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第7話

Auteur: ぷっちょ
思いもしなかった。飛行機が着陸して、迎えに来てくれたのがまさかあの人だなんて。

昨日会ったばかりの――光希だった。

黒いカシミヤのコートを身にまとい、すらりとした体を真っ直ぐに立て、無表情のままそこにいた。

しかし私が出口から現れると、その冷たい空気の中にほんのわずかな温もりが滲む。

私がまだ状況を飲み込めないうちに、彼は大股で歩み寄ってきて、手に持っていたスーツケースをさっと取ってくれた。そして自分のコートを脱ぎ、私の肩にふわりとかける。

「ここは少し寒いので、もう少し着込んで」

私はただ呆然と頷くしかなかった。

どう返事をすればいいのか分からず、思わず視線を落とす。けれど余所目で彼を盗み見た時、胸の奥にふっと温かさが広がった。

少なくとも、これこそ私がずっと求めていたものだった。

光希が私をマンションまで送ってくれたあと、何度も迷ったが、結局は部屋に招く勇気が出なかった。

困ったように彼を見上げると、彼は気にする様子もなく静かに言った。

「ゆっくり休んで。明日、改めて結婚の申し込みに行くから」

その一言に顔が一気に熱くなる。夕焼けよりも赤く染まって、思わず声が飛び出した。

「えっ、そんなに早く?」

彼は笑みを浮かべ、愉快そうに返す。

「そうさ。急がないとな。遅れたらまた逃げちゃうでしょう?」

その意味を理解する前に、光希は車に乗り込み走り去ってしまった。

家に戻ると、母は嬉しそうに布団を整えながら、目尻の涙を拭っていた。

「私の可愛い娘……ついに帰ってきてくれた」

母の涙につられて、私も堪えきれず泣き出してしまう。

翔太と一緒に起業すると強く言い張って、家族と喧嘩したあの日から……ずっと帰ってこられなかった。

翔太は「成功したら必ず故郷に戻って、お前の両親にも許してもらおう」と何度も口にした。

だがその約束は後回しにされ続け、いまや会社が上場目前になっても、実行する気配などなかった。

老け込んだ母の横顔を見て、震える声で告げる。

「お母さん……もう二度とあなたたちのそばを離れないから」

私と仲違いしていた父も、リビングの隅で肩を震わせながら泣いていた。

夜になり、ベッドに横たわると携帯が震えた。

見知らぬ番号からの着信。通話を繋ぐと、翔太の声が飛び込んできた。
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