Share

第816話

Author: 風羽
慕美は歩き去った。

舞は咄嗟に追いかけた。

あの子のことを放っておけるはずがない。

そっと背中に触れ、短く言葉をかけてから、智朗へ向き直る。

「彼女を周防本邸まで送って。マンションは今、もう安全じゃないわ。向こうなら人もいるし……無理なら、澄佳と翔雅のところでもいい」

澄佳なら安心。

翔雅も、今は信頼できる。

智朗は深くうなずいた。

「葉山様、ご安心ください。必ず九条様を無事にお送りします」

この数ヶ月、彼は慕美が痛みにも、希望にも揺れながら進む姿を見てきた。

だからこそ、寄り添うように彼女の肩へそっと手を添え、兄のような柔らかい声音で告げた。

「行きましょう。地下駐車場から出ます」

今、栄光グループ本社の前には記者が殺到している。

――未来の社長夫人が元ホステス。

そんな下世話な見出しは、彼らが飛びつくには十分すぎた。

今夜、立都市は眠らない。

歩き出した慕美は、ふと立ち止まり振り返る。

舞はまだそこにいた。

非難も距離もなく、ただ包むような視線だけを向けていた。

――どんな状況でも、拒まない人。

その優しさだけで胸がきしむ。

慕美の瞳に涙が
Patuloy na basahin ang aklat na ito nang libre
I-scan ang code upang i-download ang App
Locked Chapter
Mga Comments (1)
goodnovel comment avatar
良香
慕美ちゃん、一人で産むんだね。 自分の存在を澪安の世界から消しちゃうの?どこに行くの?強くなれる? いっそ誰も知らない、気候が穏やかな所なんかが良いかもね。
Tignan lahat ng Komento

Pinakabagong kabanata

  • 私が去った後のクズ男の末路   第1188話

    その夜、彰人は長いあいだ話し続けていた。やがて願乃は眠りに落ちる。目を覚ましたときには、すでに空は明るく、庭からは使用人が雪をかく音が聞こえていた。枕元にはもう彼の姿はない。願乃は静かに身を横へ向け、空いた場所を見つめたまま、しばらくぼんやりとする。やがて起き上がり、身支度を整えてゆっくりと階下へ降りると、使用人がすぐに歩み寄ってきた。「奥様、旦那様は結代ちゃんを学校までお送りになりました。すぐにお戻りになるそうです」願乃は窓の外に広がる一面の雪景色を見やりながら、問いかける。「自分で運転して?」邸宅には何台か車があり、普段は彰人が運転していた。使用人は首を横に振る。「いえ、今日は運転手でございます」願乃は小さく頷き、食卓についた。温かいミルクが運ばれてくる。湯気の立つそれを口に含むと、体の奥からじんわりと温まっていく。トーストを二枚ほど食べ終えた頃、外から車の音がした。使用人は二人の関係が少し和らいだのではないかと期待し、どこか弾んだ声で伝える。「旦那様がお戻りです」願乃はただ頷いた。ほどなくして、彰人が玄関から入ってくる。靴を履き替えながら、彼は願乃を見つめ、低く静かな声で言った。「さっき結代を学校に送ってきた。午後は……運転手とおばさんに一緒に迎えに行かせてくれ。出産前なんだから、しばらくは自分で運転しないほうがいい。最近は天気も不安定だしな」長年連れ添った夫婦だからこそ、願乃はその言葉の端々に違和感を覚える。――まるで、何かを託すような言い方だ。まるで、別れの支度をしているかのような。だが、その答えはすぐに知ることになる。三十分後。二人は書斎に向かい合って座っていた。室内は暖かく、ガラス張りの大きな窓の向こうには、凍てつく冬の景色が広がっている。雪に覆われた世界の中、それでもクリスマスらしく、街のあちこちに赤い装飾が見えて、どこか賑やかだった。彰人はデスクの向こう側に座っている。その上には分厚い書類が一式、整然と置かれていた。願乃は湯呑みを手に、ぼんやりと視線を落としている。……やはり、気づいているのだろうか。物質的なものに執着しない彼女だからこそ。この結末をすでに受け入れているのかもしれない。――ある問いがある。

  • 私が去った後のクズ男の末路   第1187話

    彰人が寝室の扉を押し開けたとき、室内はやわらかな温もりに包まれていた。願乃は広いベッドの上で、深く眠っている。灯の下、頬はほの白く光を帯び、静かな呼吸だけが部屋に満ちていた。腹の子はもう六か月。布団越しでもはっきりとわかるほど、丸く大きく膨らんでいる。彰人は思わず、両手をそっとその上に重ねた。命の存在を確かめるように。――きっと、男の子だろうか。新しい年は穏やかに澄み。これからの道は静かに満ちていく。もし周防の姓を継ぐなら、周防清席(すおうきよせき)がいい。清席。いい響きだ。彰人はその名前を小さく紙に書き留める。そして、それを贈り物の箱に添えた。箱の中身は淡いピンクダイヤのブレスレット。あるブランドのクリスマス限定品だ。決して安価ではなく六千万円はする品だ。それに、ピンクダイヤは常に手に入るものではない。願乃が出産を迎える頃、この柔らかな光を身につけてくれたなら、きっとよく似合う。――そのとき、自分はまだそばにいられるだろうか。彼女の隣に。彼女を支える存在として。――いや、もう「伴侶」としてではないのかもしれない。願乃。どうしても、諦めきれない。けれど、この病を抱えたまま、何をもってお前を愛せるというのだろう。求めすぎたから、罰が下ったのか。彰人の瞳に、深い陰が落ちる。彼はそっとベッドに横たわり、布団越しに願乃の腹へと手を添えた。胎児はすでに胎動が活発な時期だ。最初はゆっくりとした蠢き。やがて、掌の温もりを感じ取ったかのように、とん、とんと小さく蹴り返してくる。まるで、遊んでいるかのように。……元気な子だ。結代と同じように、きっと明るく、よく動く子になる。彰人の胸が柔らかくほどけていく。この子が生まれたら、どんな顔をするだろう。どんなふうに育っていくのだろう。どうか――順風満帆に。穏やかに、何事もなく。願乃の兄、澪安のように。だからこそ、やはり、この子は周防の名を継ぐべきだ。そのとき、願乃が目を覚ました。子どもの動きに気づいたのか。それとも、彰人の気配に気づいたのか。彼女は何も言わず、静かに横たわったまま。ただ、わずかに早まった呼吸だけが、その意識を物語っていた。薄暗がりの中、彰人の声がかすか

  • 私が去った後のクズ男の末路   第1186話

    邸宅にはひとつだけ灯りが残されていた。そして、夜番の使用人も。ふと物音に目を覚ましたその使用人は、目を開けた瞬間、彰人が中へ入ってくるのを見た。全身が半ば濡れているのに気づき、慌てて声をかける。「旦那様、こんな遅くまでどちらへ?お電話もつながらなくて……結代ちゃんが泣いておられましたよ」彰人は答えず、広いリビングへと視線を向けた。そこには大きなクリスマスツリーが立っている。色とりどりの小さなプレゼントが吊るされ、小さな灯りがきらきらと瞬いて、どこか愛らしい。庭の装飾も同じく、まるでおとぎ話のような幻想に包まれていた。彰人はその光景をしばらく見つめ続ける。やがて、かすかな声で呟いた。「きっと、がっかりしただろうな」使用人は彼の胸の内など知る由もなく、軽く相槌を打ちながら、夜食はいかがですかと尋ねる。彰人は首を横に振った。「いや、いらない。先に休んでくれ……結代の様子を見てくる」使用人は微笑みながら頷く。「旦那様、ちゃんとプレゼントもご用意されてますし。明日の朝、結代ちゃんがご覧になれば、きっと喜ばれますよ」彰人はごく薄く笑った。濡れた裾に視線を落とし、子どもに冷えが移らないよう、先に客室で乾いた服に着替えることにする。着替えを済ませると、まっすぐ結代の部屋へ向かった。ドアをそっと開ける。部屋の中はほの暗く、柔らかな香りに満ちていた。――髪を洗ったばかりなのだろう。まだ残る、少女特有の甘いシャンプーの香り。そういえばこの前、どこのブランドか嬉しそうに話していた。非常に良い香りだと。彰人は小さく笑う。――もう、そんなものを選ぶ年頃になったのか。それでも眠る姿はまだ子どものままだ。布団にうつ伏せになり、まるでぬいぐるみのように丸まっている。長い髪が枕に広がる様子はどこか願乃の若い頃に似ていた。結代は十三歳。あと十年もすれば、きっと誰かに想いを寄せられ、恋をして、やがて結婚し、子どもを持つのだろう。そして願乃の腹の中にいる子も、その頃には同じくらいの年になっているはずだ。――その時、自分はまだここにいるのだろうか。胸の奥に冷たいものが広がる。彰人はそっと手を伸ばし、結代の髪に触れた。指先に絡む柔らかさを惜しむように、静かに撫でる。――結代。もう、

  • 私が去った後のクズ男の末路   第1185話

    目を開けると、周囲はほの暗かった。だが、鼻を刺す消毒液の匂いで、彰人は自分が病院にいるのだと悟る。――前回は肝臓だった。では今回は何だ?脳腫瘍か?そのとき、傍らで気配が動いた。雅南だった。真冬のクリスマス・イブだというのに、彼女は上司のために駆けつけている。だが、不満の色はない。むしろ、長年仕えてきた分だけ、同情とわずかな心痛が滲んでいた。医師も看護師も不在。身内もいない。雅南はしばらく言葉を選び――どう切り出すか迷っていた。ベッドに横たわる彰人が、静かに問いかける。「脳腫瘍か?」雅南は首を振った。「違います」わずかに声が詰まる。一度息を整え、できるだけ平静を装って続けた。「精密検査の結果、脳に血管腫が見つかりましたが、命に関わるものではありません。ただ……今後は定期的な検査が必要です。ただし、問題は別にあります。肝臓の疾患が再発しています。このまま悪化すれば……移植が必要になる可能性も。それと……医師の見立てでは、偏執傾向が見られるとのことです。心理カウンセリングを受けるよう、勧められています」一気に言い終える。胸の奥が重くなる。だが、彰人は驚くほど落ち着いていた。「それで全部か?」淡々とした声。「他には?心配するな、俺は耐えられる」彼はもう慣れていた。運命の残酷さにも。願乃と過ごした十年は前半生のすべてを引き換えにして手に入れたものだったのだろう。ならば、この後半生はその代償を支払う時間なのだ。――本来、持つべきではなかった十年の。雅南は首を振る。「以上です」彰人は天井を見上げたまま、ぽつりと告げる。「先に帰ってくれ。しばらく一人でいたい」雅南は躊躇う。だが――「一人にしてくれ」その一言に、もう何も言えなかった。仕方なく病室を出る。外のナースに声をかけ、様子を見るよう頼み、こっそりと心づけを渡そうとしたが、若い看護師は受け取らなかった。雅南が去ると、彰人はゆっくりと身体を起こす。シャツのボタンを留めながら、しばらくぼんやりと手を止めた。ほとんど迷いはなかった。――もう、決めていた。それでも、今夜だけは。結代に会いたかった。クリスマスを一緒に過ごすと、約束していたから。病室を出ると、

  • 私が去った後のクズ男の末路   第1184話

    彰人はもう遠慮をしなくなっていた。週に二、三日は外で夜遅くまで過ごしてから帰宅する。そのたびに、体にはかすかな香水の匂いが残り、シャツにもどこかしら痕跡があった。そして、帰宅後、願乃の隣に横たわることはない。ただ静かに、客室で眠る。だが、彼女の定期検診には必ず付き添った。願乃も何も言わない。彼は思う。――彼女は待っているのだろう。自分が手を離すその時を。だが、願乃……俺は手放さない。どれだけ自分の魂が汚れて、どこにも居場所がなくなろうとも。それでも、手放したくはない。自分はそういう人間なのだから。願乃の妊娠が六ヶ月に入る頃、年の瀬が近づいていた。クリスマスの季節。その頃、涼香はクラブを辞め、彰人に連れ出されていた。莫高チップで秘書として働き始め、都心の一等地にあるマンションも与えられた。彰人は時折そこを訪れた。正直なところ、苦しさに耐えきれない時、一度すべてを壊して願乃を自由にしてやろうかと考えたこともあった。だが、いざという瞬間になると、彼は必ず踏みとどまった。その日はクリスマス・イブ。彰人は涼香の部屋を後にし、車の中から窓越しに細かな雪を見つめていた。このままどこかをぶらつこうか――そう思った矢先。結代から電話が入る。「パパ、今どこ?」澄んだ声。彰人は微笑んだ。「外だよ。すぐ帰る」「うん、待ってるね!」結代は嬉しそうに言う。「今日はね、ママがお家を飾りつけしてくれたの!来年になったら、ママのお腹の赤ちゃんも生まれるんだよ!」彰人はスマートフォンを握ったまま、ただ静かに耳を傾ける。結代の描く世界はあまりにもあたたかく、美しかった。その瞬間、彼の心の奥に溜まっていた澱がすっと洗い流されていくようだった。こんな腐った生き方はもう嫌だと。――帰りたい。ただ、そう思った。だが、この雪の夜、彼がもう二度と「帰る」ことができないなど、その時の彼は知る由もなかった。夕暮れ。雪は次第に強くなる。黒いベントレーは静かに街を走っていた。両側には賑やかな店々。行き交う人々の表情には、どこか幸福な色が宿っている。その空気が彼の心を少しずつ癒していく。まるで新しい血が流れ込むように身体が軽くなる。――生きている。そう

  • 私が去った後のクズ男の末路   第1183話

    灯りの下で、彰人の顔色は見るに堪えないほど悪かった。しばらくして、彼は低い声で使用人に告げる。「素うどんを二杯、頼む」使用人は自然に言葉を継いだ。「奥様もお呼びいたしましょうか?」彰人は一瞬考え、かすかに笑う。「いや、いい」それ以上は尋ねられず、使用人は厨房へ向かった。やがて、二杯の素うどんが運ばれてくる。本当に簡素な一杯――薄口醤油をかけ、青ねぎを散らしただけ。それでも、ほっとするような香りが立ち上る。広いリビングの灯りは落とされ、ダイニングだけが柔らかく照らされている。どこか、誕生日らしい静けさだった。彰人は一人、席に座る。目の前には二つの器。まるで昔のように、もう一方のうどんから半分を自分の器へ移す。願乃は少食で、いつも半分を彼に分けていたからだ。箸を取り、うどんを一口。ふと、隣へ視線を向ける。そこには誰もいない。それでも、彼は空気に向かって呟いた。「願乃……まだ『おめでとう』、言ってないだろ」当然、返事はない。彰人はしばらくそのまま見つめ続け、やがて視線を落とし、静かにうどんを食べ始めた。一杯目を食べ終え、そしてもう一杯も黙って平らげる。食べ終えた頃には胃が重く、鈍く痛んでいた。そのまま三十分ほど座り続け、ようやく立ち上がり、ゆっくりと二階へ向かう。寝室の扉を開けると、中は暗く――願乃はすでに眠っていた。本来なら、昨夜あれほど拒まれた以上、ここに戻るべきではない。それでも、こんな夜――すべてを投げ出したあとの夜は彼女の傍で眠りたかった。声を聞きたかった。――たとえ、寝息だけでもいい。そうすれば、行き場のないこの朽ちかけた魂にも、帰る場所があると感じられるから。柔らかなベッドに身を沈める。彰人は横を向き、月明かりの中で眠る願乃を見つめた。甘い香り。ゆっくりと距離を詰め、そっと彼女の背に寄り添う。かすれるような声で、囁く。「願乃……誕生日、祝ってくれないか」長い沈黙。当然、答えはない。彰人は笑おうとした。だが最後に浮かんだのは歪みきった、どうしようもない笑みだけだった。……朝。願乃が目を覚ますと、彰人の姿はすでになかった。それでも部屋には、彼の気配が残っている。男の体温の匂いに

  • 私が去った後のクズ男の末路   第329話

    輝の指が瑠璃の手首に食い込み、痛みが走った。「じゃあ茉莉を渡せ。あとは好きに、てめえのくだらねえ栄華を追いかけりゃいい」瑠璃は力いっぱい振りほどいた。その瞳を真っ直ぐに睨みつけながら、ぽろぽろとこぼれる涙——すべては、かつて彼を愛した証だった。……夜七時。岸本と瑠璃が腕を組み、パーティー会場に姿を現す。交際を公にした瞬間だった。その映像とともに、輝の名もSNSのトレンド上位に躍り出る。「財閥ハンター」——瑠璃につけられた新たな呼び名。メディアは彼女と輝の関係、愛憎、そして二人の間に生まれた娘の存在まで細かく掘り下げた。ただし、娘の写真はすべてネット上から

  • 私が去った後のクズ男の末路   第326話

    幾度も繰り返し、全身を燃やし尽くすような時間だった。夜は静かに沈み、舞は京介の腕の中に身を預け、まだ余韻の中にいた。京介は上体をわずかに起こし、何気なく枕元の引き出しを開けた。中には未開封のタバコが二箱あったはずだが、取り出した箱をまたそのまま戻す。腕の中の舞を見下ろすその眉目は、穏やかにほどけていた。辛辣な過去もあった。だが今こうして抱きしめているものこそ、最も確かな現実——舞に対する負い目は、一生をかけて償うつもりだ。愛し、喜ばせ、ともに子を育てるために。もちろん、入札案件に関しては記憶を取り戻したことをまだ公にはするつもりはない。狙うのは、何としても岸本への決

  • 私が去った後のクズ男の末路   第248話

    舞は茫然としたまま、窓の外に目を向けた。しばらくして、ふと、彼女の心にある思いがよぎった。——音瀬に、会いたい。……夕暮れ時、空は紫がかった鉛色の雲に覆われ、重たく沈んでいた。ピカピカに磨かれた黒塗りの車が、ゆっくりと私立病院の門をくぐる。事前に連絡してあったため、病院側の責任者がすでに門前で待っていた。車が止まり、担当者が丁寧にドアを開けた。「葉山様、どうぞ」舞は黒い薄手のトレンチコートを羽織り、髪はきっちりとまとめられていた。まるで葬儀に参列するかのような装いだった。小さく頷くと、そのまま担当者に従い、薄暗い通路へと進む。その通路は湿気を帯び

  • 私が去った後のクズ男の末路   第181話

    舞は、もう——音のない世界にいた。彼女の周囲は、まるで一瞬にして静寂に包まれたようだった。けれど、京介はそのことを知らなかった。……浜港市の雪が止んだ頃、清花はそっと舞の頬を撫でながら、涙ぐんだ声で言った。「一緒に立都市へ戻ろう。立都市には最高の医師がいる。必ず治るから……!」舞は母を安心させたくて、口を開いた。「……大丈夫、だよ……」しかし、聴覚を失ったせいで、その一言さえも、音程が少し狂っていた。清花は一瞬、堪えきれそうになかった。けれど、母は強くあらねばならない。今こそ、娘を支えなければ——その日のうちに、圭吾と清花は舞を連れて立都市へ戻った。

Higit pang Kabanata
Galugarin at basahin ang magagandang nobela
Libreng basahin ang magagandang nobela sa GoodNovel app. I-download ang mga librong gusto mo at basahin kahit saan at anumang oras.
Libreng basahin ang mga aklat sa app
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status