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18.戻ってきた日常

last update تاريخ النشر: 2025-08-16 17:00:06

週明けの部活。俺たちは部室にそろって顔を出し、前回の試合の反省を活かしながら、練習を繰り返していた。

奥の席に小神野先輩。その手前に俺。週末は色々あって恋人モードだった先輩も、部活が始まればいつものokaPに戻るわけで……。

イヤホンからは俺を呼ぶ「神谷っ!」という怒声が聞こえていた。

「お前っ、今なんで先に壁出さなかったんだよっ! ルーク使ってんだろっ!?」

「いや、そもそも出すつもりなかったですよっ! 敵のモブ兵士が来たから、分断するために使っただけです。……先輩こそ、なんで俺が壁出す前提で動いてんですかっ!!」

「こういうとき、いっつも出すだろうがっ!!」

「出しませんよっ! もうちょっと、俺の動きよく見て覚えてくださいっ!!」

いつにも増して言い争っている俺たちの隣で、玲先輩がヘッドセットを外しているのが見えた。

「あ〝ぁ~~~、耳が痛すぎて、もう無理! ミュートにするか」

「ねーねー、何かあったの? あのふたり。何か聞いてる~? 玲」

「知らねぇ!」

「先週、玲に言われたのもあって、色々話し合ったらしいぞー」

萩原先輩があいだに入って、小神野先輩から聞いたことを説明していた。

「へぇ~、そうなんだ。まぁ、プレー自体はあのふたりらしくなってきたからいいと思うんだけど……。それにしても、うるさいよね」

「ああ。前の3割増しでうるさい」

「本音で話し合った結果、意思疎通は図れるようになったけど……その分、言い合うことも増えたんだって」

「まじか」

「嘘でしょー……」

「耳いてー」

マイクが音を拾っていて、彼らの会話は俺たちにもばっちり聞こえていた。

「聞こえてんぞ、お前らー」

小神野先輩が小言をこぼすと、防衛隊3人は「さぁー仕事だ、仕事」とわざとらしく言って、それぞれの持ち場に戻る。

この試合は俺たちの言い合いこそ多いが、ゲームの進行的は順調だった。落とすべき拠点はあとひとつ。

複雑なマップの工業団地。制圧すべきフラッグの近くでショートカットしようとした先輩に、俺は声を上げた。

「……っ、先輩! そこ、さっき地雷置きましたよっ!!」

「知ってる」

ギリギリのところをさらりとかわし、華麗に戦場を駆けていく先輩のヴァイパー。

「お前の方こそ、俺のことよく見てろよな!」

「……っ!!」

その皮肉っぽい笑い方が、ムカついて仕方ない。

でも、ゲームをしているときの先輩は何より楽しそうで……。

(いい顔して笑ってんのは……俺と一緒にゲームしてるからってことで、いいのかな)

「最後のフラッグ取れました! お疲れさまでしたー」

「ナイスゲーム」

「ナイスー」

仲間と声をかけ合っていると、今回もキル数トップだった先輩が、ドヤ顔で「俺のおかげ」と囁いてきて――。

「何言ってるんですか……今回のMVPは俺ですよ。見ました? モブ兵士だけで1拠点制圧したの」

「撃破した数じゃ俺の方が上だし」

「……ちょっと、表出ましょうか」

「呼び出す手間が省けたな」

バチバチと火花を散らしていたら、それを見かねた部長がやってきて――俺たちの肩に手を乗せた。

「お前らいい加減にっ……!」

とっさに振り向く。先輩と俺の声が重なった。

「「仲良くならなくてもいいから、意思疎通できるようになれって言ったの、お前だよな!?/部長ですよねっ!?」」

「共通の敵ができたときは、ちゃんと共闘するんだなぁ……」

チームのまとめ役、萩原先輩が平和そのものみたいな顔で笑っていた。

「まぁ、それならいっか」

「うっ……俺の耳が……」

渋い顔をする玲先輩にこのあと、しっかりと謝って……俺たちは次の試合に向けて、練習を続けた。

◇◆◇◆◇◆◇

「神谷、帰るぞー」

「はーい。あ、お疲れさまでーす」

ふたりで部室をあとにする。隣に並び、話しながら帰る途中でさっきのゲームの話になった。

「今日のあの場面……俺は神谷がここで絶対に壁出すって思ったのに……。本当、お前の考えてることってよくわかんねー」

「先輩の考えてることだって、わかりませんよ。地雷置いてるのに、あんなギリギリのところ……普通、通ります?」

「あそこが最短ルートなんだよ。地雷避けると、遠回りになる」

「あー……たしかに、言われてみれば」

「そういう神谷は、なんで」

「俺は敵のモブ兵士が来るってわかってたんで、そっちの対応を考えてました」

「なるほどなー……」

考えていることはまだ、相手に聞かないとわからないことも多い。

これからも少しずつ、溝を埋めていく作業が必要なんだろう。

「帰ったら、練習だな」

「ですね。……あ、夕飯何にします?」

「……ハンバーグ」

「前に作ったやつが、まだ冷凍庫にありましたね。じゃ、ロコモコ丼にでもしましょうか」

「ロコモコ……?」

「ご飯の上にハンバーグと目玉焼きを乗せたやつです」

「おおっ……!」

(先輩が好きそうな食べ物なら、最近は手に取るようにわかるのにな……)

俺は心の中で苦笑する。

「予選の第3戦目は……今週末か」

「次は圧勝しましょう」

「だな。見返してやらないと」

まだ明るい空の下をふたりで歩き、買い物をしてから帰った。

同じ目標をかかげて、練習と対話を繰り返す。

予選の第3戦はすぐにやってきた。攻撃チームの足並みもようやくそろったらしく、本領を発揮した俺たちは無事に勝利をおさめることができた。

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  • 神ゲーマーふたりは今日もオンライン   10.復帰第一戦

    朝起きて先輩と登校し、部活が終わったらそのまま一緒に帰宅。家では軽く練習をしてからご飯を作り、また練習。操作キャラクターやマップ、他のプレーヤーについて勉強する時間も作り、ランニングや筋トレなどのフィジカルのトレーニングも一緒にこなした。そんな生活が1週間ほど続き……フレンドリーファイアが7回に1回になったタイミングで、俺たちは部活に復帰した。同じチームの3人が、ゲームの合間に手を振って迎えてくれる。「ふたりとも、おかえり~」「意外と早かったな」「もっとかかると思ってたわ。もう同士討ちごっこは終わ

  • 神ゲーマーふたりは今日もオンライン   9.スキル【家事】

    朝起きて身支度を整え、先輩と一緒に学校まで行く。授業が終わった、放課後。いつもなら部活に出ている時間だったけれど、今はそろって出禁にされている状態だ。俺たちはいったん先輩の部屋に戻り、なんとかチームで練習できないかと苦心していた。他の先輩方にSNSのグループチャットでメッセージを送り、オンラインで参加させてもらえないかとお願いをする。『いや、無理だろ。部長に見つかったら出禁にした意味ないって言われるし』『それに、ふたりともまだ同士討ちの最中なんじゃない?w』『とりあえず、それ直してから参加した方がいいだろうな

  • 神ゲーマーふたりは今日もオンライン   8.初めての共同生活

    先輩の部屋にはゼログラの遊べるゲーム機があって、練習にはそれを使うことにした。初日。部屋に着いてコンビニで軽く夕飯を済ませた俺たちは、さっそく夜の練習を開始した。(……変なの)先輩の様子が、少し変だった。具体的には、学校の廊下で俺が先輩にキスしてから。ゲームをしていても、いつもはギャンギャンとうるさく噛みついてくる感じがあるのに、今日は妙に大人しい。「こういう場面では、後方で俺のフォローに回って」「地雷置くとき、声かけマストな」指摘の仕方にも、いつもよりトゲがない……。

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