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病弱な小鳥:兄の籠、姉の毒
病弱な小鳥:兄の籠、姉の毒
Auteur: 響優香

第一話

Auteur: 響優香
last update Date de publication: 2026-07-30 12:02:35

陽の光に溢れる、爽やかで気持ちの良い午後。

けれど、エルゼはカーテンの隙間から零れる光のせいで、目覚めた瞬間から酷い頭痛でクラクラしていた。

シーツが肌を滑る微かな刺激にさえも、肌が粟立つような酷い不快感を覚える。

王国で産まれ、四歳で両親の死によって魔国の親戚に引き取られたエルゼ。

五歳になったあたりから体調を崩すことが多く、今でも調子の良い日は殆どない。

枕元にはいつの間にか従兄のアルベールが座っていた。

青みがかった白銀の髪は朝日に透け、宝石をそのまま嵌め込んだような深く青い瞳。

微笑みを浮かべエルゼを自愛に満ちた瞳で見つめる様は、まるで天使のように美しかった。

アルベールはエルゼの乱れた髪を優しく梳く。

エルゼの銀糸に光が当たるとうっすらと薄色に光り、柔らかな髪がアルベールの指の間を滑る。

「今日も顔色が悪いね。大丈夫かい? 僕の可愛いエルゼ」

アルベールがエルゼの瞳を覗き込む。

その菫色の瞳は、苦痛に揺らめいていた。

「お、兄様……。身体が、また……おかしいの……」

エルゼは知らない。

アルベールの魔力操作が、エルゼの体内の魔力を掻き乱し、内側からエルゼを傷つけていることを。

体内の魔力を、アルベールは更に強引に掻き乱した。

「あ……ぁ……! ぁ……つい……! おにい、さま……変な感じが、するの……っ!」

「可哀想に……。君の体の中で『呪われた魔力』が暴れて、また、『毒』が溜まっているんだね……。僕が今、楽にしてあげるから」

アルベールは痛ましそうに眉をひそめ、エルゼの震える両手を優しく包み込んだ。

魔力暴走をゆっくりと解除し、同時にエルゼの生命力でもある魔力を、自身の体内へと吸い上げていく。

「ぅ……ん……。んんっ……!」

魔力が抜かれ身体には喪失感と脱力が強まり、徐々にドロリとした快楽が忍び寄る。

エルゼの全身が自分の意思に反して淫らに震え、肌は熱を帯びて赤らんでいった。

「ひ……ぁあ……! んっ……あぁ……!!」

「しっ……静かに。こんなに淫らな声を出して、誰かに聞かれでもしたら……。汚らわしいと判断されて、君は幽閉されてしまうかもしれない。辛いだろうが耐えるんだよ。大丈夫。僕はエルゼの味方だから」

エルゼは羞恥に震え、涙を滲ませながらアルベールを見上げる。

(こんなにいやらしい声を上げてしまうのは、私の「呪われた魔力」のせい……。お兄様だけがこの穢れを吸い取ってくれる……)

アルベールを信じきっているエルゼは、自分を騙し、壊している張本人の胸へと縋る。

「ごめんなさい……お兄様……。こんな魔力を引き受けて、浄化までしてもらって……」

「謝ることはないよ、エルゼ。幸い、僕の魔力とエルゼの魔力の親和性は高いから、そこまで負担ではないんだ。それに、僕はエルゼが元気になってくれるなら、それだけでいいんだよ」

魔力を奪い尽くされ、指一本動かすのも億劫になったエルゼの額に口付けを落とす。

彼の瞳の奥で捕食者のような冷徹な光が翻ったことに、エルゼは気付かない。

「今日はお天気が良いから、エレノアが庭園のお散歩をしてくれるそうだよ。太陽の光を浴びれば、気分も少しマシになるだろう」

「お姉様が……!」

エルゼはアルベールの婚約者、エレノアと会うことをいつも楽しみにしている。

エレノアは優しく聡明で、エルゼはエレノアをお姉様と呼び慕い、エレノアもエルゼを本当の妹のように可愛がっていた。

エルゼはアルベールに抱き上げられ、車椅子へと降ろされる。

その瞬間、エルゼの背筋を鋭い衝撃が突き抜けた。

「あぁぁ……! んんっ……!!」

車椅子には座面に、男性器を模した魔具の”杭”が取り付けられていた。

幼い頃から、これが治療に必要だからと教え込まれているエルゼは、何の疑問もなくその異物を受け入れる。

エルゼがずり落ちないようベルトをしっかりと締め、アルベールが車椅子を押し始める。

車輪と連動した杭が、エルゼの最奥を容赦なく突き上げ始める。

「はぁ……はぁ……お兄様……っ。揺れが……」

「わかっているだろう? 治療のための刺激だよ。ちゃんと我慢するんだ。あまり淫らな声を上げると、幽閉されるかもしれないことを忘れてはいけないよ」

ゆっくりと、だが確実に。

廊下を進むたび、規則正しいピストンがエルゼの思考を白く染めていく。

(声を出さないように……。頑張らないと、お兄様とお姉様に会えなくなってしまうわ……)

やがて、美しく手入れされた庭園に、日傘を差して佇む薔薇が生まれ変わったかのような美しく冷たい印象の美女、エレノアの姿があった。

その髪はバラの花弁を思わせる薄紅がゆるやかにウェーブしている。

「待たせたね、エレノア。エルゼを連れてきたよ」

アルベールが声をかけると、纏っていた冷たい雰囲気が嘘のように、温かな微笑みを浮かべ、車椅子に座るエルゼをその薔薇色の瞳で見下ろす。

「あら、”治療”が捗っているようね。頬の血色がいいみたい」

エレノアは冷たい指でエルゼの頬をそっと撫でる。

その刺激だけで、エルゼは快感に震え、杭を内壁が締め付ける。

「んっ……」

「ふふ。今日も可愛いわエルゼ。アルベール様、後はわたくしに任せてお仕事に行ってらして?」

「それじゃあ僕は行くよ。無理はしないようにね」

アルベールはエルゼの頬に口付けを落とし、去っていく。

「ねえ、エルゼ。わたくしの温室に新種の薔薇を植えたのよ。少し遠いけど見に行きましょう」

「はい、お姉様……。新種の、薔薇……楽しみです」

エルゼは震える声で、どうにか言葉を紡ぐ。

指先が触れた場所からひんやりとした感覚と、それに裏腹な熱い痺れが全身に回っていった。

エレノアはアルベールの姿が消えると車椅子の背後に回り、ゆっくりと押し始める。

エルゼから見えなくなった瞬間に柔和な笑みを消し、その瞳は獲物を観察するような静かで残酷な、愉悦の色だった。

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  • 病弱な小鳥:兄の籠、姉の毒   第二十七話

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