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第939話

Author: 風羽
夕梨が振り返る。

そこに立っていたのは大学時代、学生会の副会長を務めていた――藤原朱里(ふじわら あかり)だった。

朱里ははっきり言って美人だ。専攻は金融。

美女同士というものは、たとえ学部が違っていても、表に出さない競争心を抱くものだ。

夕梨は昔から目立つことを好まず、家柄を誇ったこともない。

それでも、ときおり運転手付きの車で登校していただけで、「金持ちに囲われている」などと囁かれた。

夕梨は一度も弁解しなかった。

朱里が彼女に張り合っていた理由は外見だけではない。

学生会長だった高瀬恒一(たかせ こういち)が夕梨に惚れ込んでいたからだ。

あるとき、彼は朱里に頼み、ラブレターを渡させた。

だが朱里は途中でそれを破り捨て、「ちゃんと渡したが、夕梨には断られた」と嘘をついた。

時は流れ――

朱里はついに恒一と交際するようになり、今では結婚を目前に控えている。

二人そろって投資銀行に就職し、年収はともに千万クラス。

再会した朱里にはもはや余裕があった。

夕梨を無視することもできる。

だが――今日は違う。

これは彼女を完全に踏み潰せる、絶好の機会だった。

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