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Author: はなきち
last update publish date: 2026-07-25 22:42:58

新しい教室。

クラス分けの紙を見た瞬間、思わず目を疑った。

蒼人と同じクラス。

――そして、入学式で一目惚れしたあの男の子も。

「蒼人、やばいよ……。同じクラスとか聞いてないって……!」

興奮を抑えきれず振り返る。

蒼人とは出席番号が前後だったらしく、席も前後になっていた。

一方であの男子は二列隣の前の方の席。少し距離はあるけれど、教室にいるだけで姿が見える。

「良かったじゃん。」

興味があるのかないのか分からない調子でそう返すと、蒼人は続けて言った。

「インスタでも聞いてきなよ。」

「……え。」

「行ってきな。」

その一言に背中を押される。

休み時間のチャイムが鳴る。

深呼吸をひとつ。

私は勇気を振り絞って席を立った。

「あ、あの……!」

男子がこちらを振り向く。

「名前、聞いても……いい?」

一瞬だけきょとんとしたあと、ふっと笑って答えた。

「樹。よろしくね。」

その笑顔を真正面から受け止めた瞬間、心臓が一気に跳ね上がる。

……だめだ。

かっこよすぎる。

動揺を悟られないよう必死に平静を装いながら、勢いのまま口を開いた。

「よ、よかったらインスタも交換しない?」

「あ、いいよ。」

拍子抜けするくらい、あっさりとQRコードを見せてくれた。

交換が終わると、小さく「ありがとう」とだけ言って自分の席へ戻る。

椅子に座った途端、緊張が一気にほどけた。

「やばい……。」

後ろの席の蒼人に勢いよく話しかける。

「連絡先もらっちゃった……。」

「良かったじゃん。」

また短い返事。

でもその声は、どこか少しだけ柔らかかった。

家に帰ると、制服も着替えないままスマホを開く。

何度も文章を打ち直して、ようやく送信ボタンを押した。

『今日の朝、連絡先聞いた緋夏です! 改めてよろしくね!』

送信。

数分も経たないうちに通知が鳴る。

『よろしくね。』

それだけ。

会話は続かなかった。

それでも、返信が来たという事実だけで十分だった。

画面を見つめながら、思わず笑みがこぼれる。

高校生活、楽しみだな。

そんな期待で胸をいっぱいにしながら、私はスマホを抱きしめた。

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  • 私を見つけてくれた人   After story蒼人side.1

    付き合い始めて数か月。 今日は特に予定も決めず、二人でショッピングモールを歩いていた。 緋夏は相変わらず落ち着きがない。 「あっ、見て!これ可愛い!」 さっきまで服を見ていたと思えば、今度は雑貨屋に吸い込まれていく。 「……忙しいな。」 そう言いながらも、その後ろを歩く。 店を出ると、緋夏が何も考えず車道側を歩こうとした。 遠くの方に車が見える。 無意識に腕を引く。 「え?」 「こっち。」 そのまま自分が車道側に立つ。 「……?」 不思議そうな顔。 別に深い意味なんてない。 危ないから。 それだけ。 歩いている途中、緋夏が急に立ち止まった。 「蒼人。」 「ん。」 「荷物持とうか?」 「……は?」 「いや、私が荷物持とうかって」 「意味分かんない。」 「えへへ」 何が面白いんだ。 そのまま歩き出そうとした時だった。 「……ねぇ。」 「なに。」 「蒼人ってさ。」 嫌な予感がする。 「こんな気遣いできたんだね。」 …… …………。 「はぁ?」 「できないと思ってたの?」 「思ってた。」 「失礼すぎるだろ。」 「だって前の蒼人ってさぁ。」 指を折り始める。 「荷物持たない。」 「持てって言われてない。」 「『寒い』って言っても『へぇ』しか言わない。」 「事実だろ。」 「『眠い』って言っても『寝れば?』って冷たい。」 「寝ればいいじゃん。」 「ほらぁ!」 ケラケラ笑っている。 ……なんか腹立つ。 「でも今はさ。」 緋夏は俺の顔を覗き込んできた。 「車道側歩いてくれるし。」 「重そうだったら荷物持ってくれるし。」 「寒かったらマフラー巻いてくれるし。」 「人混みだと手繋いでくれるし。」 「体調崩しそうだとすぐ休ませるし。」 「意外だった。」 「蒼人ってこんな人だったんだね。」 …… いや。 違う。 昔からできなかったわけじゃない。 ただ。 やる理由がなかっただけ。 「……はぁ。」 ため息をつく。 「なにそのため息ー。」 「別に。」 「またそうやって誤魔化す!」 ほんとよく喋る。 少し黙ってろ。

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