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第866話

Author: 栄子
「お母さん、もう搭乗手続きが始まるから、切るね」

「大輝、ちょっと待って!もしもし、もしもし......」

スマホから、通話終了の音が聞こえてきた。

大輝は電話を切った。

若葉は怒りで震え、もう一度電話をかけ直したが、留守番電話に切り替わってしまった。

「このバカ!」

若葉は胸を押さえながら、ソファに座って新聞を読んでいる隼人の方を向いた。

「大輝ったら、真奈美が入院しているっていうのに、海外に行くなんて!これじゃ、彼女が離婚を切り出すのも当然よ!」

隼人は老眼鏡を外し、新聞を脇に置いて、妻の方を見た。「あいつの性格は今に始まったことじゃないだろ。真奈美はいい子だが、二人とも気が強いから、一緒に暮らせば衝突するのは避けられないさ」

「じゃあ、大輝のせいじゃないって言うの?」

それを聞いて、隼人は背筋は一瞬ぴくッとして、慌てて若葉のそばに行き、彼女の肩を抱きながら言った。

「そんなこと言うつもりはないよ。夫婦喧嘩は、妻を建てるのが当たり前だ。ましてや妻が病気で、助けが必要な時に、どんなに喧嘩をしても、まずは妻の体を第一に考えるべきだ。その点では、大輝は確かに悪かった。真奈美が離婚を切り出すのも無理はないだろう」

「ふん、これだから石川家の男は!」若葉はますます腹が立ち、夫を突き飛ばしてソファに座り込んだ。「三人産んでも、結局娘には恵まれなれかった。息子なんて私に苦労ばかりさせるんだから!」

「落ち着けよ。子供には子供の考えがある。俺たちの時代の考えが、今の若い世代に通じるとは限らないんだ」

隼人は若葉の隣に座った。「大輝も大人になったんだ。俺たちが口出しできる年齢じゃない。それに真奈美にもちゃんとした考えがあるだろう。もし彼女が本当に一緒にやっていけないと思ったら、無理強いはできないよ」

その言葉を聞いて、若葉は急に力が抜けた。

「哲也はどうなるの?せっかく両親と暮らせるようになったのに、もし離婚したら、彼にとってまたひとり親になってしまうじゃない......」

「今は離婚しても共同親権で子供を育てる夫婦も多い。彼らがどうなろうと、哲也はいつまでも二人の子供であり、石川家の子供だ。離婚で変わることはない」

隼人は妻の手を握り、軽く叩いた。「哲也はもう8歳だ。賢い子だから、ちゃんと話せば分かってくれる」

若葉は大きくため息をついた。
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ウサコッツ
もう裁判してでも離婚したほうがいい どんな事情あっても 1人に多額の金使う理由がない 結局愛人作って 海外旅行でしよ 出張とか大嘘
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