Home / 恋愛 / 私のおさげをほどかないで! / 12.時間を作ってもらえますか?①

Share

12.時間を作ってもらえますか?①

Author: 鷹槻れん
last update Last Updated: 2025-08-22 03:11:56

奏芽《かなめ》さんと「あまみや」で食べた料理は、今までの私は何を食べてきたんだろう?って思わず頭を抱えたくなるほどに美味しかった。

私は飲めないからよくわからないけれど、お酒に合う料理だったんじゃないのかな?とか思ったり。

奏芽さん自身、いつもならお酒を飲みながら食事を愉しまれるんだなっていうのが、雨宮《あまみや》さんが食前、彼にお酒を勧めていらしたことで何となく分かった。

奏芽さん、大学からここまで、私を送ってくださったから予定外に車で来てしまったんじゃ?と気づいた私は、にわかに申し訳ない気持ちになる。

私はまだ未成年なので、例え飲める環境だったとしても、奏芽さんと一緒にお酒をたしなむことは出来ない。でも……奏芽さんがほろほろとお酒を飲んでいらっしゃる横で、よく冷えたお茶を飲むのも素敵だったろうなって思ったの。

なのに、結局どちらの前にもよく冷えた烏龍茶のグラスが置かれていて――。

「すみません……」

結露が出来つつあるグラスの表面を指でなぞりながら思わず謝ったら、「酒なしってのもたまには乙なもんだ。それにな、凜子《りんこ》。ここは酒が飲めない客もちゃんと楽しめるようになってる」

ご自身の言葉に、雨宮《あまみや》さんが静かにうなずくのを見て、「な?」と頭を撫でてくれてから、「――それより、俺の方こそ気ぃ、遣わせて悪かったな」って言ってくれて、「車、置いて来なかったのは俺の判断だろ? 凜子《りんこ》のせいじゃねぇかんな?」って私のおさげにそっと触れる。

さっきみたいに拒絶するのもおかしく感じられて、私はガチガチに固まったまま、奏芽《かなめ》さんが毛先をもてあそぶのを、うつむいたまま甘受していた。

ややして、私の髪の毛をそっと引いてうつむいたままの視線を上げさせると、

「逆にさ、飯食いに連れてった相手からそんな風に気遣ってもらったことなかったわ。――凜子《りんこ》、あんがとな」

ってお礼を言われてしまった。

ひゃー、奏芽さんっ。

何で貴方はそんな恥ずかしいセリフがさらりと言えちゃうんですかっ?

遊び人時代とやらの名残《なごり》ですかっ!?

思わず照れ隠しに奏芽さんをキッと睨み付けてしまって、苦笑される。

「え? 何で俺、凜子褒めたのに怒られてんの?」

お、怒ってません!

そう返したいのに返せない程度には、私、貴方に振り回され
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 私のおさげをほどかないで!   15.気のせい?②

     バイトを始めた頃――昨年の5月初旬頃――は18時を過ぎてもまだ明るかったし、当然のこと、そこから夏に至るまではもっともっと日が長くてバイトへ向かう際、道の薄暗さに戸惑うことなんてなかった。 帰りは、何だかんだ言ってシフト時間のかぶる谷本くんがアパート付近まで送ってくれたりして怖さを感じなかった。 でも、さすがに彼氏が出来たと分かってからは谷本くんもそういうのは控えてくれて、私も奏芽《かなめ》さんが送り迎えをしてくださるから基本的には大丈夫だったんだけど、ここ数ヶ月はこんな風に奏芽さんと会えない夕刻が少し不安に感じることが増えていた。 前に谷本くんが、「最近この辺不審者が出るらしいから気をつけて」って言ってくれたのをふと思い出してしまった。 何も今思い出さなくても!って思ったけれど、後の祭り。 思い出した途端怖くなって、私は急いでさっき外したばかりの手袋をはめると、半ば小走りに歩き出した。 と、後ろから足音がつけてくるような気がして――。 気のせい、気のせい。 念じるように頭の中でその言葉を繰り返しながら、結局最後にはかなり本気で走って、やっと国道沿いの道に出た。 たくさんの車が通る明るい往来にホッっとして、ふと今通って来たばかりの路地を振り返ったけれど、当然だよね。誰もいなかった。 やっぱり気のせい。 変なことを考えてしまったから、不安になっただけよ。 私はそう思いながら、すぐそこのバイト先――セレストア《コンビニ》の敷地に足を踏み入れた。***「向井さん、最近彼氏とはどうなの?」 お客さんが引けて少し手が空いた時、谷本くんに何でもないみたいに問いかけられて、私はドギマギしてしまう。「あ、あのっ」 言い淀む私に畳み掛けるように、「ほら、最近時々くる向井さんのお友達の――えっとショートマッシュの明るい子……」 言って、そこで遠い目をする谷本くんに、「片山さん?」って聞いたら「そうそう、四季《しき》ちゃん!」って…&helli

  • 私のおさげをほどかないで!   15.気のせい?①

     奏芽《かなめ》さんとお付き合いさせていただくようになったのが、夏。 クリスマスやお正月といった、恋人同士には堪らない行事を経て、今は1月初旬です。 厚着しても身体の芯から冷え込んでくるような寒さの中、モコモコに着込んだ完全武装で私はバイトに向かっている。 ワインレッドのタートルネックセーターは、マフラーを巻かなくても首元をほかほか温めてくれる優れもの。 それに、タータンチェックのワイドパンツを合わせて、ミディアム丈の白いダッフルコートを羽織る。 本当は前ボタンは全て開けていた方が可愛いのは分かっているけれど、寒くて無理なので上から下まで全てのトグルボタンをきっちり留めて、しっかり寒風をシャットアウト。 足元は、くるぶし丈のワイドパンツの下に、厚手のタイツを履いて、ショートブーツで防寒に努めている。 タートルネックで保護された首には、さらに当然のようにマフラーを巻いているの。 奏芽さんがお仕事のないときならば、寒がりの私を暖かい車で送り迎えしてくれるんだけど、今日は連休明けで患者さんが多いらしくて無理で、頑張って歩いている感じ。 奏芽さんと出会う前はこれが普通だったのに、ダメだなぁ。甘やかされるとどんどん身体はそれに慣れてしまうみたい。「うー、寒いっ」 もふもふの手袋に包まれた手で、奏芽さんからクリスマスにプレゼントしていただいたコートの襟元をかき合わせるようにして身体を縮こまらせると、鈍色《にびいろ》の空を見上げた。 今にも雪が降り出しそう! アパートからバイト先まで徒歩5分足らずなのに、歩く距離が短すぎるのが逆にいけないのかな。 ちっとも身体が温まってこないの。 バイトモードできつめに編んであるおさげのせいで、奏芽《かなめ》さんとデートする時よりも頬に風が当たりやすいのもいけないのかもしれない。 そんな些細な差を考えてしまうくらいには、私、寒さ慣れしていないの。だって……私の地元、ここより冬がはるかに暖かかった気がするんだもの。*** バッグの中

  • 私のおさげをほどかないで!   14.余裕なんてあると本気で思ってんの?②*

    「ん、んっ……まっ」 奏芽《かなめ》さん、待って!と言いたいのに、喋れるような状態ではないの。 腰が砕けたみたいに足に力が入らなくなって、その場にくず折れそうになった私を、奏芽《かなめ》さんの腕がかろうじて座り込まないように繋ぎ止めている。 私がそんな状態になってしまっているのは分かっているはずなのに、奏芽さんは許してくれなくて――。 ギュッと抱き留められたまま、私は奏芽さんに口蓋《こうがい》を責め立てられて、戸惑いに逃げ惑う舌を執拗に絡めとられ、追い上げられていく。 奏芽さんの舌が口中を這い回るたびに、触れられたところからゾクゾクとした快感が身体を突き抜けてくるようで――。 私は目端に涙を浮かべて、徐々にヒートアップしていく自分の身体を持て余した。 下腹部がキュン、とうずいて……秘所からあふれ出した何かが、下着を汚してしまったのを感じる。 どうしよう、こんなの……知らなっ……。 そこに触れて、自分を慰めたこともない私は、自分の身体がこんなにふしだらな反応をするなんて思いもしなくて……。下へ触れられたわけでもないのにそこが淫らな状態になってしまったことが、たまらなく恥ずかしかった。 そうして、そうなってしまったことを、奏芽さんには気付かれたくないって思ったの。「や、……ぁっ」 あまりにも情報量が多すぎて、息をつぐのすら忘れそうになって、ぼんやりとしてきたところで、奏芽さんがやっと唇を離してくれる。 身体に密着した奏芽さんの下腹部に固く張り詰めた男性《ねつ》を感じた私は、自分の秘部が濡れてしまったのは、奏芽さんのそういう雰囲気に反応しているからだと気が付いて、一気に恥ずかしくなる。 こんな〝男〟の顔をした奏芽さんを、私は知らないっ。「かな、めさんっ、こんなの……ヤ、ですっ。お願、やめ……っ」 涙

  • 私のおさげをほどかないで!   14.余裕なんてあると本気で思ってんの?①*

     のぶちゃんとサヨナラして家に入ったと同時に、スマホが鳴った。「――か、なめさっ!?」 画面に表示された「鳥飼《とりかい》奏芽《かなめ》」という発信者名を見て、ドクン!と心臓が跳ねる。 そう言えば「帰りました」というメッセージには既読、ついたのかな? あの後バタバタしてしまって、それすら確認出来ていない。 でも着信があるということは、少なくとも奏芽さんはミーティングを終えられたんだと思う。 電話の鳴るタイミングが良すぎて、もしかしてどこかで見てらしたり?と思ったけれど、奏芽さんの性格からして、それならきっと姿を現していたと思う。 奏芽さんに隠れてのぶちゃんとふたりきりで会ってしまったことは、理由はどうあれとても後ろめたくて……私はきっと、見られていないと思いたいんだ。 そんなあれこれでソワソワしながら電話に出たら、「凜子《りんこ》、いま何してた?」と、いつもより更に低音に聞こえる抑えめの声音で問いかけられた。「あ、あのっ、家にいて……それでっ」 その雰囲気に気圧《けお》されて、思わず声が震えてしまう。「か、奏芽さんは――」 何をしていたのか?という質問に咄嗟に答えられなくて、思わず誤魔化すみたいに同じ質問を投げかけたら、気のせいかな。電話口から舌打ちが聞こえた気がしたの。「凜子、すぐ出てこられるよな?」 奏芽《かなめ》さんが、どこか感情の起伏に乏しい声でそう問いかけてくる。 その有無を言わせない言い方に呑まれて、即座に「はい」と答えてしまっていた。 どの道のぶちゃんと出かけるつもりで支度はしてあったし……問題はない……はず。 ただ、髪型が……、とぼんやり思ったところで、奏芽さんが「すぐ出てこられるよな?」と決めつけるような物言いをしたことに気がついて、心臓がドキドキと早鐘を打ち始める。 そう言えば奏芽さんも、私からの「何をしていたのか?

  • 私のおさげをほどかないで!   13.バイバイ、私の初恋の人⑥

    「そこまで……なの?」 ややして、のぶちゃんがポツンとつぶやくようにそう言って――。私はその声に恐る恐る顔を上げた。「凜《りん》ちゃんの気持ち、もうそこまで、かっちり固まってしまっているの?」 私の目をじっと見つめて、のぶちゃんが再度問い直してきた。 私はのぶちゃんの視線を真正面からしっかり受け止めて、小さくうなずく。「……はい」 そのままハッキリそう告げたら、のぶちゃんが小さく吐息を落とした。「そういう、1度こうだと決めたら頑《がん》として譲らないところ。……僕はね、凜ちゃんのそういうところが大好きなんだよ。――けど」 そこで私からふっと視線を逸らすと、 「けど、今回ばかりはその潔さが恨めしく感じられるね」 そう言って淡く微笑んだ。「のぶ、ちゃん……」 その笑顔が余りにも悲しそうで、私は思わず彼に近付きそうになって、でもそれはしたらいけないんだ、って思いとどまったの。 私の決断がのぶちゃんを傷つけることは最初から分かっていたことだ。ここで変に優しさを出すのは、ルール違反だ。「ごめんなさい」 のぶちゃんの気持ちに応えられなくて、ましてや、幼なじみとしてのお付き合いすら、今までのようにはいられないと線引きしてしまった。 心の中でそういう言葉を付け加えながら、私はもう1度のぶちゃんに頭を下げた。 *** 「お弁当、ぐっちゃになっちゃったね」 しばらくして足元に落ちたビニール袋を拾い上げたのぶちゃんが、中身を確認して苦笑する。「崩れちゃったけど、こっちの……凜《りん》ちゃんが好きな幕の内。もったいないし、もらってくれる……かな?」 ほんの少しおかずが寄ったり混ざり合ったりしてしまったお弁当を差し出されて、私は一瞬戸惑った。 これは受け取ってもいいの、かな? その迷いを察してのぶちゃんが言い募る。「さすがに僕もお弁当ふたつは無理だから。――お願い?」 言われて、確かにその通りだと思った私は、恐る恐る手を伸ばしてのぶちゃんからお弁当を受け取った。「凜ちゃん、僕――。今すぐには無理かもしれないけれど……ちゃんと気持ちの整理をつけるから。そうしたら、さ。また、幼なじみのお兄さんとしての立ち位置くらいは……キープさせてもらえない、かな?」 お弁当を介して、のぶちゃんの手が小さく震えているのが分かって――。私は素直に「

  • 私のおさげをほどかないで!   13.バイバイ、私の初恋の人⑤

    「今日は――。いいえ、今日だけじゃなくて……これから先もずっと……! 私、もう今までみたいにのぶちゃんと2人きりで密室にこもるようなことは出来ないの」 言って、扉を背中で押すようにして全開にすると、そのまま後ずさりながら外に足を踏み出す。 半ばまろび出るようにコンクリート打ちっぱなしの廊下に出たら、一気に足から力が抜けそうになった。 のぶちゃん相手に、外に出られたことがこんなにもホッと出来るとは思わなかった。 のぶちゃんは優しい人だから、いくらなんでも私を無理矢理どうこうなんてことはしないと信じてる。 でも、そう思っていても……のぶちゃんだって男性だし、もしもがないとも言い切れないから……。だから本当にすごく怖かったの。 のぶちゃんってば、扉が閉まったとき、多分無意識に、だと思うけど、鍵をかけたりするんだもん。 小さく吐息を落とすと、私は未だ玄関先に突っ立ったままののぶちゃんに声をかけた。「あのね、のぶちゃん。私、のぶちゃんの気持ちには――」  そこまで言ったところで、私はのぶちゃんに手を引っ張られて、気がついたら彼の腕の中に抱きしめられていた。  のぶちゃんの手から、お弁当の入ったビニール袋が音を立てて落ちる。「えっ、あっ、あのっ、のぶちゃんっ!?」 ギュッと胸元に身体を押さえつけられて、抗議の声が押しつぶされたようにくぐもって聞こえた。「外に出たから安心しちゃったの? このアパートの先が袋小路になってるの、知らないわけじゃないよね、凜《りん》ちゃん」 言われて腕を緩められた私は、のぶちゃんが指差した先に、彼の車を垣間見る。  車はのぶちゃんが言ったように、アパートの前の道を数mそのまま行った先の、どん詰まりのところに寄せられて停められていた。「道の先がないってことはさ、このアパートに用がある人以外はここを訪れないってことだよ?」 夕闇に包まれつつある、黄昏時《たそがれどき》。  薄闇の中、廊下のシーリングライトに照らされた中で、のぶちゃんがポツンとつぶやく。「ホント、腹立たしいくらい凜ちゃんは無防備だ」 1フロアに2世帯ずつ、計4世帯しかない2階建てのアパート。  2階《同フロア》に住んでいるお隣さんは、いつも深夜近くならないと戻ってこないのを、私、経験で知ってる。「凜《りん》ちゃんが僕に何を言いたいのか……さすがに

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status