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第734話

Author: 風羽
着信は、拘置所からのものだった。

澄佳はすぐに察した。

——相沢真琴に違いない。他に思い当たる相手はいなかった。

彼女は翔雅に「先に車へ」と目で合図し、自分は外で電話を取った。受話器からは事務的な声が響く。

「葉山さん、相沢さんの依頼でお伝えします。あなたに面会を希望されています。ご都合はいかがでしょうか」

澄佳は少し考え、答えた。

「今日の午後四時に伺います」

通話を切り、車に戻ると、車内は暖かかった。

差し出されたのはステンレスの保温カップ。翔雅の腕が視界に映る。澄佳は受け取り、淡々と問う。

「病人は私?それともあなた?まさか梅昆布茶なんて入れてないでしょうね」

翔雅はわざとらしく目を丸くする。

「お、よく分かったな」

澄佳は蓋を開け、一口含む。

「私はまだ老け込む年じゃないわよ。なんでこんなの入れるの」

「体にいいんだ……おまえには長生きしてほしい。ずっと俺のそばにいてほしい」

澄佳は言葉を失い、ただ黙って半分ほど飲み干した。

温かさが冷えきった身体に沁みわたり、肩から外套を脱ぐと、心まで軽くなる気がした。

車はやがて翔雅の別荘へ到着した。

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