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第0598話

Penulis: 十六子
「なるほどね、隼人様の事業が潰れたのも、こういう母親のせいかもね」

「でも奥さんがあんなに優秀なら、また一からやり直すのも難しくないんじゃない?」

観客たちのそんな囁きが耳に入ると、青葉の顔色は一気に引きつり、鞄を掴んでそそくさとその場を後にした。

――これ以上ここにいたら、穴があったって入りたいぐらいだわ!

「警備員さん、この卑劣な行為をした者を会場から退場させてください。試合を続行します」

審査員の一人が鋭い視線を雪菜に向けながら、冷たく命じた。

雪菜は唇を噛みしめ、両手を強く握りしめたまま、渋々と立ち上がった。

「触らないで、自分で出ていくわ!」

そう言い放ち、警備員を突き飛ばすようにして、しばらく瑠璃を睨みつけた後、悔しそうにステージを去っていった。

隼人は彼女が去るのを見届けたあと、黙って瑠璃の手をそっと握った。

「千璃ちゃん……なぜ、あんなに酷いことをされたのに、俺に何も言ってくれなかった?」

瑠璃は静かに微笑んだが、その声にはどこか冷たさが滲んでいた。

「女は、何でも男に頼る必要なんてない。まして、昔私を裏切った男になんて、もっと頼る気はないわ」

「……」

その言葉と同時に、彼女は隼人が握る手を迷いなく引き離した。

一瞬にして、隼人の表情は凍りついた。心臓がどこかへ落ちたような感覚が彼を襲った。

「千璃ちゃん?」

隼人が静かに呼びかけるも、瑠璃は一言も返さず、颯爽と背を向けた。

観客たちは目の前の異様な空気にざわめいた。

えっ、何?ケンカでもしたの?

さっきまであんなにラブラブだったのに……

隼人は呆然とその場に立ち尽くしたまま、意識が戻るまでしばらくかかった。

彼女は――また人格が変わったのか?

いや、違う。

もしそうなら、あれほど冷静にステージへ戻って試合を続けることなど、できるはずがない。

隼人は、ずっと理解できなかった。全ての参加者がデザイン画を発表し、投票の結果が出て――瑠璃が圧倒的な票数で優勝したその瞬間、ようやく自分の心臓が動き出し、呼吸も戻った気がした。

彼は、ステージ中央に立つ瑠璃を見つめた。

彼女は二位、三位のデザイナーたちと共に壇上に立ち、スポットライトに照らされていた。

その姿はまるで夜空に輝く星のようで、気高く、美しく、誰の目も奪う存在だった。

流行中の若手俳優が彼女に
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