共有

第2話

作者: 桃入り
三時間後、真紀は蓮との新居に戻った。

蓮はその冷ややかな瞳で真紀を見つめた。

「真紀、どこに行っていたんだ?電話も繋がらないし、二時間も待ったんだぞ。俺がどれだけ心配したと思ってるんだ」

真紀は改めて蓮の顔を見た。脳裏に焼き付いているのは、空港で彼の手が恵美を抱き寄せ、キスをしていた光景だ。

かつては彼とのキスが何よりも好きだった。だが今は、ただ吐き気がする。

真紀からの返答がないことに苛立ったのか、蓮は立ち上がり、彼女の方へ歩み寄ってきた。

「真紀、俺が一番嫌いなのは、君が黙ってどこかへ行くことだ。前回の『お仕置き』じゃ足りなかったみたいだな」

次の瞬間、蓮の大きな手が真紀の華奢な腰を強く掴んだ。

真紀の体は強張って動けず、長い睫毛が震えた。

以前なら、彼から漂うタバコの香りに安心感を覚え、愛おしく感じていた。だが今は、危険な匂いにしか感じられない。

蓮の独占欲と強引さを、彼女は誰よりも知っていた。

二十歳の頃、彼と喧嘩をして、友人と登山し逃げたことがあった。

蓮は狂ったように市内のヘリコプターを総動員し、彼女を見つけるためだけに全ての山を捜索した。

そして彼女を見つけるなり、マンションに監禁し、一ヶ月もの間、獣のように彼女を貪り続けたのだ。

泣いて懇願しても、彼は決して許してくれなかった。

二度と消えない、心配させないと、何度誓わせられたかわからない。

それ以来、真紀は蓮への恐怖心から、どんなに揉めても姿を消すような真似はしなくなった。

今、蓮の細長い指が彼女の顎を持ち上げた。

「真紀、何か言え。本当にお仕置きされたいのか?」

真紀の瞳に一瞬、動揺が走った。もし今、彼から完全に離れようとしている準備がばれば、彼は本当に発狂するかもしれない。

ばれるわけにはいかない。真紀は震える声で答えた。

「さっき……病院に行っていたの」

彼女は妊娠していた。二ヶ月だった。

病院という言葉を聞いた瞬間、蓮の瞳が暗く沈んだ。

彼は真紀の額にキスを落とし、低く抑えた声で言った。

「真紀、俺の子を産みたいと思ってくれているのは知ってる。でも、君の生殖能力はゼロだと診断されただろう。

もう何年も頑張った、それで十分だ。俺は君さえいればいい。人生に悔いはないから、もう病院には行くな。君が痛い思いをするのは見たくないんだ」

彼女は体外受精を二十回以上試みたが、一度も着床しなかった。数え切れないほどの排卵誘発剤を打ち、腕は腫れ上がったが、何の効果もなかったのだ。

その時、蓮のスマホが鳴った。

濃く整った眉をわずかに顰め、彼は真紀の髪を撫でた。

「もう子供のことで自分を苦しめるな。真紀こそは俺の宝物だ。一生子供がいなくても構わない……

急な用事で出かけなきゃいけないんだが、家でいい子にしてるんだぞ。どこにも行くなよ、勝手に動き回って俺を心配させるな。次やったら本当に怒るからな」

蓮は彼女の返事も待たずに、逃げるように去っていった。

真紀は苦笑した。外で待っている「誰か」がいるのだ。結局、彼は自分が家にいるかどうかを確認するためだけに戻ってきたのか。

三十分後、真紀の元に知らない番号から音声データが送られてきた。

「蓮、恵美さんは本当に妊娠しているのか?」

蓮の友人の声だ。

「ああ、三ヶ月だ。真紀は産めないが、一族には継承者が必要だ。祖父の圧力が強くてな」

「蓮、お前がどうしても真紀さんがいいって言うから、お祖父さんは真紀に避妊薬……

いや、不妊になる薬を盛ることを条件にしたんだろう?籍を入れることも許されなかった。

こんな状況で、今後どうするつもりだ?真紀さんを一番愛してるんじゃなかったのか?」

真紀の顔から血の気が引いた。

何?不妊になる薬?

蓮は不倫をするだけでなく、自分に薬を盛っていたの?

真紀の体を引き裂くような激痛が走った。結婚したあの夜の記憶が蘇る。

蓮は自分に薬を持ってきた。

「真紀、これは実家の長老が勧める妊娠しやすくなる薬だ。新婚の夜に飲めば一発で授かるらしい。苦くても泣くなよ」

あの時、自分は羞恥心と共に彼の腕の中にいて、蓮は一口ずつ丁寧に、最後の一滴まで飲ませてくれた。

最初から、彼は自分に子供を産ませる気なんてなかったのだ。

録音の続きから、蓮の声が聞こえる。

「当然、俺は真紀を愛している。でなければ、なぜ恵美を妊娠させたと思う?両家の因縁を捨ててまで真紀と一緒にいるためだ。

俺の両親が事故死したのは、真紀の両親のせいだ。この数年、必死にその事実を無視して、彼女を宝物のように甘やかしてきた。

子供と法的な婚姻関係以外、俺は彼女に全てを与えられる。西園寺グループさえもな」

「じゃあ、恵美さんはどうなんだ?本当にお祖父さんが用意したただの代理母扱いか?」

長い沈黙の後、蓮は言った。

「恵美は水のように淡白な性格だ。一緒にいると楽しくて、心が安らぐ。それは真紀には永遠に与えられないものだ」

「蓮、お前は『理想の白百合』と『情熱の赤い薔薇』、両方欲しいってわけか」

この本を無料で読み続ける
コードをスキャンしてアプリをダウンロード

最新チャプター

  • 移植されたバラ   第21話

    【これは出す勇気のなかったラブレターだ。真紀、俺は君を好きになってしまったみたいだ。でも君の隣には西園寺がいる。彼を見る君の目は輝いている。これは、ただの片想いで終わるしかないんだろうな】ウェディングドレス姿の真紀の瞳が潤んだ。まさか、司が高校時代から自分を想っていたなんて。彼女は涙ぐんだ目で司を見つめた。その時、警備員の切迫した声が無線から響いた。「神宮寺様!屋上から飛び降りようとしている男がいます!さ、西園寺様です!」真紀の手が震えた。昨日、あれほどはっきりと言ったのに。司は彼女を見た。「真紀、俺が行って処理してくる」真紀は首を横に振った。「司、式はそのまま続けて。二十分だけ遅らせてくれる?」司は彼女を優しく抱きしめた。「分かってる。彼が死んだら君が苦しむのは知ってるからな。待ってるよ」真紀の目に涙が浮かぶ。もう誰かを激しく愛する力は残っていないかもしれない。でも、残りの人生のすべての時間を使って、司を愛することに努める。真紀は屋上へ上がった。蓮は十三年前の結婚式で着ていたあの白いタキシードを着ていた。年月が経っても、真紀には一目で分かった。「西園寺、死ぬつもり?」蓮の赤い瞳には絶望しかなかった。彼は屋上の縁に立っていた。あと一歩踏み出せば、七十八階から落下し、粉々になるだろう。蓮の声は掠れていた。「真紀、君がいないと、一日だって生きていられない」真紀は涙の中で微笑んだ。「空港であなたが早川にキスしているのを見た時、私もそう思ったわ。あなたを失ったら、もう長くは生きられないって」蓮は悲痛な声で懇願した。「真紀、許してくれ。この五年間、一日たりとも君を探さなかった日はない。君が国内にいると知っていたら、すぐに戻ってきたのに」真紀は笑った。「西園寺、毎年結婚記念日を祝っていたあのレストランへは行った?」蓮は動きを止めた。あのレストランは、この神宮寺系のホテルの中にある。最初にここへ来たのは、司への当てつけだった。「俺たちは結婚して幸せだぞ」と見せつけるために。だがその後、真紀がここを気に入ったため、毎年通うようになったのだ。真紀は言った。「西園寺、あそこに五年前、私が最後に贈った結婚記念日のプレゼントがあるの。取りに行って。

  • 移植されたバラ   第20話

    蓮は愕然とした。五年間海外を探し回っていたのに、真紀はずっと国内で司と一緒にいたのか。蓮は翌日の便で臨海市へ戻った。神宮寺グループ本社へ直行し、社長室へ押し入った。最初に目に入ったのは、真紀の姿だった。蓮は目を真っ赤にして突進し、真紀を力強く抱きしめた。彼の体は震えていた。「真紀、真紀……やっと見つけた」この数年、蓮が世界中を探し回っていたことを真紀は知っていた。今回の結婚発表で、彼が戻ってくることも予測していた。「西園寺、ここは私の夫のオフィスよ」蓮の体が硬直した。彼は怒鳴った。「嫌だ!君が他の奴と結婚するなんて認めない!君は俺のものだ。俺はずっと君を探していたんだぞ!」「西園寺、私は海外には一年しかいなかったわ。この四年は、ずっと臨海市にいたの」真紀の瞳は冷え切っていた。彼女は静かに事実を告げた。蓮は激昂した。「関係ない!これからはずっと俺がそばにいる。永遠に一緒だ。怒っているのは分かってる。でも真紀、俺たちは二十七年間も一緒にいたんだぞ」真紀は目の前の男を見た。かつての覇気は消え失せ、廃人のようにやつれている。五年前の輝いていた彼とは別人だった。会社を失ったからか、自分を失ったからか。真紀は一枚のキャッシュカードを蓮に差し出した。「この五年間で、はっきりさせたかったことがあるの。西園寺、これ、六千億円入ってるわ。私が西園寺グループの株を売ったお金よ。これでお返しする。もう貸し借りなしね」蓮の顔色が紙のように白くなった。「真紀、頼む。もう一度俺と結婚してくれ」だが、彼が受け取ったのは一枚の婚姻届受理証明書だった。そこには、真紀と司の名前がはっきりと記されていた。蓮は激しく咳き込み、血を吐いた。赤い目で本物の婚姻届受理証明書を見つめる。「真紀、わざとじゃなかったんだ。愛してるんだ。君が俺を助けてくれていたなんて、本当に知らなかったんだ」五年ぶりに蓮と対面しても、真紀は自分が想像以上に冷静であることに驚いていた。司との結婚は両親も賛成してくれた。彼との関係は自然で、燃えるような愛ではないかもしれないが、無類の安心感があった。おそらく、情熱はすべて蓮に使い果たしてしまったのだろう。真紀は手を伸ばし、蓮の白髪が混じったもみあげに触れた。「西園寺、私はも

  • 移植されたバラ   第19話

    蓮は、真紀を乗せたヘリコプターが空の彼方へ消えていくのを見送った。彼のヘリは草原に着陸していた。彼は長い間、身動き一つしなかった。充血した瞳には、底知れぬ苦痛が渦巻いていた。真紀の最後の言葉。「どんな説明も意味をなさない」。あの力なく、それでいて決意に満ちた声。彼女の絶望と決別が痛いほど伝わってきた。あれほど彼女を傷つけたのに、彼女は罵倒ひとつしなかった。彼女が自分に与えた一番つらい報復は、自分の世界から完全に消失することだったのだ。蓮は病に倒れた。糸が切れたように崩れ落ちた。病院へ搬送され、三日三晩の救命措置の末、ようやく息を吹き返した。見舞いに来たのは一人だけ。湊だった。彼は言った。「蓮、お前と恵美さんが結婚式を挙げたあのドレスショップ、あれは真紀さんの店だったんだよ」蓮は絶望の淵に叩き落された。彼は手の甲から点滴の針を引き抜いた。血が滴り落ちるのも構わず、狂ったように走り出した。あのドレスショップへ。店はまだ営業していた。店長は蓮を見て驚愕した。「西園寺様」蓮は尋ねた。「ここは……真紀の店か?」店長は答えた。「今は私の店です。葛城様から買い取りました」店長は奥から一冊のアルバムを持ってきて、蓮に手渡した。「これらはすべて、葛城様がデザインされたドレスのカタログです。ご覧になりたいかと思いまして」蓮は震える手で最初のページを開いた。透明感のある美しいウェディングドレス。その横に手書きのメモが添えられていた。【彼は、私が海のクラゲみたいだと言った。可愛くて毒があるって。笑うとエクボが可愛いとも言ってくれた。だから私は、彼のためにクラゲのようなドレスをデザインしたい】ドレスのデザインはクラゲをモチーフにしており、透き通るようなふわふわとしたシルエットが美しかった。蓮は次々とページをめくると、すべてのドレスに、彼に関するメモが添えられていた。【今日、彼を怒らせちゃった。私がワガママでチョコを食べないからだって。だから真っ黒なドレスにする。全身チョコレートまみれにして、彼をこの甘さで死にさせてやるんだから】【彼は私の肌が白すぎて、つねるとすぐ赤くなると言う。鎖骨を出すのも禁止だって。はいはい、今日のドレスは総レースよ。頭から爪先まで隠してやるわ】

  • 移植されたバラ   第18話

    一ヶ月前、自分がここを去った時、蓮は高らかに恵美との結婚を宣言していた。それなのに今、こうして自分に許しを乞うている。なんて滑稽なのだろう。真紀はホテルに戻った。エントランスで、司と鉢合わせした。司の魅力的な低音が響く。「西園寺がここに来ようとしたが、警備員に追い返させたよ」真紀は頷いた。「ええ、ありがとう、神宮寺社長」司の瞳がわずかに暗くなる。「真紀、名前で呼んでくれよ。同級生だろう?」真紀の唇がかすかに動く。「うん……この数日、厄介になるわね、司」「厄介だなんて、とんでもない」そこへ蓮の車が猛スピードで滑り込み、急停車した。彼が降りてきた瞬間、司の視線が鋭い警戒色に染まる。真紀は背後の蓮を一瞥した。「今、葛城家と西園寺家の関係は、原告と被告、それだけよ。西園寺、続きは法廷で」葛城家は、剛造の殺人罪に対し、死刑以外の判決を受け入れない構えだった。蓮は、司と真紀が並んで歩き去る後ろ姿を、呆然と見送るしかなかった。ホテルの外に締め出され、蓮は息もできないほどの痛みに襲われた。突然理解した。あのドレスショップで、真紀が高いバルコニーから自分と恵美の結婚式を見下ろしていた時の気持ちが。自分はただ、彼女が司と歩いているのを見るだけで、心臓が引き裂かれそうだというのに。真紀、ごめん……二週間後、葛城家の祖父殺害事件の判決が下った。剛造の刑期は加算され、三人の命を奪った罪により、即時死刑執行の判決が言い渡された。真紀はニュースを見ていた。蓮は剛造の遺体を引き取った後、九百九十九本のバラの束を抱え、神宮寺グループのホテルの外に立ち、片膝をついて彼女に許しを乞い続けているという。なぜ今さらそんなことをするのか、真紀には理解できなかった。彼と恵美の間に何があったのかも知らない。だが、短期間で消え去る愛など、その理由を知る価値もない。蓮は連日ホテルの前で騒ぎを起こし、真紀に会わせろと叫んでいた。この騒動を嗅ぎつけたマスコミが殺到し、ホテル前は黒山の人だかりとなっていた。これでは真紀と家族が空港へ移動することすらできない。見かねた司が提案した。「屋上のヘリポートを使おう」三人の視線が真紀に集まる。真紀は窓際に立ち、遥か眼下を見下ろした。豆粒のような蓮

  • 移植されたバラ   第17話

    「七年前、俺は真紀への罪悪感から、自分の名義の株をすべて秘密裏に彼女へ譲渡した。そして今、その株はすべて神宮寺家に買い取られた。爺さん、お前は俺に恵美との結婚を強要し、西園寺グループの全株式を要求したが、今や西園寺グループは壊滅した」剛造は衝撃のあまり血を吐いた。「な、何だと……!!」蓮の笑みが深くなる。「この数年、西園寺グループの実権を握っていたのは真紀だったんだよ。爺さん、お前が自分の手で、会社を売り払ったようなものだ」剛造は激昂した。「馬鹿者が!株を取り戻せ!あれはわしの人生そのものだ!それを葛城の小娘にくれてやっただと?最初から彼女も殺しておけばよかったんだ!その疫病神め!」蓮は剛造の真紀に対する底知れない憎悪を感じ取っていた。自分は盲目だった。祖父が真紀を嫌うのは、単に彼女が我儘で生意気だからだと思っていた。だが違った。すべては祖父の世代の歪んだ怨念だったのだ。蓮は冷たく言い放った。「爺さん、刑務所の中で、俺の両親に償い続けろ」剛造は狂ったように笑った。「ハハハ!蓮、葛城の老いぼれはずっと老人ホームにいたな?奴が死んだのも、わしが手を回したからだ!」蓮の体が凍りついた。苦痛に歪む瞳が揺れる。……遠い異国の地で、真紀は本国の警察からの電話を受けた。瞳から涙が溢れ出す。「祖父は……病死じゃなかったんですか? 殺されたと?」「検視の結果です。当時、お爺さんは末期状態でしたが、医師の診断ではあと二年は生きられたはずでした。西園寺剛造が殺害を自供しています。ご遺族の方に帰国していただき、手続きをお願いしたいのですが」祖父が殺害されていたなんて、想像もしなかった。両親はニュースを見て言った。「真紀、私たちが処理してくるから、お前は帰らなくていい」真紀は首を横に振った。涙を浮かべた目で両親を見つめる。「ずっとお爺ちゃん子だったもの。私も帰るわ」祖父は西園寺家に何一つ悪いことなどしていない。それなのに、なぜ葛城家はここまで彼らに蹂躙されなければならないの?臨海市に戻ったのは二日後だった。真紀は警察署には行かず、真っ先に墓地へ向かった。「お爺ちゃん……私、後悔してる。西園寺蓮と一緒になったこと、彼を愛したこと、全部後悔してる。もし人生をやり直せるなら、彼と

  • 移植されたバラ   第16話

    恵美のために、真紀の子宮を摘出したこと。今、蓮は想像するだけで寒気がした。あの時、冷たい手術台の上で真紀がどれほどの絶望を味わったのかを。あの時の自分は、ただ恵美に償わなければと思っていた。どうせ真紀は子供が産めない体なのだから、子宮がなくなっても大した問題ではない、と。だが、違った。その脆弱な子宮は、かつて自分の二人の子供を宿していたのだ。自分の真紀は、とてつもない代償を払い、痛みに耐え、自分に最高のプレゼントを贈ろうとしてくれていたのだ。それをすべて踏みにじり、すべて失った自分がいた。真紀は妊娠するために、毎回隠れて病院へ通っていた。カルテの日付は、いつも自分が会社にいる時間帯だった。一度だけ、彼女に電話をした時、声の様子がおかしかったことを思い出した。「蓮、どうしたの?何度もかけてこないでよ、ちょっと体調が悪いの」すぐに家に帰った。真紀は顔面蒼白で、体を丸めて震えていた。部屋には血の匂いが漂っていた。それでも彼女は、無理やり笑顔を作って言ったのだ。「生理痛よ。お腹が痛いの、蓮、温めて」彼女のお腹に手を当てて温めた。真紀は俺の腕の中に潜り込み、泣きじゃくっていた。「蓮、痛いよ、すごく痛い……」彼女にキスをしながら、戸惑っていた。真紀は今まで生理痛が重いタイプではなかったからだ。自分は泉に電話してアドバイスを求め、言われた通りに滋養スープを作り、彼女を温めた。数日間付きっ切りで看病して、ようやく彼女は元気になった。蓮の目が赤く充血した。あれは生理痛なんかじゃなかった。不妊治療の副作用による激痛だったのだ。心臓がえぐられるように痛い。なぜ今になって気づいたんだ。なぜあの時、分かってやれなかった。新婚初夜に自分が飲ませたあの強力な薬は、真紀の体に壊滅的なダメージを与えていた。ただ彼女を独占したくてやったことが、彼女に最大の苦痛を与えていたなんて。恵美と祖父が元凶だとしても、実際に手を下した処刑人は、自分自身だ!病院を出た蓮は、魂が抜け落ちたような足取りで歩いていた。スマホが通知音を鳴らす。ニュース速報だ。蓮の両親の死に関する新証拠が見つかり、すべての通話記録や状況証拠が、剛造を指し示しているという内容だった。蓮がその画面を見つめていると、電話が鳴

続きを読む
無料で面白い小説を探して読んでみましょう
GoodNovel アプリで人気小説に無料で!お好きな本をダウンロードして、いつでもどこでも読みましょう!
アプリで無料で本を読む
コードをスキャンしてアプリで読む
DMCA.com Protection Status