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垢嘗め──アカナメ──

Auteur: 葛葉龍玄
last update Date de publication: 2026-08-12 13:56:38

友達曰く。

 風呂に入っても、体をボディーソープつけて洗わないんだよ。

 臭くないだろう?

 こいつとはちょっと距離を置こうと思っていた矢先、祖父のある言葉を思い出していた。

 垢というのはなにも、体からだけ出るもんじゃない。

 嫌な思い出や、大切なこと、

 肝心なことから溢れる垢もある。

 と。

 そういえばこいつは能天気だが、もしかしたら、嫌な思いとかも全部垢になって流れて行くのかもしれない。

 そこまで思ってから、はたと気付く。

 垢は本来溜まって行くものだ。

 それこそ、垢すりなんてのがあるくらいには。

 しかしこいつはシャワーだけで済ませて、垢なんか落としちゃいない。

 ならば……。

 そう思い、その友達を観察する。

 人との約束を忘れる。

 時間も守らない。

 レポートなんかもよく忘れる。

 人の顔と名前を一致させるのは苦手。

 もし。もし、こいつの垢がたまりまくっていて、なにかがその垢を舐めているのだとしたら?

 その垢だけではなく、心とか記憶とか、そういったものまで舐め取る事に味をしめてしまったとしたら…。

 それからその友人は事故で死んだ。

 山道で、崖から落ちたのだ。

 しかし、不可解なのはブレーキを踏んだ形跡がない、というところだ。

 もしかしたら、友人はブレーキを「忘れた」のかもしれない。

 いや、舐めとられ、食べられ、無くしてしまったのかもしれない。

 垢舐め。

 それはそんなは可愛らしい怪異ではなかったのだ。

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