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第1196話

Auteur: 風羽
明らかに、彰人はまだ目を覚ましていなかった。

痛みに意識が揺らぎ、書斎に漂う静かな空気の中で、彼は再びあの夢の中へと引き込まれていく。書き換えられた結末――願乃と金婚を迎え、雪の降る周防本邸の庭を並んで歩く夢。彼女の髪には、淡くやわらかな雪が降り積もっていた。

現実では身体は激しく痛んでいる。

夢だけはあまりにも穏やかで、美しかった。

彰人は願乃を強く抱きしめ、かすれた声で夢の中の言葉をこぼす。だが願乃には、その言葉ははっきりとは聞き取れないし、聞こうとも思わなかった。彼女は軽く彼の腕を押し、彼がぼんやりと目覚めるのを待ってから、小さく囁いた。

「彰人、手……離して」

男の瞳はまだ焦点が定まらず、ゆっくりと現実へ戻ってくる。

本来なら、すぐにでも手を離すべきだった。

けれど――離したくなかった。

彼は静かに願乃を見つめ、その手をそっと彼女の大きく膨らんだ腹へと添える。低くかすれた声で、問いかけた。

「願乃、今、何時だ?」

こんな時だけだ。

意識がはっきりしていないふりをして、こうして名前を呼べるのは。

――自分の感情を取り乱さずに済むから。

案の定、願乃は彼
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