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第1110話

Penulis: 風羽
その夜、八時。

寒笙は迎えを受けて家に戻った。

身に着けているのはあの日連れて行かれたときの服。

コートだけは脱ぎ、シャツ姿のままだ。

朝倉家の本邸の門前には、厄払いのための簡素な設えが整えられていた。

長年仕えてきた使用人が寒笙を導き、声を震わせながら言う。

「寒笙様、こちらをお通りください。身についた厄を祓って、これからは悪いものが近づきませんように」

寒笙は本来、こうしたことを信じるほうではない。

冗談のひとつでも言おうとした、そのとき――視線を上げると、階段のところに立つ翠乃の姿が目に入った。

目元が赤い。

その瞬間、胸の奥がふっと柔らかくなり、何も言わず、使用人の言うとおりに静かに身を進めた。翠乃の前まで来ると、寒笙は手を伸ばし、彼女の目尻の涙をそっと拭う。

声は驚くほど優しかった。

「翠乃、ちゃんと帰ってきた」

門の前にはすでに大勢の人が集まっている。

翠乃はあまり大げさにしたくなかった。

人に笑われるのが少し怖かった。

けれど、口を開いた瞬間、声は掠れてしまった。

「帰ってきたって……ちゃんとなんかじゃない。こんなに痩せて、髭も剃ってなく
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