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第1192話

Author: 風羽
遠くから、一人の人影が歩いてくる。

涼香だった。

冬のベルリンはやはり厳しく冷え込んでいる。

涼香はダウンコートに身を包み、大きな帽子を深くかぶっていた。そのせいで顔がいっそう小さく見え、どこか願乃に似た雰囲気をまとっている。

彰人はしばらく黙って彼女を見つめていた。

その視線に気づいた涼香は静かに問いかける。

「彼女のこと、考えていたんですか?」

彰人は答えなかった。

沈黙がそのまま答えだった。

涼香は彼の隣に立ち、同じように遠くを見つめる。

遊んでいる子どもたちの方へと。

彼の苦しみは分かっていた。

全身を病に侵され、願乃のもとへ戻ることもできない。

舞の意向はベルリンで適合する肝臓を待ちながら、一つずつ治療を進めるというものだった。

彰人がぽつりと呟く。

「ここにいたくない」

声はかすかに震えていた。

立都市へ戻りたかった。

遠くからでいい。願乃を見守りたかった。

結代のことも、そして――これから生まれてくる小さな命も。

そのために、舞とは激しく衝突した。

彼女は一切容赦しなかった。言い合いの末、思いきり頬を打たれたほどだ。

だから今、
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良香
始まりの二人が静かに話している世界がもう、愛憎満ち満ちて深い闇がそばにいるんだな。
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