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第53話

Auteur: 風羽
中川はすぐに手配を済ませたが、その後、上司に追い出された。

フロアガラスの外では、夜の帳が静かに降りていた。

その頃には京介の酔いもほとんど覚めていて、舞に電話をかけた。彼女はまだ起きているだろうと踏んでいたのだ。

案の定、電話はすぐに繋がり、舞が出た。

京介の声には少しだけかすれがあった。「シャツ、買ったか?」

「買ったわ、ちょっとダサいけど」

舞はわざとそんな言い方をした。こんなふうに気軽な会話を交わすのは珍しく、そこには夫婦らしい甘さがあった。

京介は笑った。「お前のセンスは信じてるよ、周防夫人」

話を切り替え、さらに優しげな声で続けた。「蒼井紗音(あおいさね)のコンサート、なかなか良さそうだった。中川にチケットを2枚予約させた。立都市に戻ったら、一緒に見に行こう」

舞は思わず嬉しくなった。その演奏家のことを六年間も好きだったが、まだ一度も生演奏を聴いたことがなかったのだ。

手段を捨ててまで女の好みに合わせてくれる男に、心を動かされない女がいるだろうか?

舞の声は自然とやわらかくなった。「周防京介、覚えていてくれてありがとう」

夜は墨を流したように深く静か
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