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【第一章】地雷系ホスト・みおん 5

Author: すずかん
last update Last Updated: 2026-01-12 16:58:59

「失礼します!」

その声が聞こえた瞬間、私は条件反射のように顔を上げていた。

「あ……」

思わず、口元がほころぶ。みおんくん――。

にこっと、愛嬌たっぷりの笑顔を浮かべながら、彼は自然な所作で私の斜め横に腰を下ろした。

座り方まで、なぜだか品がある。

無駄がないのに、どこか柔らかい。

すぐ隣では、ゆりちゃんがユウトとの話を切り上げ、こっちを見てニヤニヤしている。

「さーちゃん! お目当てのみおんくんじゃーん!」

わざとらしく声を上げるものだから、私は一気に顔が熱を帯びた。

目立ちたくないのに……と思いながらも、彼がそこにいるだけで、頬の温度はどうにもならない。

***

「さっきおしぼり持ってきたみおんです! 改めて、よろしくね」

そう言って、彼は一枚の名刺を差し出した。

裏を返すと、そこには可愛らしいタッチの似顔絵が描かれていた。ちょっとゆるキャラっぽい。

「え、これ似顔絵?」

思わず笑って聞くと、「そうだよ〜。似てる?」と、彼は首をかしげながら覗き込んできた。

……あざとい。あざとすぎる。そして可愛い。

男の子なのに、こんなに可愛いのアリ?

ぷっくりした涙袋、大きな瞳、くるくると表情を変える顔。正直、女の子よりも“かわいい”という言葉が似合ってしまっている。

***

そんなふうに見とれていると、みおんがメモをちらっと見て、にこにこと笑いながら尋ねてきた。

「ねえねえ、年上が好きってこのメモに書いてあるけど、僕、25歳なんだよね。……大丈夫? 年下もいける?」

いたずらっぽい目をして、私の顔を覗き込んでくる。

その時点で、すでに心臓は警報レベル。

え……無理無理、近い。顔が近い。

かっこいいのに、こんなに甘く迫ってくるの?

やばい、心臓が痛い――!!

「うん……全然、大丈夫……」

かろうじて声を絞り出すと、彼の顔がぱっと明るくなった。

「ほんとに〜? 嬉しい!」

その声と同時に、彼の手が私の足元に触れる。

軽く、けれど確かにそこに置かれたその手。

そして、ぐっと上半身を寄せてきた。

***

え……今、足に……?

思考が止まる。脳内が真っ白になる。

どういうこと? え? これは夢? いや現実??

「ねえねえ、隣いってもいいかな?」

そう言いながらも、彼は返事を待たずに、すっと身体を寄せてきた。

気づけば、私は彼と肩が触れそうな距離で並んで座っていた。

やばい。やばすぎる。

体中が強張って、言葉が出てこない。

頬も耳も、火が出そうなくらい熱い。

すると、彼が耳元でふっと囁いた。

「耳まで真っ赤じゃん♪ かわいっ」

甘い声。近すぎる距離。

くすぐったい息遣い。

――だめだ、完全にパニック。

***

あの、ふんわりした“あざとかわいい”みおんくんが、急にスイッチを切り替えたみたいに、今度はどこか“ドS”っぽい雰囲気を纏っている。

この顔で? この声で?

まさかの甘い攻撃に、私はなすすべもなく呑まれていく。

そして、そこから。彼の甘く、挑発的な“言葉の攻撃”は――まるで嵐のように、止まらなくなった。

「ねえねえ、僕さ。こんなこと言うの、あんまりないんだけどさ」

みおんが、ふいに声のトーンを落とす。

あの無邪気な笑顔の奥に、ほんの少しだけ真剣さが混ざったような響きだった。

「さーちゃんのこと、気に入っちゃったから……僕を選んでくれたら嬉しいな」

そして、少し間を置いてから――

「LINE、交換しようよ?」

***

え……ライン交換?

一瞬、頭が追いつかなかった。

ただのおしゃべりだけで終わると思っていたこの時間の先に、まさか“連絡先交換”があるなんて。

どうやら、初回の来店では“気に入ったホストを一人選ぶ”システムがあるらしい。

そのとき、みおんくんを選んだらLINEを交換できるという。

「僕ね、あんまりLINE交換しないんだよね〜」

そう言って、みおんは少しだけ首を傾けた。

その直後――彼は、すっと顔を寄せてきて、私の耳元に息がかかるほどの距離で囁いた。

「気に入った子だけ、特別だよ」

***

一瞬、鼓膜が痺れるような感覚に襲われた。

限界だった。こらえきれずに、私は「うう〜っ」と声にならない声を漏らして、顔を両手で覆ってしまった。

視界を遮っているはずなのに、顔が赤くなっていくのが自分でもわかる。

頬だけじゃない。

耳の奥まで、火がついたみたいに熱い。

「ふふ……ほんとに可愛い」

その声に、思わず目だけを覗かせると、彼は照れたように視線をそらしていた。

頬に、ほんのり赤みが差しているのが見える。

「やべっ……本気になりそう」

その言葉に、胸の奥で何かが“ぎゅっ”と音を立てた。

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