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第2話

Auteur: ぷっちょ
半年前、彼は突然女性秘書を雇った。

そのとき私はとても不思議だった。女に対していつも冷淡な翔太が、どんな女性に特別な関心を寄せるのかと。

それでも私は深く気にしなかった。翔太を信じ、そして私たちの絆を信じていたからだ。

だがその後すぐ、またその噂を耳にしたのは、取引先からの電話だった。翔太がその秘書のために取引先を怒らせたというのだ。

事が明るみに出たとき、私と翔太は珍しく激しく口論になった。

私は理解できずに彼に尋ねた。

「ただお酒を一杯飲むだけでしょ?そんなに大したことですか?田村社長だってそこまで失礼なことはしてなかったじゃない!

それに、会社を立ち上げた頃、取引の話を進めるために、あなたが私に飲みに行けって言ったことだってあるじゃない!」

そう口にした瞬間、「バンッ」と大きな音が響いた。翔太が冷たい顔で、手にしていたスマホを私の目の前に叩きつけたのだ。

飛び散ったガラスの破片が私の足首をかすめ、血がにじんだ。

「それはお前がやるべきことだったんだ!世の中の女がみんなお前と同じだと思わないでくれ。女らしさが微塵もない。

お前ってそんなに意地の悪い女なのか?乃愛(のあ)はまだ若いんだぞ。そんな悪い風潮に染めてどうするつもりだ!」

その瞬間、頭をハンマーで殴られたような衝撃を受け、くらくらしながら立ち尽くした。翔太の冷たい言葉が頭の中で何度も繰り返される。

まさか翔太の心の中で、私がここまで卑しく思われていたとは夢にも思わなかった。

でも、もし私が必死に飲みの席で身体を張らなければ、今の会社の成長はあり得なかった。彼がこんなにも余裕ある生活を送れるはずがなかったのだ。

あの口論のあと、私と翔太は一か月近く、一言も口をきかなかった。

まるで氷が張ったような空気を破ったのは、彼の誕生日だった。私が折れて謝るしかなかった。

その日のために、私は自分でバースデーケーキを作った。

だが会社に届けたとき、目に映ったのはあの秘書と仲睦まじくケーキを囲む翔太の姿。彼の顔にはまだ拭き切れていないクリームが残っていた。

その日、やっと悟った。秘書の乃愛は、翔太が特別に想う幼なじみだったのだ。

――彼はその幼なじみのために、私にすべての屈辱を与えるのだ。

オフィスに突然響いた足音で、私の思考は途切れた。

乃愛は一切ためらいなくドアを押し開けた。

私を抱き寄せていた翔太は、反射的に私を突き放し、背筋を伸ばした。

私は眉をひそめ、わざと皮肉を口にした。

「乃愛、社長室に入るときノックもできないの?」

乃愛は困った顔で言った。

「結衣さん、私はずっとこのやり方です。翔太からも、オフィスに入るときはノックはしなくていいって言われてます」

頭で分かっていても、胸の奥がキュッと痛んだ。

――さすがは翔太にとって特別な存在だ。

思い出すと。以前、私がノックをせずに入っただけで、翔太はひどく怒り、「ここは会社なんだ。家じゃない」と強く叱りつけた。

さらにはわざわざ新しい規則を会社で決めた――「必ずノックしてから入室すること」

私の気分がすぐれないことを察したのか、翔太は私の前に立ちはだかり、乃愛を外に出してから口を開いた。

「乃愛はまだ若いから、何もかも覚えられるわけじゃない。わざと彼女をいじめるような真似はやめてくれ」

その言葉を聞くたび、私は笑いたくなる。

彼が言う「若い」というのは、私よりたった三ヶ月若いだけだ。

あからさまな贔屓に、私は乾いた笑みを浮かべ、「分かった」と返した。

けれど、その裏で拳はギュッと固く握られていた。

正直に認めるしかない。翔太の心の中で、私は乃愛とは比べ物にならない存在なのだと。

襟を整え、私は平静を装って翔太に別れを告げた。

「今日は伝えるべきことは全部伝えたわ。じゃあ、邪魔しないようにこれで失礼するわね」

翔太は眉をひそめた。どうやら、私がさっき言ったことを完全に忘れてしまっているようだ。

私が部屋を出ようとするのを見て、翔太は思わず尋ねた。

「結衣、さっき何て言った?よく聞こえなかったんだけど」

一瞬にして目に涙がこみ上げてきた。

私は深呼吸をし、もう一度話そうとしたその時、乃愛が再びドアを開けて入ってきた。

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