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*九ノ二

last update Dernière mise à jour: 2025-09-11 18:00:59

「こちらが、当店自慢の商品棚でございます。ざっと、二百、いや、三百の薬湯や薬を扱っております」

「わあ……すごい数の引き出し……」

 店内の最奥の壁には一面の木製の引き出しが作りつけられていて、そのすべてに小さな品目の紙が貼られている。人間界で言うなら、薬局の棚と同じだろうか、と楓は考える。

「右から咳止め、痰きり、熱さまし……あとは腹下しの薬なんかが良く出ますね」

 よく使うものほど下段にあり、滅多に出ないものは上段に置かれているという。喜助はその中でも特に珍しいというものを見せてくれた。

「……これは?」

 それは和紙で丁寧にくるまれた、一見高麗人参にも見える長細い植物の根のようなものだ。枯れた草のようなものを生やし、根のような部分が黒ずんでいる。

冬虫夏草とうちゅうかそう、と申します。土の中の虫やクモなどに寄生し、キノコを生やすものでございます。これはセミタケになります」

 そうやって見せられた冬虫夏草はなかなかにグロテスクな姿で、楓は思わず小さく悲鳴を上げそうになったが、辛うじて堪える。

「こいつはな、滋養の付く効能がある。特にウチで扱うのは物がいいからな、評判ではあるんだぜ」

「こ、これをそのまま飲むの?」

「まさか。乳鉢で潰して粉にして、煎じて飲む。もちろん飲みやすいように他の薬草とも合わせてな」

「その行程は私もやったことはありますが……まさか現物がこんなものだとは……」

 常盤も、診療所では薬になっている姿で扱うからか、原材料の姿で目にすることは滅多にないようで、若干顔を背けていた。尻尾も垂れた様子を、松葉が面白そうに見ている。

「夜伽の薬はまあだいたいこういう見てくれのものが多いかな。なにせ、精をつけるんだからな」

 そんな話をしながら、松葉はまた次々に新たな薬を出してきては説明してくれる。座学は苦手だと言って、常盤の講釈には顔を出さないが、それでも薬に関することになるとちょっとした講座が開かれたようになる。

「こっちはもっと珍しい。舶来ものだ。金貨百枚出しても欲しいって御仁がいるくらいだ」

 そんな

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