Partager

第230話

Auteur: 花野めい
「そんなことないと思う」

三久は思わずそう口にしていた。

言い終えてから、自分の口ぶりがやけに自信に満ちていたことに、ふと戸惑いを覚える。

「まあ、そうよね。あなたの元お義母さん、村上のことをあんなに気に入ってるんだもの。千歳がどれだけ浅はかでも、妻の座は安泰でしょ」

梨々香はご飯を頬張りながら、もごもごと言った。「ま、酒井とは幼馴染みでもあるし、この分だと村上が酒井の妻の座に就くのは、もう決まったようなものね」

三久は口元まで運びかけた箸を止め、梨々香をちらりと見た。

「ご飯食べようよ。そんな気分の悪くなる話、もうおしまいにしよう」

梨々香は言葉を呑み込み、内心で毒づいた。そんなに気にするってことは、まだ由樹に未練があるってことじゃない。

心が完全に冷めきったときこそ、本当の終わりだ。

「はいはい、食べる食べる。あとでお腹いっぱいになったら、蒼汰を連れて公園でも行こうか」

三久は梨々香に肉を取り分けてやった。「ちゃんと食べて栄養つけなよ」

梨々香はため息をついた。「まったく、復帰したばかりで、まだ全然体が慣れないわ。体力がもたない感じ」

「この仕事、大変だもん
Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application
Chapitre verrouillé

Dernier chapitre

  • 社長の子じゃありません――でも、逃がしてもらえない   第254話

    出てくるのがあまりに急で、しかも周りが目に入っていなかったせいで、温子はそのまま三久にぶつかりそうになった。幸い、梨々香が三久のすぐそばにいたため、とっさに支えることができ、三久は壁に激突せずに済んだ。「何するのよ!」梨々香は三久を支えながら、鋭い声を上げた。「そんなに慌てて、何かやましいことでもあるの?」「私……っ」温子はスマホをポケットにしまいながら言った。「あっ、お医者さんからの電話かと思って。逃したら大変だから」三久は梨々香に支えられ、ようやく体勢を立て直したものの、表情は自然と険しくなっていた。「もう入院の手続きは終わったのね。お医者さんは何て?手術はいつになりそう?」矢継ぎ早の問いに、温子の動揺はいっそう色濃くなった。彼女は愛菜に掛け布団をかけ直しながら、目を伏せた。「まだ分からないの。お医者さんからの連絡待ちで。それに、お金もまだ払えてなくて。保険外だからね、手術費用があと四百万円足りないのよ」「あと四百万円も!?」梨々香の声が鋭くなる。「なんで見積もりよりそんなに増えてるのよ!?」温子が愛菜に布団をかけ終えたところで、愛菜はそれを押しのけ、「暑い」と口を尖らせた。温子は愛菜を軽く睨みつけ、そのまま口調も刺々しくなる。「この子がまだ幼いせいで、手術が難しく、危険も大きいって医者が言うのよ。有名な先生にお願いしないといけないんだから。あなたたちがどうしても助けたいって言うんでしょう。この子の命を救うには、それだけお金がかかるってわけよ」「もういいわ」梨々香が遮った。「あなたが払うわけでもないのに、余計なこと言わないで」温子は口を動かしかけたが、それ以上は何も言わなかった。三久はベッドのそばへ歩み寄り、愛菜の黒く澄んだ瞳と目を合わせた。まだ幼く、生死の意味を理解していないのだろう。その眼差しはどこまでも澄み切り、無垢な生命力に満ちていた。温子は何か理由をつけて席を外した。どこか不審な様子だった。三久と梨々香は、しばらく愛菜の相手をして遊んだ。「ねえねえ、あたしの病気って、すごくお金がかかるんでしょ?」愛菜が瞬きをしながら二人を見上げる。梨々香は愛菜の頭を撫でた。「大丈夫、あたしたち、ちゃんと稼げるから。安心してゆっくり休んでて。ふっくら太って元気になってくれれば、お

  • 社長の子じゃありません――でも、逃がしてもらえない   第253話

    デスクの前に座った男は、椅子の背にもたれかかっていた。白いシャツの袖口が乱れている。眉間には深い皺が寄り、指に挟んだタバコがゆっくりと燃えていた。灰皿には、まだうっすら煙を上げる吸い殻が何本も転がっている。哲朗が入ってきたのに気づくと、由樹は灰を落とし、少し掠れた重い声で言った。「話せ」「早坂さんは子会社でずっと順調にやっていて、あちらの上層部の方々とも……」「要点だけ言え」由樹が苛立たしげに遮る。「……早坂さんは妊娠しています。二十二週です」哲朗は一気に言い切った。執務室は、水を打ったような静けさに包まれた。由樹は吸い殻を灰皿に押しつけると、すぐにまたタバコの箱を手に取り、一本くわえた。ライターの揺らめく炎が揺れて、彼の暗い瞳の奥に一瞬だけ映り込んだ。深く煙を吸い込み、いっそう低い声で言う。「誰の子だ」哲朗は視線を落とし、答えを察していながらも重い口を閉ざした。「調べろ。この子が誰の子か、はっきりさせろ!」由樹の額に、青筋が浮いているのがうっすらと見えた。哲朗は思わず口にした。「早坂さんはもう社長と離婚していますよね。妊娠して子供を産むことは、何もおかしなことではなく、そこまでする必……」言い終わらないうちに、由樹の鋭い視線が刃のように飛んできた。哲朗はとっさに口をつぐんだ。「……いえ、むしろ徹底的に調べるべきでしょう。右腕として働いていながら、妊娠という大事なことを報告すらしなかった。まさに社長をないがしろにしていたということですから」哲朗は一度言葉を切ると、何とか取り繕うように続けた。「三日以内に、あの子の父親が誰なのか突き止めろ。できなければ、百栄グループから出ていってもらう」由樹に仕えてこれほど長いが、こんなに理性を失った由樹を見るのは初めてだった。それだけ、三久が誰の子を宿しているのか、由樹がどれほど知りたがっているかが見て取れた。哲朗は執務室を出て、重い足取りで自分のオフィスへと戻っていく。たとえあの夜、由樹と三久が共に過ごしたことを知らなかったとしても、この件は調べれば調べるほど隠しようがない。結局は、事実をそのまま由樹に報告するしかないだろう。だが、どう伝えるか。その報告の結果を思うと、哲朗は頭を悩ませずにはいられなかった。……初夏の西戸市は

  • 社長の子じゃありません――でも、逃がしてもらえない   第252話

    「降りてきてよ。隣のモールにもうひとつアイス屋さんがあるから、また買ってあげる。ただし、小さいのだけね」梨々香が歩み寄ってきて視界を遮り、車の窓を二度ノックした。三久が降りてこないのを見て、梨々香はドアを開け放ち、腕を引いて促した。不意をつかれて車から降ろされた三久は、梨々香の肩越しに、はっとしてその場所へ目をやった。マンションの敷地の隅にある木陰。さっきまで由樹が立っていた姿が、まざまざと蘇る。以前にも一度、由樹がここへ迎えに来たことがあった。凍てつくような寒さの冬で、枯れ枝には白く霜が降りていた。黒いウールコートを着た由樹が、そこに立って三久が降りてくるのを待っていた。一瞬、あの記憶と目の前の光景が重なった。けれど、木陰にあったはずの人影は、もう消えている。木々の葉が茂り、影を落として、あたりは少し薄暗い。由樹なんて、どこにもいない。「ちょっと、何見てるの?」一点を見つめたまま動かない三久に気づき、梨々香が顔の前で手をひらひらとさせた。三久ははっと我に返り、小さく首を横に振った。「ううん、何でもない。今、なんて言った?」「近くのモールでアイス買ってあげるって言ったの」梨々香は三久の視線をたどり、あの木の下へ目をやった。「もういいわ、それより少しお腹がすいたから、ご飯食べに行こう」三久はそう言って、車に乗るよう促す。言うが早いか、三久はそそくさと車に乗り込んだ。梨々香はドアを閉め、運転席へ回りながら、もう一度木陰へ視線を投げた。年月を重ねた太い幹。その陰から、黒っぽい上着の裾がちらりと覗いていたのだ。梨々香はドアを開ける手を一瞬止め、瞳に驚きの色を浮かべたが、すぐに何事もなかったように運転席に乗り込んだ。「出発」車を敷地から出しながら、バックミラー越しにその木を見やる。カーブを曲がる瞬間、木の陰にはっきりと人が立っているのが見えた。引き締まった長身の体を幹に預け、片手をポケットに突っ込み、その腕には黒いスーツの上着を引っかけている。もう片方の手にはスマホを持ち、誰かと通話していた。「小林。この一年の三久の動きをすべて調べ上げろ。どんな些細なことも漏らすな」「早坂さんについてですか?」哲朗は驚きを隠せない。「社長、何かあったんですか」由樹の目に暗い翳がよぎる。「三

  • 社長の子じゃありません――でも、逃がしてもらえない   第251話

    人の気配がないことを確かめ、三久はそっとドアを少し開けた。「ジャジャーン!」そこからひょっこりと顔を覗かせたのは、梨々香だった。両手にはアイスクリームをひとつずつ持っている。「食べる?」「なんで来たの」三久はドアを大きく開け、アイスクリームを受け取った。「これ、食べちゃダメって言ってなかったっけ」「食べ過ぎなきゃ平気よ。たまにならね」梨々香は部屋に入るなり、三久のスーツケースを引き寄せた。「大きなお腹で一人荷造りなんて、見ていられないわ。ほら、家まで送ってあげる」そう言って、早く靴を履くようにと目で促す。三久は靴を履き、アイスクリーム片手に、梨々香の後について階段を下りた。一口、また一口。ひんやりとした甘さが口の中でとろけていく。三久は目を細め、心底満足そうな顔をした。「蒼汰とたっぷり昼寝したから、今は元気いっぱい。あとでどこかご飯でも食べに行かない?」梨々香は三久の荷物をトランクへ積み込む。三久はアイスをひとすくいして、梨々香の口元へ差し出した。「私はいいわ。そうちゃんが梨々香の顔を見たら、また騒ぎ出しちゃうから」「ヘルパーさんが車の中で見ていてくれてるから平気よ」梨々香は後部座席へちらりと目をやった。窓越しでは、中の様子まではよく見えない。ただ、人影が揺れているのがぼんやりと分かるだけだ。「食べ終わってから乗って。じゃないと、あの子がまたねだっちゃうから」梨々香は荷物を積み終えると、三久のアイスを受け取り、大きく頬張った。三久も負けじと食べるペースを上げる。「あとで、どこ行くの」「うちの近くのモールに新しいレストランができたの。雰囲気も悪くないみたいだから、あとで覗いてみましょ」梨々香がちらりと三久を見る。「引っ越したら、こっちのアイスとはもうお別れね」引っ越しという一言が、三久の胸にふっと暗い影を落とした。由樹からは、まだ何の返事もない。もう一週間近くになるのに。そんなことを考えていた矢先、スマホが鳴った。由樹からだった。三久はアイスを梨々香に預け、「しーっ」と合図する。「社長」電話に出た瞬間、思わず背筋が伸びていた。電話の向こうは、しんと静まり返っている。数秒待ち、画面を確かめる。通話は切れていない。もう一度呼びかけた。「社長?どうかしまし

  • 社長の子じゃありません――でも、逃がしてもらえない   第250話

    由樹の鋭く整った顎の輪郭は強張り、テーブルの縁に置いた手には怒りで筋が浮き上がり、指先はまだかすかに濡れていた。「お前が今、外で会ってた相手は誰だ」龍太郎は彼の向かいにゆっくりと腰を下ろした。「ああ、忘れてた。お前の秘書だよ。呼んで挨拶させればよかったな」由樹は一瞬、息を呑んだ。わずかに寄っていた眉根が、次の瞬間、苦痛に歪んだ。――三久?妊娠二十二週目?胎児の発育がやや小さめ?妊娠後期は絶対に夫婦生活を控えろ?妊娠に関する知識など、仕事一筋の由樹には一切なかった。この会話は、耳に馴染んだ三久の声であること以外、すべて未知のものだった。あまりに未知すぎて、それが自分のよく知る三久だとは到底思えなかった。ただ声が似ているだけの、別の妊婦なのだと。けれど、あれほど聞き慣れた声を、聞き間違えるはずがあるだろうか?「仕事の都合で、地方に転勤することになったらしいな。今日は、妊婦健診の診療情報をわざわざ取りに来たんだよ」龍太郎は由樹が倒したカップを起こし、静かにコーヒーを注ぎ直した。「彼女の旦那さんに会ったことはあるか?俺は診察で何度か会ってるけど、旦那さんが付き添ってきたことは一度もない。事情を知らない人が見たら、夫のいないシングルマザーなのかと思うだろうな」鋭い刃物で探るようなその言葉が、一つ一つ由樹の胸を深くえぐった。由樹の薄い唇は一直線に引き結ばれ、静まり返った周囲の空気が、彼の心をますます激しく揺さぶった。彼は無言で立ち上がり、上着をつかんで、そのままその場をあとにした。遠ざかっていく革靴の足音は重く、規則正しく、やがて完全に聞こえなくなった。龍太郎は、由樹が座っていた空の席をじっと見つめたまま動かなかった。自分にできる、友人としての償いは、これが限界だ。カフェを出た三久は、迎えのタクシーに乗り込むと、ようやく肩の荷が下りたような気がした。龍太郎の言葉の数々を、頭の中でじっくりと反芻する。どれも一見、普通で医師らしいのに、どれも何かがおかしい。彼女は半分開いていたあの引き戸と、奥の部屋から聞こえた物音を思い出すたび、ますます心がざわつくのを感じた。帰る途中、ちょうどよく梨々香から電話がかかってきた。家に着くのを待ちきれず、三久は龍太郎との奇妙な会話を手短に伝えた

  • 社長の子じゃありません――でも、逃がしてもらえない   第249話

    個室は手前の応接スペースと、その奥の小部屋に分かれていた。奥へ続く引き戸は、半分ほど開いたままになっている。龍太郎は手前のテーブルに座り、慣れた手つきでコーヒーポットを傾けていた。「秦先生」三久が中へ入ると、龍太郎は顔を上げた。「わざわざ遠いところまで来てもらって、すみません」そう言って、向かいの席を勧める。テーブルの上に書類が見当たらず、三久は遠慮がちに尋ねた。「お休みのところ、すみません。お願いしていた書類をいただけますか?」「悪い。うっかり車に置いてきてしまった。今、取りに行ってもらっている」龍太郎は眼鏡を押し上げると、三久の前に置かれたカップへ、ゆっくりとコーヒーを注いだ。「少し待っていてもらえるか。デカフェなので、妊娠中でも大丈夫だ。それに、早坂さんに少し話しておきたいこともある」そのとき、半開きになった引き戸の向こうから、かすかな物音が聞こえた。奥の部屋に、誰かいるらしい。おそらく龍太郎が先に呼んでいた別の相手だろう。三久は思わず眉をひそめたが、しばし考えてから、勧められるままに腰を下ろした。「ありがとうございます、秦先生」「早坂さんは、今妊娠二十二週目くらいだよな。いわゆる安定期に入っているが、これからは俺の診察を受けなくなるとしても、担当医として一言だけ伝えておきたくて。妊娠後期は、何があるか分からないので油断できないから」龍太郎は細かい点まで、丁寧に説明していった。「今のところ胎児の発育が標準よりやや小さめなので、後期はしっかり栄養を取って、絶対に無理をしないように。できれば仕事を完全に休んで、妊娠後期を心身ともに穏やかに過ごすのが望ましい」これらのことは、三久もすでに承知していた。おそらく、店員が書類を持ってくるのを待つ間、ただ向かい合って黙っているのが気まずかったのだろう。それで龍太郎は、場を持たせるためにあれこれ話を続けているらしい。三久はうなずきながら相槌を打った。「分かりました。ご丁寧にありがとうございます」「あともう一つ、妊娠後期に特に気をつけるべきことを話しておくけど」龍太郎はコーヒーを一口すすり、しばらくしてからカップをことりと置いた。「早坂さんの旦那さんに直接お会いしたことはないが、これだけ若いなら、きっと旦那さんも元気な方だろう。妊娠後期は、

  • 社長の子じゃありません――でも、逃がしてもらえない   第8話

    宴会場では、由樹が動くたびに自然と人の輪ができた。財界の重鎮たちと和やかに言葉を交わしながらも、次々と彼のもとへ挨拶に訪れる客が途切れることはない。「由樹さん」千歳が横に歩み寄り、親しげに腕を絡めてきた。由樹の腕が一瞬だけわずかに固まったが、すぐにふっと力が抜けた。「ちょうどよかった、紹介しよう。こちらは金子(かねこ)会長だ」千歳は由樹にぴたりと寄り添いながら、愛くるしい笑顔を向けた。「金子様、父からお噂はかねがね伺っております。今日ようやくお会いできて光栄です」「千歳ちゃんが小さい頃、抱っこさせてもらったことがあるんだよ……」金子会長は千歳と和やかに言葉を

  • 社長の子じゃありません――でも、逃がしてもらえない   第7話

    三久は足を止めた。静かに息を飲み込んで、表情が少しずつ固まっていく。「どういうことですか?」哲朗には事情がまったくわからない。「早坂さんが本社に戻りたいってことじゃなかったんですか?」三久はかぶりを振った。「違います。退職を申し出に来たんです」哲朗が目を丸くした。「退職?なぜですか!」「個人的な理由です」三久は端的に答えた。「本社への異動、撤回できますか?」「撤回するにも社長の許可が必要ですし……」哲朗は困り顔だ。三久はこめかみを指で押さえた。じわじわとした絶望的な無力感が込み上げてくる。哲朗がなだめるように言った。「年末は会社が一番

  • 社長の子じゃありません――でも、逃がしてもらえない   第6話

    依果は口では「わかった」と言いながら、部屋を出ていく摩美の背中に向かって、思いきり舌を出した。――千歳が由樹の腕を取ってダイニングへ向かう残酷な場面が、三久の頭から離れなかった。あれは、見るんじゃなかった。帰り道、冷たい夜風を浴びながら少し正気を取り戻した三久は、途中の店で温かい食事を食べてからアパートへ帰った。それから数日、由樹と千歳に関する華々しいニュースが連日のように報じられていた。もどかしかったのは、肝心の退職手続きにまだ何の動きもないことだ。人事部で顔のきく大島沙織(おおしま さおり)に電話をして事情を聞いてみた。驚いたことに、沙織は三久が退職を申し出

  • 社長の子じゃありません――でも、逃がしてもらえない   第5話

    三久は思わずダウンジャケットの前を合わせ、まだ平らな腹を隠した。「出ていたよ。年のせいか、今年は特に寒くて」席に着きながら、さりげなく話題をそらす。「私のパソコンを使いましょうか?車から取ってきますが」「俺のを使え」由樹がノートパソコンを三久の前に滑らせた。スクリーンセーバーには古い写真が映っていた。男女の後ろ姿。男のほうは一目で由樹だとわかる。女の体型は、千歳に似ていた。三久はそちらを見ないようにしてファイルを開き、機械的に議事録を打ち始めた。仕事の上では、三久と由樹の呼吸は完璧に合っていた。彼が一つ視線を向ければ、どの項目を指摘して後で重点的に確認すべき

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status