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第2章 – 義理の父親

Author: Heln
last update publish date: 2026-09-17 10:05:09

 

カサンドラ

1年前…

私たちは、パパがエドサ(EDSA)での大きな自動車事故に巻き込まれ、病院に搬送されたという知らせを受けて、一緒に病院へと急いで走っていた。

病院に到着すると、私たちは霊安室へ案内され、そこでパパがすでに亡くなっていることを知った。

「ルイース!」

ママは、パパの冷たくなった体を抱きしめながら叫んだ。

私はショックで足に力が入り、床に倒れ込みそうになった。そこに居合わせた他の家族たちや看護師たちが私を支えてくれた。

霊安室全体が、犠牲者の家族たちの泣き叫ぶ声で満たされていた。そこには十数体ほどの遺体があったようだった。

ほぼ原型をとどめないパパの頭にしがみつくうち、私の白い制服が血に染まることも気にならなかった。

そこへ警察官がやってきて説明した。

「バンの酔っ払い運転手は逮捕しましたが……」

「ですが、なんですか?」

居合わせた誰かが尋ねた。

警察官は首を横に振り、再び口を開いた。

「議員の息子ということで、保釈されてしまいました」

先ほどまでの悲しみの泣き声が、一瞬で怒りへと変わった。金持ちの政治家の息子に、私たち市民がどう立ち向かえるというのか? 特にこの国では、司法の前では貧乏人が金持ちに勝てないのだから。

「それで終わりですか? 見逃すというんですか? 家族を失った私たちはどうなるんですか!」

私は泣き叫んだ。

私は理学療法(Physical Therapy)コースの最終学年にいて、我が家の収入源はパパだけだったから、これで確実に学業を続けられなくなるだろうと分かっていた。

警察官が答える前に、弁護士と数名の警察官がやってきた。さらに、制服に議員のマークが入ったボディガードも同行していた。

「私はカール・レデスマの弁護士、ジュリアス・サモンテです。今回の件は誠に遺憾ですが、アーサー・レデスマ下院議員が被害者の皆様に金銭的な支援を行うことを保証しております。葬儀費用全額の負担と、各家族につき10万ペソの現金給付を行います。カールは未成年で、まだ16歳のため起訴はできません。彼は精神的なトラウマを負っているため、治療のためにアメリカへ移送されます」

私は怒りに任せて前へ飛び出したため、ボディガードや警察官たちがすぐに制服のまま私を押し留めようとしたが、私は負けなかった。

「10万ペソ? パパの命の価値はそれだけですか? 私は父親を失ったんです、ここにいる人たちは母親を! 子供を! 配偶者を! 兄弟を失ったんです! それなのに、愛する人たちを殺した悪魔をトラウマを受けたからという理由でアメリカに逃がしたって言うんですか? 私たちを何だと思っているんですか! この苦しみは一生消えないんです!」

私は涙をこらえようと必死だったが無理で、まるで泉のように涙が流れ続けた。

弁護士はうなずき、再び話し始めた。

「お気持ちは分かりますが、先ほども言ったように議員の家族は責任逃れをしているわけではありません。葬儀費用がかからないだけでも感謝すべきです。10万ペソは新しいビジネスを始めるための資金にしてください。悪い話ではありませんよ」

言い返そうとしたが、弁護士は他の警察官やボディガードたちと共に去っていってしまった。私は、まだぼうぜんとしているママのところへ戻った。

わずか一日で、遺体は一斉に公営墓地に埋葬され、お金と共に「これ以上文句や告訴はしない」という誓約書への署名が渡された。

私たちは半ば強制的にサインさせられる以外にどうしようもなく、警察に解放された。

借りていたアパートに戻ると、金持ちだが強欲な大家のルイス夫人(Madam Ruiz)が待ち構えていた。

「ルイースが死んだって聞いたよ。つまり、お前たちはもう家賃が払えないってことだ。だから、引っ越し先を探す猶予は1か月だ」

ママは怒りと悲しみのあまりついに爆発し、ルイス夫人を指さして叫んだ。

「あんたはなんて強欲なんだよ! 一度だって家賃を遅れたことはないだろ! ルイスがいなくなったって、私が働くよ! 本当にお金に汚い老け込みやがって!」

ルイス夫人は人前で恥をかかされたと思い、負けじとすぐに鍵を取り上げた。

「強欲だと? じゃあ、今すぐここから出て行きな!」

争いになってママが逮捕でもされたら大変だと思い、私はママを制止した。ルイス夫人の夫は警察官だから威張っていて、まるで法律を我が物顔で握っているかのような態度だった。

新しいアパートが見つかるまでの間、私たちは安モーテルに身を寄せることにした。

10万ペソはあっという間に底をつき、私たちは二人で仕事を探し始めた。私は学業を一時中断してコンビニのレジ係となり、ママはレストランの清掃員(janitor)として働いた。

しかし、給料が安すぎて生活費には足りなかった。7か月近く働いても貯金は一切できず、日々の生活費さえカツカツだったため、ママは出稼ぎに行って家政婦(domestic helper)になることを決意した。

一人残されるのは嫌だったが、私もう一度学校に通うための唯一の方法だったため、どうすることもできなかった。

「娘よ、お金を貯めてくるから、たった1年だけよ。あんたが看護の勉強を終える頃には、私は戻ってくるから」

それが、私たちが別れる直前にママが言った言葉だった。

1か月が過ぎてもママからの電話やテキストはなく、お金の仕送りもなかったため、私は不安で仕方がなかった。そのせいで学業を再開することもできず、レジのアルバイトの収入だけでなんとか耐え忍んでいた。

私はママが生きているか確かめるために人材紹介会社に押し掛けそうになった。彼らは「安全な場所にいる」と言い張ったが、私は信じられなかった。

3か月が過ぎた頃、ママが突然帰ってきた。綺麗な服を着て、まるで裕福な人のような見た目になっていたが、一番驚いたのは、一人の初老の男性を連れていたことだった。その男は車椅子に乗っていて、どこか弱々しそうだった。

「キャッサンダ、連絡できなくてごめんなさいね。最初の雇い主に虐められて、暴力を振るわれて、ご飯も食べさせてもらえなかったの。幸いにも助けてもらったんだけど、荷物を取りに戻ることもできなくて、携帯電話すらなかったから連絡できなかったのよ。そうそう、この方はドン・ジョージ・エリサルデ(Don George Elizalde)よ。私を拾ってくれた方であり……私の婚約者でもあるの。あなたにとっての義理の父親になる人よ」

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