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第45話

Author: 連衣の水調
言葉の端々に、侮蔑の色が隠されることはなかった。

どうして彼らはここまで冷酷でいられるのか。

自分は人間であって、感情を持たない玩具なんかじゃないのに。

なぜ胤道に従うことが当然だと思われているのか。

ただかつて彼の妻だった、それだけの理由で?

静華は、痛みの果てに涙すら流れなくなっていた。

目には虚無だけが広がり、その闇が彼女の存在を飲み込もうとしていた。

けれど、蒼真がすでに暴行を受けているかもしれない――そう思うと、静華の指先がかすかに震えた。

彼女は胤道の性格を熟知していたのだ。

そう思いながら、座席の下に手を伸ばし、スーツケースから一本のナイフを取り出す。

そして、不意にその刃先を自らの喉元に向ける。

ガードたちはそれを見て、目を見開いた。

「な、なにしてんだ!それ捨てろ!」

二人は慌てて車のドアを開ける。

「近づかないで!」

静華は刃を喉に押し当て、切り傷をつける。

血がぽたぽたと落ちる。

彼女の目は見えないはずなのに、その瞳の奥には狂気に近い決意が宿っていた。

少しでも近づけば、今にも喉を掻き切る――その気迫が伝わった。

狭い車内が、逆に彼らの動きを封じていた。

静華は歯を食いしばりながら言う。

「今すぐ彼らを止めさせて、野崎を呼んで」

ガードたちの顔色は真っ青になった。

静華が死んだら、彼ら自身がどうなるか分からない。

「わ、わかった!動かないで!今すぐ呼ぶ!」

一人がすぐさま駆け出して行き、ほどなくして胤道が駆けつけた。

車内の様子を見た瞬間、怒りが爆発する。

「お前、そんなに死にたいのか!」

怒声とともに肩が震える。

彼女の喉には深い傷が刻まれていたのに、眉一つ動かさず、ただ彼女自身を人質にして自分を脅すため――それが許せなかった。

静華の唇は真っ青で、目元は赤く腫れていた。

「野崎、お願いだから……桐生を放して。彼とは何もないの、彼を行かせて……そしたら、私が一緒に帰る。あなたが望むなら、死ぬことだってする……」

話すたびに、刃先が小刻みに震え、傷口がさらに開いていく。

血が滴るたびに、胤道の目に怒りが燃え上がる。

「いいだろ!」

拳を握りしめたまま、彼はガードマンに怒鳴りつけた。

「まだ突っ立ってんのか!すぐに手を離せ!あの男を追い出せ!」

命令が下ると、ガードマンたち
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