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第16話

Auteur: 絵空事
人が多かったので二台の車に分かれて行くことになった。

琴子と緑は季之の車に乗り、他の人たちはタクシーを拾った。

琴子は車酔いしやすいので、助手席に座り、後ろの席にいた緑は外を眺めながら口にした。「さっきの人、めちゃくちゃかっこよかったよね。ちょっとやつれてる感じはあったけど、それでも隠しきれないイケメン感。連絡先欲しいなあ」

琴子は一言も返さなかった。季之はその沈黙に気づき、後ろへ声を投げる。「黙っとけよ。君がかっこいいって思うやつ、百人は無理でも九十人くらいはいるだろ。目どうなってんだ」

途端に緑の注意はそちらへ向き、知樹のことなど忘れて、季之との言い合いに夢中になる。

琴子は窓の外を流れていく木々の影を見つめながら、頭の中では先ほどの知樹の声が何度もよみがえっていた。あの声には驚きの色がなかった。つまり偶然ではない、彼は明らかに自分を探してきた。

でももうこんなに時間が経っているのに、彼と夕菜はもう結婚しているはずだ。なら、なおさら自分を探す理由なんてないはず。

考え続けても答えは出ない。どうせ自分には関係ないこと、と琴子は途中で思考を放り出した。

その後の食事も琴
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    人が多かったので二台の車に分かれて行くことになった。琴子と緑は季之の車に乗り、他の人たちはタクシーを拾った。琴子は車酔いしやすいので、助手席に座り、後ろの席にいた緑は外を眺めながら口にした。「さっきの人、めちゃくちゃかっこよかったよね。ちょっとやつれてる感じはあったけど、それでも隠しきれないイケメン感。連絡先欲しいなあ」琴子は一言も返さなかった。季之はその沈黙に気づき、後ろへ声を投げる。「黙っとけよ。君がかっこいいって思うやつ、百人は無理でも九十人くらいはいるだろ。目どうなってんだ」途端に緑の注意はそちらへ向き、知樹のことなど忘れて、季之との言い合いに夢中になる。琴子は窓の外を流れていく木々の影を見つめながら、頭の中では先ほどの知樹の声が何度もよみがえっていた。あの声には驚きの色がなかった。つまり偶然ではない、彼は明らかに自分を探してきた。でももうこんなに時間が経っているのに、彼と夕菜はもう結婚しているはずだ。なら、なおさら自分を探す理由なんてないはず。考え続けても答えは出ない。どうせ自分には関係ないこと、と琴子は途中で思考を放り出した。その後の食事も琴子は上の空だ。食べ終わり、車に乗ると、季之は先に緑を送り届け、そのまま別の方向へ走り出した。その時彼女は、これが自宅へ帰る道ではないことに気づいた。琴子は不思議そうに尋ねる。「どこへ行くの?」季之は片手でハンドルを握りながら言う。「気分転換だ。最近君、ちょっと張り詰めてるみたいだから」琴子は一瞬考えた「そうかな?」だが思い返せばその通りだった。長いブランクの後、喉の調子もやっと戻ったばかりで、大会前は失敗を恐れて毎日練習ばかりしていた。まさか彼に気づかれていたとは。琴子の胸に温かさが広がる。季之が連れて行ったのはカートクラブだ。店じまいの時間にもかかわらず、顔なじみらしく中へ通してもらえる。何周か走るうちに、琴子は確かに心が軽くなっていくのを感じる。再会した知樹のことで押し潰されそうだった気持ちも、すっかり消える。終わった後、彼は家まで送ってくれた。降り際、琴子はふと口を開いた。「今日はありがとう」季之は両手をハンドルの上で組み、身を預けるようにして横顔を向けた。「君は僕の患者だ。責任持つのは当然だろ」琴子は俯いて小さく笑った。心の問題は彼の専門

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