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第369話

Auteur: 風羽
輝は、車が門を抜けていくのをじっと見送っていた。

その瞳は深く、暗く、底なしの色を湛えている。

やがて、右の掌をそっと持ち上げる。

——そこは、さきほど瑠璃に触れた場所。

その瞬間の感触は、まだ生々しく残っていた。

可笑しい。

自分を拒んだ女に、まだ反応しているなんて——

その事実が、彼にはひどく癪だった。

……

二階のバルコニーでは、京介と舞が、静かにその様子を見下ろしていた。

舞は夫の肩に身を預け、囁く。

「輝、明らかに瑠璃を忘れられないのに、どうしてあの絵里香を連れて帰ってきたの?瑠璃が離れてしまうとは思わないのかしら」

京介は視線を妻に落とし、穏やかに微笑んだ。

この二年で、彼はさらに落ち着きと風格を増していた。

深秋の夜、薄手のウールのスリーピースを纏い、引き締まった長身を際立たせている。

どこへ行っても注目を集めるが、彼は決して愛想を振りまかず、若い女性が気軽に近づける雰囲気はない。

さらに、左手の薬指には常に結婚指輪。

名分はなくても、結婚指輪を盾に堂々と寄り添う。

それが、京介の言う「既婚者の自律」だった。

舞は思わず小さく息を漏ら
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