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342話

Penulis: 籘裏美馬
last update Tanggal publikasi: 2026-07-24 20:14:39

真剣な表情で、強い意志の宿った瞳でキッパリと言い切るもみじ。

そんなもみじを見た髙野辺は、もみじに伸ばしていた手を下ろし、頷いた。

「──ええ、もみじさんが妹さんと戦うと言うなら。俺も力になります。協力させてください」

髙野辺の言葉に、もみじは一瞬だけ迷ったような表情を浮かべたがすぐにそれは消えた。

「ありがとうございます、髙野辺さん。お手伝いをお願いしたい事が出来たら、お願いしますね」

「ええ、もちろん」

にこり、と笑顔を返してくれる髙野辺に、もみじも笑顔を返す。

そして自分の顎に手を当て、頭の中を整理するように言葉を紡ぐ。

「胡桃は、不倫騒動で炎上するまでSNSでは多分そこそこ有名な人物でした。時々、胡桃から撮影とかインタビューの依頼があった、と自慢される事があったんです」

「インタビュー……?」

「ええ。ネットの記事を書く……記者?のような人を紹介された、とか……そんな事を自慢気に話された事があるんです」

「──なるほど」

もみじの言葉に、髙野辺が納得したように頷いた。

「……と言う事は、今回、何らかのきっかけでもみじさんの妹と徳居さんが繋がり、徳居
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    もみじが、徳居を訴えるとは思わなかったのだろう。 もみじは優しい人間だ。 自分に被害がなければ、今までのもみじだったらそのまま不問にしていただろう。 だが、徳居の背後には胡桃がいる。 それに、胡桃の言いなりになって徳居はもみじを陥れようとした。 今回、デザイナーであるもみじはそもそもアクセス権限を持っていない。 だからもみじが無実だ、という事はすぐに判明した。 だが、もしもみじにも権限があったら? もみじは自分の名前を勝手に使われて、犯人にされる可能性があったのだ。 人から疑われて、調査対象になっていたかもしれない。 会社の損害を、もみじが払わなければいけないという事になったかもしれない。 今回はたまたま運が良かっただけで、この先も似たような事がまた起きるかもしれない。 だが、今回しっかり罪を追求して、徳居に指示をしたのが胡桃だと分かれば。 胡桃がきちんと罰せられれば。 同じことを繰り返さないかもしれない。 もみじは、そう考えたのだ。 だが、もともと心根が優しいもみじだ。 相手が悪い事をしたとはいえ、もみじは精神的にも相当辛いだろう。 (そんなもみじさんを、俺がしっかり支えないと……) 髙野辺は心の中で強く誓い、もみじに顔を向けた。 「もみじさんが、徳居さんの背後にいる妹まで追求したい事は分かりました。……まず、社内に今回の件は、徳居元社員による蛮行だったと発表します。……そして、もみじさんは、自身の名誉を傷つけられた事で、彼女を名誉毀損で訴えましょう」 「名誉毀損……」 「ええ、そうです。もみじさんはただの一般社員じゃありません。れっきとした、我が社のデザイナーだ。……それに、コンテストの受賞者でもある。あなたの名前を騙る事は、その信用や信頼を失墜させる大変酷い行為です」 髙野辺の説明に、もみじはこくりと頷く。 「徳居元社員に対して、民事訴訟を起こす──……それを、我が社でも発表します。そうすれば、きっとすぐに徳居さんに指示をした妹──嶋久志 胡桃の耳にも入るでしょう。徹底的にやりましょう、もみじさん」 髙野辺の強い視線を受け、もみじは深く頷いた。 頑張りましょう、と手を差し出してくれる髙野辺の手を、もみじはぎゅっと強く握った──。 ◇ 「出て、出てよ……!私、これからどうしたらいいの……っ」 徳居は、

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    真剣な表情で、強い意志の宿った瞳でキッパリと言い切るもみじ。 そんなもみじを見た髙野辺は、もみじに伸ばしていた手を下ろし、頷いた。 「──ええ、もみじさんが妹さんと戦うと言うなら。俺も力になります。協力させてください」 髙野辺の言葉に、もみじは一瞬だけ迷ったような表情を浮かべたがすぐにそれは消えた。 「ありがとうございます、髙野辺さん。お手伝いをお願いしたい事が出来たら、お願いしますね」 「ええ、もちろん」 にこり、と笑顔を返してくれる髙野辺に、もみじも笑顔を返す。 そして自分の顎に手を当て、頭の中を整理するように言葉を紡ぐ。 「胡桃は、不倫騒動で炎上するまでSNSでは多分そこそこ有名な人物でした。時々、胡桃から撮影とかインタビューの依頼があった、と自慢される事があったんです」 「インタビュー……?」 「ええ。ネットの記事を書く……記者?のような人を紹介された、とか……そんな事を自慢気に話された事があるんです」 「──なるほど」 もみじの言葉に、髙野辺が納得したように頷いた。 「……と言う事は、今回、何らかのきっかけでもみじさんの妹と徳居さんが繋がり、徳居さんが俺たちの写真を撮って、もみじさんの妹が知り合いの記者に写真を流した可能性が高いですね。……それで、徳居さんの話を鵜呑みにした記者が、俺の浮気記事を書いた……」 「……多分、そうなんだと思います。……髙野辺さん、徳居さんが胡桃の名前を出したって言ってましたよね?胡桃の言う通りにやったのに、って……。胡桃は、今回の件に関しても徳居さんに指示をしていたかもしれません……」 申し訳なさそうに告げるもみじに、髙野辺は頭を抱えたくなった。 部外者の言う事を真に受け、疑いもせず実行してしまう徳居の浅はかさ。 そして、そんな大胆な事を裏から指示をする胡桃。 「……信じられない。徳居さんがもし逮捕されたら、自分だって危ないのに……。彼女はその危険性も考えなかったのか……?妊婦なのに……?」 「胡桃は、私の事が嫌いですから……。私を陥れるためなら、形振り構わないのかもしれません」 「……自分は、もみじさんの夫を寝取ったのに……?妊娠までしたのに、それでも満足しないんですか」 嘘だろう?と言うように目を見開く髙野辺に、もみじもどうしてここまで胡桃に恨まれているのか。 憎まれ、毛嫌いさ

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    パタン、と背後で扉が閉まる音がした。 髙野辺は驚きに目を見開き、顔だけ扉に振り返る。 「──こもも。……胡桃?もみじさんの妹の名前が、どうしてあの女性の口から……」 髙野辺は呟き考えるように自分の口元に手を当てる。 そうして、はっとすると急いで廊下を歩き出した。 ◇ 「──もみじさん!」 「わっ!?」 デザイン室の扉が勢い良く開き、髙野辺が焦った様子で駆け込んで来る。 帰り支度をしていたもみじは、勢い良く入ってきた髙野辺にびっくりして声を上げた。 「ど、どうしたんですか髙野辺さん?」 「──彼女、徳居 朱音の口から、もみじさんの妹の名前が出てきたんです……!」 「え……っ。胡桃の名前が……?どうして……」 「俺にも詳しくは分からないのですが……もしかしたら今回、俺ともみじさんが写真を撮られた事も、それを記事にされた事も、妹さんが関わっているのかもしれません……。それと、今回我が社のデータを他社に売ったのも……」 そこでいったん言葉を切った髙野辺は、ちらりともみじを見る。 まさか自分の名前でログインされている、とはもみじも知らないだろう。 だが、当人が知らぬ間に犯人に仕立て上げられる。 そんな事が実際、起こったのだ。 巻き込まれたもみじにも、知る必要がある。 「……今回、他社に情報を売ったのは徳居さんでした。……その時、データを入手するために社外秘のサーバーにログインする時に、徳居さんはもみじさんの名前でログインしたんです」 「──えっ!?私の名前で、ですか!?」 ぎょっと目を見開くもみじに、髙野辺は申し訳なさそうに眉を下げ、説明をした。 そもそも、営業社員と会社の役員がログイン出来るサーバーの情報が他社に流れた。 デザイナーであるもみじは、そのサーバーへのアクセス権限は持っていない。 それに、ログインするためのIDもパスワードも発行されていない。 普通の営業社員だったらそれくらい簡単に分かる。 だが、徳居の目的は仕事ではなく髙野辺個人だったのだ。 だから会社のシステムも、仕事もどうでも良かった。 覚える必要がなかったのだ。 そのため、徳居はその基本的な情報すら頭に入れていなかった。 だからこそ、そんな信じられないミスを犯したのだが──。 「徳居さんが、こももの言う通りにやったのに、と呟いたのが去り際に

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    サァッ、と徳居の顔色が悪くなる。 パソコンのマウスを握る手も、カタカタと小刻みに震えていて、髙野辺はちらりとその様子を見たが気にせず言葉を続けた。 「──他人の名前でログインし、我が社のデータを他社に渡したな?そのせいで、我が社は新商品を発売出来なくなった。その損失は如何程になるだろうな」 「──あ、ちが、違うんです……」 「我が社が被った損失を計算し、後日損害賠償を請求させてもらう。それと、君は今日付けで懲戒解雇だ。賠償に関しては、後日弁護士から連絡を入れさせてもらうから──」 「ま、待ってください聖さん!わ、わたっ、私!こんな事になるとは思わなくって……!ただ、ただちょっと、あの女を懲らしめてやろうって……、ただ、それだけだったんですっ!痛い目を見せてやろうって……!こんな事っ」 髙野辺の言葉を遮り、徳居が叫ぶ。 自分勝手な言い訳を始める徳居に、髙野辺は不愉快そうに眉を顰めた。 徳居の態度に、後ろに控えていた蒔田も我慢ならなかったのだろう。 蒔田は真っ直ぐ徳居に近づき、口を開いた。 「社長、と呼びなさい。あなたはただの一社員。勝手に社長の名前を口にしないように。それに、あなたの言い訳は自分勝手な言い草で聞くに絶えない。社長の言葉を遮らず、黙って聞いていなさい」 「──なっ、た、たかが秘書如きが私と聖さんの会話に割り込まな──」 「徳居 朱音」 蒔田の言葉にむっとした徳居が、苛立ち顕に声を荒らげる。 だが、今度は徳居の言葉を髙野辺が途中で遮った。 「君は自分が仕出かした事の大きさを理解していないのか?……以前の記事に関しては、俺の不用心が招いた結果だったから目を瞑った。だが、今回は見逃す事はできない。君には会社を去ってもらうし、それ相応の賠償金を請求する。それと──もみじさんの名前を騙った事。それを訴えるか否かは、もみじさんの判断に委ねるが、もしもみじさんが訴えると言うなら、我が社──いや、俺個人としてもみじさんを全面的にバックアップする」 「な、なんで……聖さ……っ、私たち……付き合っていたんじゃ……」 信じられない、どうして私にこんな事をするの?と涙を滲ませる徳居。 その徳居を、変わらず冷たい目で見据えたまま髙野辺ははっきりと告げた。 「俺が君と付き合っている?妄言はやめろ。俺は君をただの一社員としてしか見ていない」

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    「──社長、蒔田です。お連れしました」 社長室の扉前。 ノックをした蒔田が、徳居を連れて来た事を告げる。 すると、中から髙野辺の低い声が一言返った。 「入ってくれ」 「失礼します」 扉を開けた蒔田が、後ろにいる徳居に入るよう目配せをする。 何が嬉しいのか、興奮に頬を微かに紅潮させた徳居は、笑顔で「失礼します」と入室した。 髙野辺と自分だけが部屋に残るものだと思っていた徳居は、蒔田も入室して扉前に控えている事に驚いた。 出来れば、髙野辺との2人きりの時間の邪魔をして欲しくない。 そう考えた徳居が蒔田に退出するように告げようと口を開いた。 ところで。 「徳居 朱音さん、こちらに」 髙野辺の冷たく、低い声が部屋に響く。 徳居ははっとして髙野辺に向き直り、呑気に笑った。 「はい、何でしょうか社長」 徳居は小走りで髙野辺が座るデスクの前に向かう。 にこにこ、と嬉しそうに髙野辺に視線を向ける徳居。 だが、髙野辺は徳居には一切目を向けず、低く冷たい声で告げた。 「徳居さん……自分で話す気はないか?」 「──?」 こてん、と小首を傾げた徳居は「何をですか?」と本当に何が何だか分からない、といった態度だ。 髙野辺ははあ、と溜息を1つ零す。 そしてここでようやく徳居に視線を向けた。 「──ッ」 髙野辺の冷たい視線を受けた徳居は、びくりと体を震わせた。 髙野辺の目には確かに怒りの感情が。 ふつふつと沸き上がる怒りの感情を、どうにか必死に留めているような、爆発させないように抑えているような、そんな様子に見える。 徳居は、どうして自分が髙野辺にそんな目を向けられるのか分からない、というように狼狽えて見せた。 (え……っ、聖さん、私に怒ってる……?どうして……?どうして私に怒っているの……?私、何も……) ふるふる、と震えてくるのが自分でも分かり、徳居は震える指をぎゅっと握りこんだ。 髙野辺はデスクに置いてあった茶封筒を手に取ると、中から書類を取り出して徳居の目の前にばさりと放った。 「……自分の目で確認しろ。愚かな行動によって、我が社は甚大な損害を被った。この責任は君に請求させてもらうぞ」 「──えっ、え??」 徳居は、慌てて自分の目の前に散らばった書類を手に取る。 書類は、徳居には小難しくて何が何だか分からなかった。

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    ◇ 終業時間を迎え、徳居は帰り支度をしていた。 徳居は鼻歌でも歌い出しそうなほど、上機嫌だ。 そんな徳居を、神咲はじっと見つめていた。 周囲は。 神咲や徳居を指導してくれている営業の先輩達はまだ忙しそうに仕事をしている。 (会社から、まだ何も今回の件について発表されていない……。新商品、どうするんだろうか……) 今後、会社の行動を先読みして仕事をしようとしている社員がほとんどだ。 その中で、徳居は晴れやかな表情で「お先に失礼します」と告げ、デスクから立った。 その時──。 「徳居さん。徳居 朱音さんいらっしゃいますか?」 騒がしいはずの営業フロアに、静かな低い声が不思議と響いた。 神咲は「えっ?」と声を漏らし、徳居を呼ぶ声の方向を見やる。 すると、そこには──。 「蒔田秘書……?」 どうして社長の右腕である蒔田秘書が、ここに。 そう思ったのは神咲だけじゃないようだ。 フロアに残っていた社員が訝しげに徳居を見る。 当の本人、徳居はキョトンと目を瞬かせていた。 徳居は返事をしていないが、彼女を見つけた蒔田が「ああ、まだ帰られていなくて良かった」と言いながらフロアに入ってくる。 そして徳居の目の前まで歩み寄ると、ぼうっと蒔田を見上げる徳居に、蒔田は表情を変えずに告げた。 「社長がお呼びです。来てください」 「──えっ、ひじ……っ、髙野辺社長が!?分かりました、すぐに伺います!」 髙野辺が自分を呼んだ。 その言葉を聞いた瞬間、徳居はぱっと花が咲くように満開の笑みを浮かべる。 嬉しそうにバッグを手に持ち、蒔田を急かすように「早く行きましょう!」と急ぎ足でフロアを出て行く。 蒔田はくるりと振り向くと、フロアにいる社員達に対して申し訳なさそうに微笑んだ。 「騒がせてしまい、申し訳ない。……君たちも残業はほどほどにして帰社してください」 それだけを言うと、蒔田は徳居を追うようにフロアを出て行った。 ぽかん、と口を開けてその光景を見守っていた神咲のもとに、先輩社員が椅子のままやってくる。 「──おい、社長が徳居さんを呼んだって……。彼女、何か今回の事件に絡んでいるって事か……?」 こそこそ、と耳打ちしてくる先輩に神咲は曖昧に笑って誤魔化す事しか出来ない。 そうだと思います、なんて言う事はできなかった。 だが、徳居の

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