Masuk髪を洗ってもらうはずだったのにどうして背後から壱が自分のそれを擦りつけているのか……この状況が理解できない。「わ、わたしのこと、からってますかっ……?」 変な顔してる、って言ったり情けない姿を面白がったりしているから、面白いと思っているのかも……。 「からかってない。ただ……俺が盛ってるだけ」「分かるだろ?」と壱のソレに割れ目をなぞられて葵依は息を飲んだ。「昨日、これが入ってきたの覚えてる?」 葵依は首を横に振って否定した──ものの、本当は覚えている。 昨夜よりも頭はハッキリしているから、割れ目をなぞられる度に、挿入時の痛かった記憶が脳裏に映し出される。ただ、痛みが快感に変わってからの方が実はあやふやだった。でも、壱に腕を離してと言われて、強く拒否した記憶は残っているし、膣に射精された時の熱い記憶と満足感は覚えていて……。 固い切っ先に、柔らかい媚肉の間を擦られて葵依は目を瞠った。壱の腰が前後に揺れる度に切っ先が、蜜口へ侵入しようとする。ただ、切っ先だけで肉茎までは入らないものの、壱が少しでも位置を間違えれば全部埋まってしまいそうだ。「いれちゃ、やだっ……」 昨夜のように、全部入れるつもりじゃないのかと葵依は考える。葵依の腰を掴んで自由を奪い、決定権を持つのは壱だ。その決定を下されてしまったら……夜よりも頭がハッキリしているんだから、全部憶えていてしまう。そんな中可笑しな事を口走ってしまったら人前に出れないかもしれないし、自分がどうにかなってしまいそうで怖かった。 「挿れない。擦るだけだから」「いたいのは、いやぁ」と首を横に振ると、困ったような声が降ってきた。「痛くしない。気持ちよくしてあげるから」 この言い方は……止めるつもりはない。
「シャワー浴びる?」 浴びたい、そう思って葵依はコクリと小さく頷くと「よし」と壱に抱えられて廊下に出た。 壱にの肩に顎を乗せてぼんやりしていたら、浴室の前で止まった。 視界に見慣れない物が入って、葵依はその一点を見つめる。ドアポストを隠すように縦縞模様のハンカチが玄関ドアに貼ってあった。首を傾げていたら、床にそっと下ろされる。「ドアポストにハンカチが貼ってあるんですけど……」「万歳できる?」 被さるように訊ねられて、壱を見上げた。葵依はきょとん、として、「できますよ?」「して」と目配せされて、葵依は両手を上げた。「ありがとう」とにニッコリとした微笑みを見てすぐ、腹が涼しくなる──それから視界が布で遮断され、明るさを取り戻した時はシャツを脱がされて素っ裸にされた。 「裸になっちゃいました!???!」 真っ赤になって、小さな胸を両腕で隠しながら壱に背中を向けた。(どうして、脱がされたの!?) 「まぁ、今脱がしたからな」 パサッと音がして床を見ると、さっきまで着ていた服が床に投げ捨てられていた。「一緒にシャワー浴びるって言ったじゃん。それに髪も洗ってあげるって」 言ってた。 ──って、あれ? そう言えば、私、断ってない。「だだだ、だめですよ! シャワーは一人で入りますっ」「なんで?」「一人で入るものです!」「小さい頃は、母親と入ってただろ?」「それは子供の時だけですっ」「髪洗って欲しくない?」「恥ずかしいですっ!」と叫ぶと「もっと恥ずかしいことしただろ?」としれっと言われて、昨晩のことを思い出してしまう。 「昨日の昨日で、腰も痛いだろうし……葵依を労ってあげたいんだ」「い、労ってあげたいなんて、そんなっ」 首を振って拒否を示すと、背後から声が聞こえなくなる。代わりに布擦れの音がした。
「っ!?」 不意に血管が浮いた手が自分の右手に重なってくる。 艶めいた低い声が右頬の近くで聞こえた。 「いっ、壱さん!?」 掴まれた右手はそのまま、壱の掌が重なってきて指の間に彼の骨ばった指が絡んできた。「あ、あのっ」「ん?」 首筋に顔を埋められて、頬に壱の前髪が掠って、なんだか擽ったい。「わたし、汗臭いから」「……全然」 クン、と鼻先を動かされて葵依は青褪めながら変な声を出してしまう。距離を取ろうと首を右に傾けるも壱の顔が跡を追ってくる。 暫く続いた攻防戦に根を上げたのは葵依だった。大した動きじゃないのに疲れてしまう。「一緒にシャワー浴びる?」「いっしょにシャワーを浴びる……?」 壱の言葉を復唱して、理解が追い付いて葵依はみるみる顔を真っ赤にする。 何を言い出すの……と言い返したかったが、昨晩の壱の胸板とか腹筋を思い出してしまって、上手く喋れなかった。 「髪を洗ってあげようか?」「髪……」「ヘッドマッサージもしてあげる。俺、マッサージは得意なんだ」 葵依は美容院には行かずに1000円カットで済ませている。髪は洗わずにカットオンリーの店だ。髪は切るだけだし、洗うのは家でも出来る、と葵依はそれで満足していた。そんな彼女が一度だけ晶子に連れられて、高級美容室という未開の地へ足を踏み入れた。そこは数多くの芸能人が訪れる美容室で、個室スパルームでの施術やVIPルームを併設までされているような会員制の美容院だ。葵依が行く場所とは違い、静かで温かみがある洗練された空間だった──が、葵依には居心地が悪かった。借りてきた猫のようで終始緊張していたのだが……他人から髪を洗ってもらうのはとても気持ちが良かった。髪をカットするだけなのにヘッドマッサージに、フェイスマッサージ、終いには肩までマッサージをして
※ ※ ※ ブーっ、ブーっというバイブ音が遠くで聞こえて、葵依は重い瞼を開いた。 瞼と身体が重い。 ぼんやりと覆っていた膜が薄らと広がるように視界が開けていく。 ぼやけた視界に、見慣れた丸型蛍光灯が見える。 カーテンの隙間から青白い夜明けの光が入っていて、いつも自分が起きる時間よりもほんのり明るい気がした。 バイブ音がずっと頭に響いていて、スマホを手に取ろうと思い重い瞼を擦って、身を起こそうとしたら下半身が鈍い痛みに襲われて、動きを止めた。(身体が怠い……腰が痛い……) 寝ぼけたままよろよろと半身を曲げて、テーブルに視線を向けたら、このタイミングでバイブ音が止まった。「アラームかな」 葵依は6時にアラームを設定している。と、言ってもアラームが鳴る前にいつも目が覚めてしまうのだが。 今日は、アラームが鳴ってから起きてしまった。珍しいなぁ……。 背伸びの為に両腕を上げようとしたら、腰と下半身に鈍痛が走って葵依は表情を歪めた。 それに……シャツを着ていて、布団の上で寝ている……昨日の私は確か裸のまま気を失った……。 それから誰かの気配がする。 恐る恐る、葵依は視線を右下へ──。 「ひぃえっ」 視界に飛び込んできた人物を見て変な声が出てしまった葵依は慌てて自分の口を塞いだ。 昨夜の一部始終が甦って、みるみるうちに顔が真っ赤に染まっていく。 寝顔も作り物みたいにキレイな顔の壱さんと……。 すごくイヤラしいことをした……。 夢かと思って、口内炎を舌先で突いたら、痛い。 夢じゃない。身体に残った痛みと違和感も、現実で最終的には私が許可を出した事によって生じたものだ。 即ち、隣に居る人は本物。 きっと、彼が
二年間片想いをしていた相手に避妊せず行為に及んだ事が大きいのか……今まで生でするようなリスクなんて犯した事はなかった。相手に強請られてもだ。逆に強請られるような事があったら、その場でさよならをしていた。万が一の事を考えれば、責任は負えないし、責任を負ってもいいと思える相手と出会った事がなかった。 今まで間違いは犯さぬよう遊んでいた俺が、恋に堕ち……誘惑に負けた。いくら妊娠しないからって、だ。 葵依を独占し、支配したという感覚が興奮と快感に繋がったんだろう──それがこの量である。 全て出し切った後に、もう一度覗くと膣内に傷は見当たらなかった──という事は、この血は処女膜を俺が破ったからか……。 壱の視線の先には、白濁液に混ざる赤い血と赤いシミがついた淡い桃色のビーズクッションがあった。彼女が俺のものになった証拠だ。 赤いシミの他にも二人の体液で濡れてしまっている。 「このクッションはもう使えないな……」 いくら親戚でも男から贈ってもらった物なら、捨ててもらった方が良い。 壱は唇を引き結んでから満ち足りた笑みを浮かべた。 葵依を自分のものにした。 バイト先の店長、バイト仲間、コンビニ客は葵依に気があった。彼らはいつも下心を隠して葵依に話し掛けていた。彼女は仕事に夢中で彼らの行為に気付いてはいなかったが……。彼らの元へ行かずに自分を選んでくれた事は本当に運が良かったと思う。俺より先に誰かが告白をしていたら、例え無意識に俺に恋心を抱いていたとしても、警戒心が薄い彼女の事だから承諾していただろう……今日の俺みたいに部屋にあげていたかもしれない。 けれど葵依は俺のものだ。2年間片想いを続けた壱が言うのはおかしな話だが──男達が彼女に告白をする勇気がなかったのが悪い。 彼女を誰にも渡すつもりはないし、結婚もする。葵依の誕生日十二月二十四日までには絶対にプロポーズの返事をYESと言ってもらう。 「ん&he
「ギュッ、てして、いいってっ、いったぁっ……」「言ったけど……俺もイキそうだから……」「イヤっ……」 壱は苦悶の表情を浮かべた。「さ、すがに膣へ出すのはマズい」「やぁっ……」 聞き分けが悪い子供のようだった。 さっきまでは、抱き締めてくれなかったのに今度は離したくないという。 このまま出してしまえば、そりゃ気持ち良いだろう──しかし、いくら妊娠する可能性が低いからって膣へ出すのはマズい。これから先のそういう機会は結婚初夜がいい……いや、そうなると葵依は大学へ行きたがっているから大学卒業後か……。 乙女だな。 膣へ出したいという欲求を腹の奥へひた隠し、自分から離れようとした。葵依の背中に回していた手を解こうとした。 瞬間──首筋に柔らかくて濡れた感触が触れてくる。 「ギュって、してたい……」 スリっ……壱の肩に顔を埋めた葵依から、額を肩に擦り付けられた。「ダメ……?」 肩から顔を上げた葵依から目を覗かれ──……。 生理的に流した涙で潤んだ瞳と、濡れて艶がある──首筋に当たった柔らかい感触は葵依の唇だったのだ。「おねがい……」 グッ、と奥歯を噛み締め──苦悶を浮かべた表情は怒りに変わっていた。「あ、あぁー、もう! クソっ! クソっ! マジで可愛いっ!」「どうなっても知らないからな」低く唸って、舌打ちし、吐き捨ててすぐ、壱は葵依の唇に噛み付いた。 激しく腰を打ち付けて、Gスポットを攻め続けた。浅い場所を狙っているから何度も抜けてしまったが、それでもすぐに蜜口へ肉棒
「……照れ隠し?」 目をパチパチさせる葵依に113番は「あぁ」と短く答えた。 「下田さんのバイトは今日が最後だから声を掛けようと思ったんだ」 「あれ? 名前?」 どうして名前を知ってるんだろ? と首を傾げると 「バイト中、名札を見てたから」 と男は自分の右胸を指した。バイト中はその場所にネームプレートを差すのだ。 「そうなんですね」 納得して頷く。 名前を知られていたなんて、と思うとどうしてか嬉しい気持ちが沸いてきて口元が緩んでしまう。 「俺は壱だ」 「いちさん?」 「あぁ」と113番──金城 壱は頷いた。名前を呼ばれただけで
葵依は小柄なうえ童顔で、小さな顔に仔猫のように大きい目を縁取る長い睫毛、毛先が外側にクルンとカールしたセミロングストレートの髪型……守ってあげたくなるような無垢な高校生。女子高校生というブランドと小柄で童顔というセットはある界隈の男達から絶大にモテた。仕事中何度も遊びに誘われたが、葵依は全て「勉強をしなきゃ」と言って断った。これは下手な断り文句ではなく本当の事である。葵依はバイトが休みの日は友達と寄り道せず、学校が終われば真っ直ぐ家へ帰り授業の予習をするのだ。 可愛いけど男への免疫がない葵依を騙すのは簡単だろう──胸が小さいのは残念だが、世間知らずな見た目だから簡単に堕ちるだろう……そ
葵依は小柄なうえ童顔で、小さな顔に仔猫のように大きい目を縁取る長い睫毛、毛先が外側にクルンとカールしたセミロングストレートの髪型……守ってあげたくなるような無垢な高校生。女子高校生というブランドと小柄で童顔というセットはある界隈の男達から絶大にモテた。仕事中何度も遊びに誘われたが、葵依は全て「勉強をしなきゃ」と言って断った。これは下手な断り文句ではなく本当の事である。葵依はバイトが休みの日は友達と寄り道せず、学校が終われば真っ直ぐ家へ帰り授業の予習をするのだ。 可愛いけど男への免疫がない葵依を騙すのは簡単だろう──胸が小さいのは残念だが、世間知らずな見た目だから簡単に堕ちるだろう……そう
高校一年生から二年間勤めたコンビニのバイトを下田葵依は、高校三年生の五月、ゴールデンウィーク最終日をもって円満退職を果たす。 二十二時。終業時間になりバックヤードへ行くと、店長の田中から「みんなからだよ」とプレゼントが入った袋をもらった。バイト仲間たち全員からの寄せ書きが入っていて『一緒に働けて楽しかった』『遊びにきてね』『寂しい』などと書いてある。ガラスドームに入ったプリザーブドフラワーと「受験勉強を頑張って」という気持ちが込められた本革製のペンケースも贈られた。うるっと涙が出てきて、葵依は慌てて手の甲で涙を拭った。 「葵依ちゃん」 『葵依ちゃん』と呼ぶ声