたみたいだね」

頬を撫でられたあと、髪を乱暴に掴まれる。

「母親を殺されたくなかったら――分かるよね?」

思い出したくもない、暗い過去が脳裏をよぎる。

「お前に“男”を教えたのは誰だ?」

低く囁かれる声。

「なぁに……元に戻るだけだよ」

その言葉と
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