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感謝と嫉妬

last update Dernière mise à jour: 2025-10-16 16:15:38

 モニカの嫌がらせは、日ごとに巧妙さを増していった。

 その日の朝。

 授業が始まる直前、机の中に入れていたはずの羽根ペンが見つからなかった。

「えっ……ない……?」

 インク壺まで忽然と消えている。どうして、こんな……

 焦る私の背後で、わざとらしい声が響いた。

「まあ、サフィーさんったら。道具の管理もできないの?」

 モニカが、取り巻きと一緒に笑っている。

「庶民は粗末なものばかりだから、大切にする習慣もないのかしらね」

 顔が熱くなる。何も言い返せない。

 物を無くしているから……

「……ここにありましたわよ」

 その声と共に、机の端に羽根ペンとインク壺が置かれた。

 振り向けば、アプリルが冷ややかな視線をモニカに向けていた。

「愉快な遊びですわね。けれど、授業の妨げになるのは”下品”ですこと」

 モニカは一瞬言葉に詰まり、取り巻きと舌打ちして去っていった。

「……ありがとう」

 思わず呟くと、アプリルはそっけなく答えた。

「もう授業が始まりますわよ」

 その冷淡な声音に、胸がちくりと痛む。

 けれど同時に、助けられた安心感で胸が熱くなった。

(でも……これじゃ、私よりアプリルの方が”ヒロイン”みたい……)

 菜園での授業後、靴箱を開けると、中に入れていた革靴が泥にまみれていた。

「ひっ……!」

 泥水が滴り落ち、裾を汚す。周囲から忍び笑いが聞こえた。

「まあまあ、またおっちょこちょいですわね」

 モニカが扇で口元を隠して笑う。取り巻きの声が重なった。

 悔しくて、涙がこみ上げる。

 ーーそのとき、黒い影が差し込んだ。

「……貸しなさい」

 アプリルが黙って布を取り出し、靴の泥を拭き始めた。

 手際よく泥を落とす姿は、まるで何事もなかったかのように冷静だった。

「……ありがとう」

 小さく声を掛けても、アプリルは何も答えない。

 ただ淡々と拭き取り、靴を差し出した。

(優しい……でも、””に救われている姿を誰かに見られたら……私が情けなく見える……!)

 胸の奥に安堵と羞恥がせめぎ合い、視界が揺れた。

 試験直前。

 徹夜でまとめたはずの勉強ノートが、机から忽然と消えていた。

「どこにも……ない……!」

 教室中を探す私の背中に、あざ笑う声が投げかけられる。

「庶民は物をなくしてばかりね」

「勉強したところで
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