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はじめてのマッチング相手はLv.1 (前編)

작가:
last update 최신 업데이트: 2025-04-26 10:49:52

 スマホを手に取る。

 鳴動は、着信ではなく、アラームだった。

 画面表示の時刻は「10:28」。

「──そっか。お客さん、来るんだっけ」

 ふと、そこで思い立って、わたしは賭けをする気持ちで、目を閉じた。

 これでつぎに目を開けた時、三茶のマンションの天井が見えたらこれは、いわゆる夢オチだなと。

 また急いで身支度をして、駅で並んで、身体が持ち上がるような田園都市線に身を押し込むんだ。

 それで渋谷駅まで行く。

 そして道玄坂を登って……

 

 忙しすぎて毎日走っていた元の世界と、

 暇すぎて不安になる魔界という異世界。

 元の世界と、あの魔界。

 どっちに、わたしは居たいんだろう。

 ──閉じていた目を、わたしは開けた。

 けれど場所は変わらず、湖畔の裏庭。

 と、言うことは、異世界転生は現実だったんだ。

 スマホの時計も、「10:31」のまま。

 わたしは、仕方なしに鼻をこする。

「ハラ、くくるしかないか……」

 気乗りしないけれど、生き返るための婚活を──。

 そうなると……まもなく魔王が手配した〝マッチング業者〟とやらが来る、十一時じゃないか。

「うわ、ヤッバ!」

 急に、お仕事感がぶり返してきた。

「マジか! なんもしてない……」

 わたしは洗面所に走った。

 鏡の前で髪をとめ、水道の蛇口をひねると、そこに前、鏡に映る自分の姿に…… わたしは、驚愕した。

 ──若返っていた。

 魔王は「いろいろと支度はしておく」と言っていた。

 でも、それは化粧水だけじゃなかったようだ。

 わたしの容姿というか、身体そのものが、女子高生のころに戻っている。

 たしかに昨夜は「腰が痛い」だの「老眼」だの「高血圧」だの言ったけれど、だからと言って、ティーンに戻すのは、ちょっと年齢差別がひどくないかと、ちょっと魔王にムカついた。

 すると気になって、わたしは、前髪の生え際にある傷を確かめた。

 傷跡は、まだ新しい縫い跡として、残っていた。

 水を止めるのも忘れて、わたしは視線を落とした。

 もしかして、昨日、ふたりして事故に遭う直前、ハルトが言いかけたのは、この傷のことだったのかなと。

 

 ──午前十一時。

 玄関のチャイムが鳴った。

 ひとり暮らしの心得で、チェーン錠をしたまま応対する。

 ……が、訪問者の姿を見て、わたしはあまりのファンタジーさ加減に力が抜けた。

 ──ウサギ。

 どう見てもウサギの人が、口をモゴモゴさせながら二本足で立ち、執事服の上だけを着て小脇にカバンを抱えている。

 そのウサギ執事を、裏庭から縁側テラスに案内する。

 祖母セレクトの緑茶を出した。

「あらためまして。わたくしウィスカーと申します。王都で婚活の専門会社を経営しております」

 白ウサギを大きくした体格に、ウサギの赤目が乗っている。

 それが黒い執事服の上だけを着て、耳は白く長く、どう見ても白くて喋るウサギにしか見えない。

 ただヒゲだけは、それがおしゃれなのか、毛先が全部、ダリ風に上向きでカールしている。

 魔王の勅命で、わたしにマッチング相手を紹介するため参上した、とのことだ。

 名刺を受け取りながら、わたしには名刺がないことを思い出して手が落ち着かない。

 しかしウィスカーと名乗ったウサギ執事は、機嫌がよさそうに庭を見回した。

「いやあ、しかし素晴らしいお屋敷ですな。お若いのに大したものだ」

 見た目は完全に縁側に腰掛ける白ウサギ。やや可愛いが、一言一句が、どうしても軽くて胡散くさい。

 わたしは、湯呑みを手に、湖に向かって言った。

「いえ、若くはないんですよ、三十二です」

 そう言うと、ウィスカーは大袈裟にのけぞった。

「まさか! ご冗談を!」

「なかみは大人、見た目はJKってやつです」

 魔王と交わした契約では、この魔界で、わたしはできるだけたくさんの子を残し、あるいは絵を描き、〝創造の喜び〟という〝正のエネルギー〟を限界まで貯めなければならない。

「──でも、事情があって、絵は描けないんです。だから、三年以内に相手を見つけなければいけないんです」

 わたしが語ったあらましに、ウィスカーはうなずいた。

「なるほど。それで相川さまは婚活をお急ぎと」

 すると彼は、カバンの中からクリアファイルを取り出した。

「では、もしよければですが。午後にでもマッチングをご用意いたしましょう」

 なにこのウサギ。仕事が早い。さすが魔王推薦の婚活業者だ。

 あでも、できるだけ相手にはこだわりたい。

「さすがに結婚して…… 子供をとなると、誰でもいいってわけにはいかないんですけど……」

「ごもっともです。お客様を急かすようなことはいたしません。ただ、相川さまのご登録で、当社には男女問わずマッチング希望者が殺到しておりまして……」

 そうなんだ。やっぱり地球の人間って珍しいからかな。

 いや、この機会に魔王へと取り入ろうとしてる、とかかな。

 いろいろとキナくさい想像が頭の中をぐるぐるし、不安も巡るけれど、こっちからすればマッチング相手が多いに越したことがないか。選ぶ自由がふえる。

「──ちなみに、ウィスカーさん?」

「はい?」

「何名さまくらい、わたしとマッチングをご希望なんですか?」

 すると彼は頷き、肉球を舐めてファイルをめくりながら言った。

「……ざっと、三千名ほど、ですかね」

 さ、さんぜん……?!?

 わたしは目が眩んだ。

いや、ちょっと待って、三年で三千人とマッチングって……

 わたしはざっと計算をする。

 となると一日あたり、八人弱と会わなきゃなんないじゃない…… しかも一人あたり一時間で、年中無休の計算でそれって、残業したってこなしきれない!

 ……な、なんだこれ、よく考えたら、もしかして、とんでもないブラックな案件だったのか!?

 でも、そんなわたしに婚活業者のウィスカーは、ピンク色の肉球を見せながら言った。

「──大丈夫です、 相川さま、どうぞおちついて……」

 厳選した相手だけを紹介すると、ウィスカーが胸を張る。

「そこで、相川さまのご希望を本日はうかがいに参ったしだいでございます」

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