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第5話

Author: あうあう
医者が話を続けようとしたのを見て、私はとっさに声を上げた。

「朔!」

彼は私の声に反応して振り返り、医者の言葉の続きを聞き逃したようだ。

私は慌てて医者に首を横に振った。医者はただの夫婦喧嘩だと勘違いしたようで、それ以上は何も言わなかった。

医者は最後に彼に向かってこう告げた。「奥さんの火傷はひどいので、しっかりケアしてください。感染症になると大変ですから。

それに、たとえ回復したとしても、彼女の手は鉛筆一本握れないでしょう。

いやあ、残念なことです」

朔の瞳が一瞬揺れ、すぐに私を支えてベッドに寝かせると、抱き寄せて静かに慰め始めた。

「暮葉、すまない。俺がお前を守れなかったんだ。

ただ、当時の状況はお前も見てただろ。お父さんは晴香が流産したのはお前のせいだと思い込んで、ひどく怒っていたんだ。あの場で逆らうことなんてできなかったんだよ。

お前が傷つくのを見るのは、誰よりも苦しいんだ。俺が身代わりになればよかった。

安心してくれ。絵が描けなくても心配ない。俺が一生お前を支え、大切に愛すから」

愛情深い夫を演じる彼の姿を見ても、私はただ嫌悪感しか湧かなかった。

もし傷ついたのが晴香だったら、誰が相手だろうと彼は命がけで彼女を守ったはずだ。

でも、私は彼を問い詰めたりはしなかった。もうその必要がないからだ。

その後、入院中の数日間、彼は妻を溺愛する夫を完璧に演じ抜き、私に尽くしてくれた。

医者も看護師も頻繁に病室に現れ、私の体調を常に心配していた。

私の気分を良くするために、彼は大金を使って病院の廊下いっぱいにピンクのバラを飾り付けた。

食べたいものがあれば、何でも買ってきてくれて、私の口へ運んでくれた。

彼は昼夜を問わず私に付き添い、会社の仕事まで病室でこなした。

これほど完璧な夫がいることを、病院の誰もが羨むに違いなかった。

もし、私がすでに事の真相を知っていなかったら、その優しさに涙を流して感動していただろう。

彼は昔、こういった偽りの優しさで、私の心を掴んだのだから。

退院の日、彼は私のために退院祝いのパーティーを開き、多くの友人を招いた。

パーティーは実に豪華で、会場の装飾も全部私の好みに合わせていた。

会場の中央には、私と彼の仲睦まじい姿を写したツーショット写真が大きく飾られていた。

写真の中の彼は、最愛の人へ向けるような眼差しをしており、私の瞳にもまた、偽りのない愛情が宿っていた。

この時は朔の愛を少しも疑っていなかったし、この身のすべてを捧げる覚悟さえあった。

しかし、写真の中で私を愛おしそうに見つめていた彼は、心の中では晴香のことを想っていたのだろう。

今の私には、その写真がただ滑稽で仕方がなかった。

パーティーの途中、彼はステージに立ち、大勢の前で億単位の値がつくネックレスを私に贈った。

「このネックレスには『真実の愛』という名があります。皆さんには、俺が妻である清原暮葉へ永遠の愛を誓う瞬間を見届けていただきたいと思います」

会場は盛大な拍手に包まれ、誰もがその姿に心を打たれていた。

さらに、彼は落ち着いた様子で、もう一つの大きな発表を続けた。

全員の視線の中、彼は私の手を取り、愛おしそうに笑った。

「退院を祝うだけでなく、皆さんにもう一つお知らせがあります。俺と暮葉の子供が生まれたら、清原グループの株全てを、妻の清原暮葉に譲渡します!」

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